任意整理、特定調停、個人再生、自己破産について、手続の流れとメリット、デメリットを解説します。
ざっくりポイント
  • 借金整理(債務整理)手続は「任意整理」「特定調停」「個人再生」「自己破産」の4つ
  • 任意整理が私的手続、他の3つが公的手続
  • 借金の減額割合が最も大きいのが自己破産、次に個人再生
  • 任意整理のメリットは「取り立てが止まる」「元金がゼロ、過払金返還も可」、デメリットは「ブラックリストに載る」「大幅の減額は難しい」など
  • 特定調停のメリットは「取り立てが確実に止まる」「ギャンブルで作った借金もOK」「弁護士費用が不要」、デメリットは「裁判所への出頭や書面作成の手間がかかる」「3年以内完済が義務づけられ、滞ると強制執行を受けるおそれあり」など
  • 個人再生のメリットは「借金が最大10分の1になる」「家を売らずに済む」「強制執行のおそれなし」、デメリットは「10年くらいは新規融資が不可」「相応の弁護士費用が必要」など
  • 自己破産のメリットは「借金ゼロ」「生活財産はそのまま」、デメリットは「職業制限」「連帯保証人に迷惑をかける」など

目次

【Cross Talk】借金(債務)整理手続の種類は分かった!それぞれのメリット・デメリットを教えて!

先生、お恥ずかしい話ですが、クレジットカードのキャッシングや住宅ローンなどが重なって、ついに首が回らなくなってしまいました・・・・・・。

それでは、債務整理を検討してみましょう。4つの方法があるので、それぞれのメリット、デメリットを十分にふまえて、自分に合った手続を選ぶことが大切ですよ。

ぜひ詳しく教えてください!

債務整理4つの方法とは?「任意整理」「特定調停」「個人再生」「自己破産」それぞれの手続の流れとメリット、デメリットが知りたい!

借金整理(債務整理)とは、債権者と交渉して借金の額を減らしたり、支払期間を延ばしたりして、債務者の負担を軽減することです。
借金整理の手続は4つあります。しかし、一般に知られているのはせいぜい任意整理や自己破産くらいで、特定調停や個人再生についてはあまり知られていません。
そこで今回は、借金の整理を検討している方に向けて、任意整理、特定調停、個人再生、自己破産の4つの手続について、それぞれのメリットとデメリットを詳しく解説していきます。

借金整理手続それぞれのメリット、デメリット

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 借金整理(債務整理)手続には「任意整理」「特定調停」「個人再生」「自己破産」の4つがある
  • 任意整理が私的手続、他の3つが法的手続
  • 借金の減額できる割合が最も大きいのが自己破産、次に個人再生

先生、私にぴったり合う債務整理って何なのでしょうか?

あなたの場合、住宅ローンがかなり残っていて借金の額が大きいですから、個人再生か、最悪自己破産になるかもしれませんね。債務整理は人生をやり直す手続ですから、慎重に選択することが重要ですよ。

借金整理には4つの手続があります。

「任意整理」「特定調停」「個人再生」「自己破産」

各手続のメリット・デメリットを一覧表にしたので、ざっくりチェックしてください。

メリット・デメリットの一覧比較図

以下、各手続のメリット、デメリットを詳しく解説していきます。

任意整理のメリット、デメリット

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 最も手軽な債務整理の方法
  • 債権者と直接交渉する私的な手続
  • 返済計画に債権者が同意すれば和解が成立する
  • 主なメリットは「弁護士に依頼すると債権者からの請求が止まる」「借金が減ったりゼロになったり、過払金が戻ってきたりすることもある」「利息がかからなくなる可能性がある」「どの債権者と交渉するかを任意に選べる」「借入れ原因を問われない」の5つ
  • 主なデメリットは「ブラックリスト」に登録される「強制執行を止めることができない」「私的な交渉に過ぎないため、相手方が和解に応じてくれないこともある」の3つ

債務整理というと、この任意整理をイメージします。

そうですね。任意整理は、比較的手軽にできる債務整理です。どれだけ借金を減らせるかは債権者やこれまでの取引状況により大きく異なります。

任意整理とは、借金(元金や遅延損害金、将来発生する利息など。以下同じ)の残額や支払い方法について、債権者と直接交渉し、毎月の返済額の負担を軽くすることをめざす私的手続です。
特定調停や個人再生、自己破産とは異なり、裁判所を介さず、債権者と直接交渉するのが特徴です。債権者と交渉できるだけの知識や余裕のある債務者は少ないため、弁護士などの専門家に手続を任せるのが通例です。弁護士の作成した返済計画に債権者が同意すれば和解が成立し、あとは返済計画にのっとって返済していけばOKです。

任意整理のイメージ図

【任意整理のメリット】

    • 債権者からの請求が止まる

任意整理の準備として行う引き直し計算に必要な利息計算ソフトがたくさんあるので、本人が自力で債権者と交渉することも可能ではあります。しかし、大半の債務者にそのような余裕はないので、弁護士などの法律専門家に任意整理の代理を依頼することになります。
弁護士等が代理人になると、以後、債権者は債務者に対して直接取り立てることが禁じられ(貸金業法21条1項9号)、違反すると懲役・罰金刑が科されます。そのため、弁護士等が受任通知を債権者に送ると、取り立てがピタッと止まり、債務者は平穏な生活を取り戻すことができます。
ただし、債権者がヤミ金の場合は別で、受任通知を送っても取り立てが止まらないことはよくあります。これは「任意整理」の名のとおり、私的な交渉に過ぎないからです。

 

    • 借金が減ったり、過払金が戻ってきたりすることもある

利息制限法の規制を超える利息を長期間返済してきたケースでは、「正しい利率に引き直して計算してみると、すでに元金と法定利息を完済していた」ということがよくあります。それどころか、「払いすぎた利息(過払金)が何十万円も戻ってきた!」ということも珍しくありません。

 

    • 利息がかからなくなる可能性がある

任意整理をすると、支払いが遅れてから話し合いがまとまるまでの利息や和解に基づいて返済している期間の利息がかからなくなることがあります。

 

    • どの債権者と交渉するかを任意に選べる

債権者といっても、単なる消費者金融から、何十年もつきあいのある知人まで様々です。そのため「借金を減額してくれなんて、あの人には言いにくいなあ」という場合もあるはずです。また、車のローンを債務整理の対象とすると車を回収されてしまい、「通勤できず、収入がなくなる」という場合は、車のローンを債務整理から除外する必要があります。
こういった事情がある場合でも、任意整理なら、自己破産や個人再生とは異なり、「どの債権者と交渉するか」を自由に選べるので便利です。

 

    • 借入れの原因を問われない

返済を前提とする手続きですので、自己破産などと異なり借入れの原因は原則として問題となりません。

 

【任意整理のデメリット】

    • 「ブラックリスト」に登録される

「任意整理手続して長期間支払いが遅れている」という事実は、信用情報(いわゆるブラックリスト)に登録されます。登録情報が削除されるには5年程度かかると言われています。
したがって、当面は新規融資やカード入会は難しくなりますし、商品の分割払いさえ認められないこともあります。その期間は一般的には5年前後といわれていますが実際には5年きっかり経てば済むわけではなく、7年〜10年経たないと新たな融資が受けられないこともあります。

 

    • 強制執行を止めることはできない

法律がないので、強制執行を止めることができません。

 

    • 裁判所が介在しない私的な交渉なので、相手方が和解に応じない場合もある

あくまで、債権者である相手方との任意の交渉ですので、債権者が交渉に応じない場合には和解はできません。
貸金業登録をしている業者の大半は、交渉に応じます。また支払回数や支払総額についてもある程度柔軟な対応をします。
しかし、一部の業者は、自社の和解条件に固持したり、頑なに和解交渉を拒みます。
相手方がこうした業者の場合任意整理は極めて困難です。特にヤミ金相手の交渉だと、「減額は認めるが一括で返済しろ」「すでに支払った超過利息は返すが、将来の法定利息分は免除しない」などとごねてくる場合があります。
弁護士の交渉能力次第ではありますが、ヤミ金の場合は初めから違法行為と分かって融資していますから、和解に応じる可能性は非常に低いのが現実です。

特定調停のメリット、デメリット

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 裁判所に債務者本人が申し立てて、手続を進める
  • 調停委員会の助けを借りて、利息の再計算、返済計画の策定を行う
  • 返済計画に債権者が同意すれば調停が成立する
  • 主なメリットは「債権者からの請求が止まる」「強制執行を止めることができる可能性がある」「借金が減ることがある」「借入れの原因を問われない」「費用が比較的低額で済む」の5つ
  • 主なデメリットは「ブラックリスト」に登録される「裁判所に出向く必要がある」「書面作成が苦手な人には向いていない」「3年以内の完済を求められる」「返済計画を守らないと直ちに強制執行を受けるおそれがある」の5つ

特定調停という言葉は初めて聞きました。

特定調停は債務者本人が利用する制度ですので、弁護士でも経験豊富な人はほとんどいません。手続で分からないことは裁判所が教えてくれますが、最低限の知識は必要ですので、以下の解説をしっかりチェックしてくださいね。

特定調停は債務者本人が利用する制度ですので、弁護士でも経験豊富な人はほとんどいません。手続で分からないことは裁判所が教えてくれますが、最低限の知識は必要ですので、以下の解説をしっかりチェックしてくださいね。

<特定調停のイメージ図>

【特定調停のメリット】

    • 債権者からの請求が止まる

裁判所が、特定調停の申し立てを受けた事実を債権者に通知すると、以後、債権者は債務者に対して直接取り立てることが禁じられます。

 

    • 強制執行を止めることができる可能性がある

法律の要件を満たせば、強制執行を止めることができる可能性があります(特定調停法7条1項)

 

    • 借金が減ることもある

任意整理と同様です。但し、任意整理と異なり、過払い金が発生していても手続きで取り戻すことはできません。

 

    • 借入れの原因を問われない

任意整理と同様です。但し、任意整理と異なり、過払い金が発生していても手続きで取り戻すことはできません。

 

    • 費用が比較的低額で済む

特定調停は、経済的理由により弁護士等を利用できない債務者が、裁判所の助けを借りながら債務整理を進められるように設けられた制度です。自分で申し立てることができるため、弁護士費用等がかかりません。また、裁判所に支払う手数料も低額です。

 

【特定調停のデメリット】

    • 「ブラックリスト」に登録される

任意整理と同様です。

 

    • 裁判所に出向く必要がある

特定調停を自分で行う場合は、状況確認と調停委員を通じての話し合いのために最低2回は裁判所に出向く必要があります。その他にも、書面作成で分からないことを質問する時にも出向くことになります。
裁判所によっては電話での質問を受け付けている場合もありますが、書面を見ながら説明する都合上、裁判所の窓口に出向くように指示される場合もあります。裁判所は平日しか開庁していないので、昼間に仕事をしている人だと不便です。

 

    • 書面作成が苦手な人には向いていない

自分で特定調停を申し立てる場合、「申立書」「財産の状況の明細書」「権利者の一覧表」などを提出する必要があります。裁判所の助けを得ながら作成することは可能ではあるものの、書面作成自体に強い苦手意識がある人だと、申し立てまでのハードルが非常に高くなります。

 

    • 3年以内の完済が求められる

特定調停の返済計画は「原則3年以内に完済する」という前提で策定されます。そのため、返済資金が非常に乏しい人や、借金が多すぎて3年では到底返せない人だと、裁判所から「特定調停は無理なので、個人再生や自己破産を検討してください」などと言われ、特定調停の利用が事実上できなくなります。

 

    • 返済計画を守らないと直ちに強制執行されるおそれがある

特定調停の成立後に作成される調停調書は、訴訟の判決と同じ力を持っています。そのため、調停でまとまった返済計画通りに返済しないと、直ちに強制執行で財産が処分されてしまうおそれがあります。

個人再生のメリット、デメリット

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産ほどではないが、借金の大幅減額が可能
  • 主なメリットは「強制執行を止めることができる」「借金を大幅に減額できる」「住宅を残せる可能性がある」「借入れの原因を問われにくい」「職業制限がない」の5つ
  • 主なデメリットは「ブラックリスト」に登録される「官報に掲載される」「連帯保証人に迷惑がかかる」「書類作成・資料収集が煩雑」「弁護士費用が比較的高額」の5つ

新聞やテレビで民事再生事件のニュースが流れますが、どれも会社が当事者ですよね?

今回解説するのは会社ではなく、「個人」の再生手続ですね。個人再生はニュースにはなりませんが、自己破産に次いで借金を減らせる効果が大きいので、利用価値の高い債務整理手続だと言えます。

個人再生とは、民事再生法の定めに従い、債務の減額や長期分割払いを、裁判所が強制的に決定する手続です。個人再生では、「債権者A・B・CのうちBに対する債務だけ整理する」ということは認められず、すべての債権者の債権をまとめて、一つの返済計画(再生計画)を策定します。この点は任意整理や特定調停と異なります。
再生計画に基づく返済期間が原則3年ぴったりに固定されているのも特徴の一つです(民事再生法229条2項2号)。「早く楽になりたいから2年で完済するつもりですが、余裕があるときは1年で繰り上げ返済します」「余裕がないので5〜6年かけて返します」などと返済期間に幅を持たせることはできません。

<個人再生のイメージ図>

【個人再生のメリット】

    • 強制執行を止めることができる

債務者が特におそれるのは強制執行です。重要な財産が処分されてしまうと、日々の生活さえままならなくなるからです。個人再生の手続開始後は強制執行が禁じられるため、重要な財産の安全が守られます。

 

    • 借金が大幅に減額できる

再生計画が認められると、借金がおよそ5分の1まで減額できます。任意整理や特定調停でも、当事者が合意さえすれば借金の減額はできますが、通常、債権者が受け入れるのはすでに払った利息や将来の利息の減額だけであり、大幅な減額は期待できません。

 

    • 住宅を残せる可能性がある

自己破産の場合と異なり、個人再生では、一定の条件を満たせば、住宅ローンの返済を続けることができます。そのため、住宅を残せる可能性があります。

 

    • 借入れの原因を問われにくい

自己破産と異なり、借り入れの原因が浪費であっても、再生計画を認められる可能性があります。但し、借り入れの経緯に大きな問題があり、再生計画について債権者の過半数が反対したような場合には手続きを進められなくなる可能性はあります。

 

    • 職業制限がない

自己破産と異なり、個人再生では手続き中警備員等の一定の職業に就くことが制限されません。

 

 

【個人再生のデメリット】

    • 「ブラックリスト」に登録される

任意整理、特定調停と同様です。

 

    • 官報に掲載される

個人再生の手続が始まると、官報に債務者の住所・氏名が掲載されます。官報を愛読する一般人はまずいませんので、「知人や友人に知られたらどうしよう・・・・・・」とびくびくする必要はありません。

 

    • 連帯保証人に迷惑がかかる

個人再生が認められると、借金が大幅に減りますから、債権者は返済を受けられる金額が減ってしまいます。そのため、債権者が、連帯保証人に支払を求め、連帯保証人に迷惑がかかる恐れがあります。

 

    • 書類作成・資料収集が煩雑

個人再生では、申立書、債権者のリスト、生活収入状況についての報告書、家計簿等たくさんの書類を作成する必要があります
また、給料明細、収入証明等収入状況についての資料、家や自動車の査定書、保険証書等財産状況に関する資料等も集めなければなりません。

 

    • 弁護士費用が比較的高額

上で触れたように、個人再生では厳格な様式に従った書面の作成や沢山の資料集めが必要です。また、裁判所や再生委員との面談をすることもあります。これらの手続を債務者本人だけで滞りなく進めるのは難しいため、弁護士などの法律専門家に依頼される方が少なくありません。
弁護士が個人再生を受任する場合、一般的には30万円程度の費用が掛かります

自己破産のメリット、デメリット

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産は、借金問題を根本から解決する方法
  • 主なメリットは「強制執行を止めることができる」「借金を支払わなくてもよくなる」の2つ
  • 主なデメリットは「ブラックリスト」に登録される、「官報に載る」「連帯保証人に迷惑がかかる」「借入れの原因を問われる」「一定額以上の財産を処分しなければならない」「職業制限を受ける」の6つ

「自己破産」という響き、なんだかマイナスのイメージがあって取っつきにくいですよね・・・・・・。

世間体を気にして自己破産に踏み切れない人も多いようですね。自己破産は借金がチャラになる方法ですから、分割返済できる自信のない方は躊躇せずに利用するといいですよ。

自己破産とは、裁判所の免責許可決定によって、(税金など一部の債務を除き)すべての借金を免除してもらう公的手続です。「すべての借金から、ただちに解放される」というきわめて即効性のある債務整理であり、借金問題を根本的に解決できる唯一の方法だと言えます。

ただし、自己破産をするには、債務者が生活していくために必要な財産を除き、金目のものはすべて換金して返済にあてないといけません。この「財産の換価処分」も、任意整理や特定調停、個人再生にはない特徴です。

<自己破産のイメージ図>

【自己破産のメリット】

    • 強制執行を止めることができる

自己破産手続が開始すると強制執行はできなくなります。破産手続開始による強制執行への影響は自己破産手続きの種類により少し異なります。詳細は自己破産のコラムをご参照ください。

 

    • 借金を支払わなくてもよくなる

自己破産の最大のメリットは、「借金をゼロにできる」ということです(税金や養育費など一部の債務を除く)。

 

【自己破産のデメリット】

    • 「ブラックリスト」に登録される

任意整理、特定調停、個人再生と同様です。

 

    • 官報に掲載される

個人再生と同様です。

 

    • 連帯保証人に迷惑がかかる

自己破産手続で免責されるのは、債務者本人だけです。連帯保証人は免責されないため、債権者から連帯保証人に請求がいき迷惑がかかる可能性があります。

 

    • 借入れの原因を問われる

法律が定める事情がある場合には、債務の支払いを免れることができません。事情には、借り入れの原因に問題がある場合が含まれます。借り入れの原因に問題がある場合の典型例が浪費等です。
このように自己破産では借入れの原因が問われます。

 

    • 一定額以上の財産を処分しなければならない

自己破産では、一定額以上の財産は処分して借金の返済に充てなければなりません。一定額というのは20万円が一応の目安になります。
但し、いくつかの例外が認められています。たとえば「99万円以下の現金」「農家のトラクターや漁師の網のように、自営の仕事に欠かせない道具」「衣服や寝具、台所用品など、日常生活に欠かせない家財道具」などです。破産手続の開始決定後に得た新しい財産も処分不要です。

 

    • 職業の制限を受ける

自己破産すると特定の職業に就けなくなります。特定の職業とは、弁護士や税理士、公務員、質屋、保険外交員、警備員など、高度な信用が求められる仕事や他人の財産を預かる仕事などです。もっとも、復権すればこの職業制限は解除されます。復権といっても大げさな手続は不要で、大半のケースでは免責許可決定と同時に復権します。

その他の手続

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • ・過払い金請求
  • ・時効援用
  • ・相続放棄
  • ・限定承認
  • ・法人の債務整理

債務整理は以上の4つのみなのでしょうか

債務整理に関して主なものは以上の4つですがケースによっては他にも検討すべき債務整理手段があるので確認しておきましょう。

債務整理を利用するほとんどのケースで上記の4つの手続手続のどれかに当てはまるのですが、他の方法についても簡単に知っておきましょう。

手続手続の名前 概要 メリット デメリット
過払い金請求 いわゆるグレーゾーン金利で借り入れをしていた利息の返還を求める手続手続。 ブラックリストにならない。

借金であったものを逆に金銭として返してもらえる。

出資法が改正される前の取引期間についてのみ発生し、その多くが時効となっている。
時効援用 借金について時効となっている場合に、時効の制度を利用することを主張する。 主な4つの手続手続よりも簡単に終わる。

簡単に終わる分費用も安い。

時効になるための要件を備えていなければならず、利用できる場合が非常に限られる。
相続放棄 借金を相続したような場合に、家庭裁判所に申述をして相続人ではなかったとしてもらう手続手続 主な4つの手続手続よりも簡単に終わる。

ブラックリストにならない。

自宅など相続をしたいものがある場合でも相続ができなくなってしまう。
限定承認 借金を相続したような場合で、家庭裁判所に申述をして、借金などの債務を、遺産の範囲内で返済するとする手続手続。 ブラックリストにならない。

相続放棄では相続できないが、限定承認の場合にはまだ相続できる可能性はある。

相続放棄に比べれば手続手続は複雑。

相続人全員が賛同しなければ利用できない。

法人の場合 法人の場合には

精算型として破産手続手続・特別清算手続手続

再建型として民事再生・会社更生・私的整理がある

下記リンク先の記事を参照 下記リンク先の記事を参照

借金の過払い金ってCMでよく聞くけど、過払い金ってなに?
法人(会社)が倒産・破産するときの手続の流れを解説
借金を相続してしまった!相続放棄した方がいいかなど対処法を解説!

を参照にしてください。

 

本当にデメリットかどうか考えてみよう

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 官報公告されても実際にそこから人に漏れるのは考えにくい
  • ブラックリストによって借金に頼らない生活を身に付ける

お金が借りられなくなる・官報に公開される…考えただけでも怖くて債務整理に踏み出せないです。

実は実際にはそんなにデメリットでもないでしょう…というものもあるのでまずは弁護士に相談してみてください。


以上では一般的にデメリットとして挙げられているものについてお伝えしてきました。
しかし、それは本当にデメリットなのか、特に多くの方が嫌がる官報での公告とブラックリストについて考えてみましょう。

官報公告

自己破産手続手続ならびに個人再生手続手続を利用すると官報に公告されます。
この官報は国が発行しているもので、主に国から法律や政令などの交付・会社法で規定されている会社の重要な行為の公告などが行われ、その中の一つとして上記のものが公告されます。

これは政府刊行物が置かれている本屋であればだれでも購入することができますし、インターネットでも直近のものが公開、過去のものも有料で公開がされています。
一見さらし者にするように思えるのですが、法律の本来の趣旨は、自己破産・個人再生によって権利を失っているか・減額の対象になる債権者がいないかを探すものです。

そして、この官報を一般的に見ているような人はまずいません。
例外的に、官報の情報を与信の情報にするために登録をしているような仕事の方は見ることもあります。
しかしそれによって第三者に言いふらすようなことがあれば、それは名誉棄損罪です。
現実に官報が原因で人にわかってしまうよう可能性は非常に低いのです。

ブラックリスト

信用情報に債務整理をした事実が掲載される「ブラックリスト」によって、借金のように信用情報を利用する行為は基本できなくなります。

しかし、永遠ではなく、手続によって5年~10年で消されます。
ただ、その5年~10年の間はお金が借りられない・クレジットカードはつくれないということになり、大なり小なり生活には影響します。
ただ、債務整理は借金を整理してお金を借りなくても生活できるようにしようというものなので、ブラックリストによって借りることができないことがわかっていれば、きちんと計画的な生活をすることになります。

そういう意味では、借金をすることを中心に生活をしている現状をあらためることができるものにはなります。
クレジットカードやETCカードがないと不便という方もいらっしゃるでしょうが、デビットカードやETCパーソナルカードなどの信用情報を利用しない代替手段はあります。
計画的な家計をみにつけることができる期間になり、かつ代替手段もあるならば、不便ではあってもいつ終わるとしれない借金返済をつづけるよりは良いといえるでしょう。

まとめ

債務整理の4つの方法のどれが自分に合うかは、債務整理の知識と経験が豊富な専門家でないとなかなか判断できません。債務整理は人生の再出発をはかる機会です。無事に借金を整理して身軽になるためにも、専門家である弁護士等に相談することをおすすめいたします。