- 自分では債権者の取立てを止めることができない
- 専門的な知識・経験が必要になる
- 債務整理は弁護士に依頼を
【Cross Talk】債務整理は自分でできる?
借金の返済が難しくなってきて、債務整理を考えています。ただ、貯金もないのでできれば費用をかけずに債務整理をしたいです。自分で債務整理をすることはできますか?
法律上は可能ですが、自分でやろうとすると債権者からの取立てが続きますし、専門的な知識等が必要になるので、現実的にはかなり難しいでしょう。
やっぱり自分ではできないんですか…
「債務整理をしたいけどなるべく費用をかけたくない」「自分で債務整理ができないか」―そのように考えている方は少なくないでしょう。
たしかに、自分で債務整理をすることは、法律上は可能です(弁護士に依頼することは義務付けられていません)が、実際に自分で債務整理をすることは現実的ではありません。
今回は、自分で債務整理をすることが難しい理由について、代表的な5つを解説します。
取立てを止められない
- 弁護士に依頼すれば貸金業者からの取立てを止めることができる
- 自分が債務整理をする場合は取立てを止めることができない
借金の返済が遅れて債権者からの取立ての電話が頻繁にかかってきて困っています。債務整理をすれば取立てを止めることができますか?
自分で債務整理をする場合、債権者に債務整理をすることを伝えても取立てを止めることはできません。
弁護士に債務整理を依頼した場合、弁護士は債権者(お金を貸している金融機関等)に対し、依頼を受けたことを知らせる文書(受任通知)を送付します。
貸金業者や貸金業者から委託を受けた債権回収会社(いわゆるサービサー)は、弁護士から受任通知を受けた場合、債務者に対し、電話をかけたり訪問したりして直接債務の弁済を要求してはならないとされています(貸金業法21条1項、サービサー法18条8項)。
つまり、弁護士に債務整理を依頼すれば、貸金業者等からの取立てを止めることができるのです。
これに対し、弁護士に依頼をせずに自分で債務整理をする場合、債権者に債務整理をすることを通知したとしても、取立てを止めることができません。
債務整理には、それなりに時間がかかります。特に自己破産や個人再生のような裁判所の手続を利用する場合、いろいろな書類を提出しなければならないため、準備に相当の時間がかかります。
その間、債権者からの取立てを止めることができないということは、大きな負担になるでしょう。
対等な交渉が出来ない
- 交渉相手になる貸金業者は知識・経験が豊富
- 交渉に応じてもらえないこともある
取立てが止められない以外に自分でできない理由がありますか?それだけなら債務整理の結果には影響しないんじゃないですか?
たとえば任意整理の場合、債権者との交渉が必要になりますが、自分では交渉を有利に進められなかったり、そもそも交渉に応じれくれなかったりする可能性があります。
債務整理の中でも、任意整理(裁判所の手続をとらず、直接債権者と交渉して借金を減額させる方法のこと)は、手続が簡易であり裁判所に納める費用も必要ないため、広く行われています。
任意整理では、各債権者と個別に交渉することになりますが、債権者は通常、貸金業者やクレジットカード会社などであることが多いでしょう。
これらの業者は、いわば「金貸しのプロ」ですから、関連する法規等についての知識、債務者との交渉の経験ともに豊富に持っています。
これに対し、債務者は通常、そのような専門的な知識も経験もありません。
そのため、自分で任意整理をしようとすると、不利な交渉をせざるを得なくなり、結果的に十分な成果を得られないということが珍しくありません。
また、任意整理はあくまで任意の交渉にすぎないので、任意整理の申し入れがあったとしても、債権者がこれに応じる義務はありません、
そのため、業者によっては、弁護士に依頼をせずに自分で任意整理をしようとしても、交渉にすら応じてくれないところもあります。
専門的な手続きを理解しなければならない
- 法律用語の知識が必要になる
- 専門的な手続を理解することが必要になる
対等な交渉が出来ないということですが、債権者と直接交渉しない手続なら自分ですることができますか?
自己破産や個人再生の手続については法律に詳細な規定があり、手続を正確に理解していないと失敗してしまうおそれがあります。また、任意整理でも専門用語等を理解しておく必要はあることに変わりはありません。
任意整理と異なり、自己破産や個人再生のように裁判所を介する手続は、基本的に債権者と直接交渉することはありません。
そのため、「対等な交渉が出来ない」であげた対等な交渉ができないという不利益はあまり考慮する必要はありません。しかし、だからといって自己破産や個人再生は簡単に自分でできるというわけではありません。
これらの手続は、手続を始めるための要件、裁判所に提出しなければならない書類や書類に記載しなければならない内容、借金の免除や減額を認めるための要件などが、法律で詳細に定められています。
また、任意整理にはこのような詳細な法律の定めはありませんが、手続を進める前提として難しい法律用語を理解しておく必要があることに変わりはありません。
このように、債務整理の手続を進めるには、手続や法律用語についての専門的な知識、理解が不可欠になります。
正しい知識がないと、せっかく債務整理を始めても、結果として借金の免除や減額が認められないなど、債務整理が失敗してしまう可能性もあるのです。
膨大な資料を自ら読み込まなければならない
- 大量の専門的な書類を読んで理解する必要がある
- 資料の理解には相当の時間と労力が必要になる
専門的な知識が必要なら、知識を勉強しながら自分で債務整理をすることはできませんか?
債務整理の手続きを進めるには契約書などたくさんの書類を読み込む必要があります。仕事などのかたわら膨大な資料を読まなければならないとなると大きな負担になるでしょう。
債務整理の手続を進めるには、契約書や計算書類など、たくさんの書類が必要になります。
弁護士に債務整理の依頼をした場合は、弁護士がそれらの書類の内容を精査してくれます。
しかし、自分で債務整理をする場合、これらの膨大な書類を自分で読み込み、内容を把握する必要があります。
これらの書類は、専門的な知識がないと読みこなすことが難しく、自分で読んで内容を理解するには相当の時間と労力を費やさなければなりません。仕事の合間や休日にこれらの作業をすることは身体的にも精神的にも大きな負担になるでしょう。
そのうえ、それだけの時間と労力を費やして資料を読み込んだとしても、間違った理解をしてしまうおそれがないとは言い切れません。
業者に嘘をつかれても対処できない
- 業者に嘘をつかれる可能性がある
- 嘘をつかれても自分で見抜くことができない
自分でやるのは作業が大変ということはわかりました。ただ、大変であっても時間をかければ自分でもやれるのではないですか。
そうとは限りません。というのも、債権者が嘘をついたり、資料をごまかしたりする可能性がないとは言い切れないからです。自分で債務整理をする場合、債権者のうそやごまかしを見抜けず、対処できないおそれがあるのです。
債務整理では、貸金業者などの債権者に過去の取引の履歴などの資料を提出させ、正確な債務の額を把握することが出発点となります。
しかし、すべての債権者が債務者に対し、誠実に対応してくれるとは限りません。債権者に都合のいいように資料をごまかされたり、隠されたりする(あるはずの資料が開示されない)などの可能性が否定できないのです。
弁護士に依頼をしていれば、ごまかされた資料の不自然な点や、あるべき資料が開示されないことなどの問題点に気づき、債権者に対し、正しい資料を開示するよう求めるなど、適切に対処することが可能です。
これに対し、専門的知識がない債務者が自分で債務整理をする場合、このようなごまかしや嘘があっても気づくことすらなく、適切な対処することができないでしょう。
まとめ
これまで解説してきたとおり、自分で債務整理を行うことには、多くの困難が伴います。
債権者からの取立てを止め、円滑・迅速に債務整理の手続を進めたいのであれば、債務整理に詳しい弁護士に依頼をするといいでしょう。