任意整理で弁護士が行う事務処理の内容を解説します!
ざっくりポイント
  • 受任通知を債権者に送って取り立てを止める!
  • 取引履歴等に基づいて残債務額を算定する
  • 依頼者の希望に沿って債権者と交渉する
  • 任意整理が難しい場合は他の債務整理を検討する

目次

【Cross Talk】弁護士に任意整理を依頼した場合、弁護士はどんなことをしてくれるのでしょうか?

借金の返済が遅れがちになってきたので、任意整理を考えています。
弁護士に任意整理を依頼するとどんなことをしてもえるのですか?依頼した後に自分がしなければならないことはありますか?

大まかにいえば、依頼を受けたことを債権者に通知して依頼者への取り立てを止め、債権者から開示を受けた取引履歴に基づいて正確な残債務額を算定し、分割払いの交渉をし、和解の成立を目指します。
また、交渉の結果、任意整理が難しいとわかったときは、自己破産など他の解決策を提案することもあります。

なるほど、よくわかりました!

弁護士に任意整理を依頼するメリット

借金に悩んでいても自己破産はしたくないということから、簡易な債務整理である任意整理を考えている方は大勢いらっしゃいます。
ただ、任意整理は裁判所を通さない手続であることから、手続が具体的にどう進むのか、弁護士に任意整理を依頼した場合はどんなことをしてくれるのかといったことについては、あまりご存じでない方もいいのではないでしょうか。
そこで今回は、任意整理を弁護士に依頼した場合に弁護士が行う事務処理の内容などを解説します。

依頼を受けた旨の通知を債権者に発送

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 債権者に書面で受任通知を送る
  • 受任通知によって債権者からの直接の取り立てを止めることができる

弁護士に債務整理を依頼すると、まず何をしてもらえるのですか?

まず、各債権者に対し、書面で債務整理の依頼を受けたことを通知します。
この通知をすることで、貸金業者などの債権者は、債務者に対して直接の取り立てをすることができなくなります。

受任通知を債権者に通知する

任意整理とは、裁判所の手続をとらず、直接債権者と借金の減額、返済方法や将来利息の変更について交渉し、合意をすることをいいます。

弁護士は、任意整理の依頼を受けると、まずは債権者(お金を貸している金融機関等)に対し、依頼を受けた旨の通知をします。この通知を受任通知といいます。

債権者は直接取り立てることができなくなる

受任通知は、単に弁護士が依頼を受けたことを知らせるだけのものではありません。受任通知によって、債権者から債務者に対する直接の取り立てを止めることができるのです。

貸金業者や貸金業者から委託を受けた債権回収会社は、貸金業法や債権管理回収業に関する特別措置法(いわゆるサービサー法)によって、取立行為等について一定の規制を受けています。

弁護士が債務の処理について委任を受けたことを書面で通知した場合、貸金業者や債権回収会社は、債務者に対し、電話をかけたり訪問したりして直接債務の弁済を要求してはならないとされています(貸金業法21条1項、サービサー法18条8項)。
これに違反すると刑罰や行政処分の対象となる場合があるので、受任通知を送った後に貸金業者や債権回収会社から直接の取り立てを受けることはまずありません。

また、貸金業者や債権回収会社を除く債権者(知人や取引先など)に対する受任通知には、このような法律上の効果まではありませんが、多くの債権者は債務者への直接の取り立てをしなくなります。

このように、弁護士に債務整理を依頼して受任通知を発送してもらうことで、債権者の取り立てを法律上あるいは事実上止めることができるのです。

残債務(借金)額の算定

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 取引履歴を取り寄せて残債務額を調査する
  • 長期間取引のない借金は消滅時効を主張する

債権者に受任通知を送った後はどうなるのでしょうか?

債権者からこれまでの取引の履歴を開示してもらい、正確な残債務額を調査します。
古い借金の場合、利息制限法に違反した高利率で貸し付けを行っていることがあるので、そのようなときは利息制限法に基づいて計算しなおし、残債務額を算定します。
また、古い借金の場合、時効が完成していることもあるので、時効を主張することもあります。

取引履歴の調査・引き直し計算

受任通知には、債務の処理について委任を受けたこと、債務者等に取り立てをしないよう求めることのほかに、正確な残債務額を把握するため、債権者が保有する過去の取引の記録(取引履歴)の開示を求めることを記載します。
貸金業者等は基本的に取引履歴の開示に応じてくれます。

弁護士は、債権者から取り寄せた取引履歴等の資料に基づき、正確な残債務の調査をします。
とくに古い借金の場合、利息制限法に超える利率での貸し付けがあるかをチェックして、あった場合には利息制限法で定められた上限の利率で計算し直します(引き直し計算といいます)。その結果、約定債務額よりも低い金額で任意整理ができる場合もあります。

古い借金については時効を主張する

貸金業者からの借金の場合、最後の返済から5年以上が経過していれば消滅時効が完成している可能性があります。
そこで、弁護士は、取引履歴を調査の上、消滅時効が完成している場合には時効の援用(時効のため借金を返済しないと債権者に伝えること)をします。

債権者との交渉

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 債権者との交渉も弁護士がしてくれる

取引履歴から残債務が分かった後は、どうなるのですか?

弁護士が依頼者に代わって債権者と交渉します。交渉の内容は、主に分割払いや将来利息の引き下げになります。

依頼者に代わって債権者と交渉

取り寄せた取引履歴に基づいて正確な残債務額が判明すれば、いよいよ各債権者との間で借金の返済方法等の交渉をすることになります。
この交渉も、依頼者に代わって弁護士がしてくれますので、依頼者自身が貸金業者等と直接やり取りをする必要はありません。

場合によっては他の債務整理方法を模索することも

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 交渉がまとまらない可能性もある
  • 任意整理ができないときは自己破産など他の債務整理を

交渉というからには、まとまらないこともあるんですよね?

債権者がこちらの要望を受け入れるとは限りませんから、その可能性は十分にあります。
任意整理で解決できそうにない場合は、弁護士が他の債務整理の方法を検討してくれます。

任意整理は、裁判所を介さず各債権者と個別の交渉をするものです。
そのため、利息制限法を超える利率の利息を支払っていたなど例外的な場合を除いて、債権者には借金の減額に応じる法的な義務はありません。
ですから、弁護士が債権者と交渉を重ねても、債権者が任意整理に応じない可能性はあります。

弁護士に任意整理を依頼しても債権者が任意整理に応じてくれない等、任意整理がうまくいかない事情がある場合、弁護士が自己破産や個人再生といった他の債務整理方法を検討してくれます。

自己破産をして免責決定を得れば、借金の返済義務が免除されます。債権者は免責についての意見を述べることができますが、最終的に免責決定をするかどうかは裁判所の判断に委ねられます。

また、個人再生の場合、債権者の数の2分の1以上の反対がなく、かつ反対した債権者の債権額の合計が全債権額の2分の1を超えていないことが必要とされますが、現在は貸金業者等が反対することはほとんどありません。
このように、任意整理ができない場合でも借金問題を解決することは可能で、弁護士が依頼者の状況に応じてどの手続がふさわしいかを助言してくれます。

依頼を受ける前でも任意整理の相談に乗ってもらえる

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 依頼前でも任意整理の相談は可能
  • 任意整理をすべきかどうかも含めて相談することができる

弁護士がしてくれることはだいたいわかりました。ただ、今まで弁護士に依頼をしたことなどないので、なかなか依頼に踏み切れません…

依頼を受ける前であっても法律相談を受けてくれる法律事務所もあります。
まずはそういった法律事務所を探して法律相談を受けるといいでしょう。

これまでの解説を読んで、任意整理の依頼を受けた弁護士が行うことについては理解ができたが、弁護士に心当たりがないとか、法律事務所は近寄りがたいというイメージを持っていて、弁護士に依頼するかどうかを躊躇している方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、依頼をしなければ弁護士の話を聞くことができないわけではありません。
依頼を受ける前であっても、そもそも任意整理をすべきかどうかを含めて法律相談を受けてくれる法律事務所もあるのです。
ですから、任意整理をしたいと考えている方は、まずはそういった法律事務所を探し、積極的に弁護士に相談すべきといえます。
そして、法律相談での弁護士の対応や説明の内容などをよく確認したうえで、正式にその弁護士に依頼するかどうかを検討するといいでしょう。

まとめ

任意整理で弁護士がしてくれることについて説明いたしました。弁護士に依頼をすれば、任意整理の手続を弁護士に任せることができるので、債権者の督促から解放され、日常の平穏を取り戻すことができます。
任意整理をしたいと考えている方は、早めに借金問題に詳しい弁護士に相談するといいでしょう。