自営業者や個人事業主が自己破産をする場合の流れを把握しよう
ざっくりポイント
  • 自営業者や個人事業主が自己破産をする際の流れを把握する

目次

【Cross Talk】自営業者・個人事業主が自己破産をするときの流れを知ろう

私は個人事業主なのですが、もはや事業が立ちいかなくなりました。事業をたたもうと思うのですが、自己破産って個人事業主でもできますか?

個人事業主でも自己破産は出来ます。
大まかな手続きの流れと、通常の人との違いから生じる注意点のようなものを知っておいて安心して手続きをすすめましょう

自営業者・個人事業主の場合でも自己破産はできる。手続きの流れと注意点を知っておきましょう。

自営業者・個人事業主も借金などの債務の支払いに窮した場合には債務整理をすることになり、支払いができないような場合や、事業継続を断念するような場合には自己破産という手段を利用します。
自営業者の場合の自己破産手続きには若干の注意点があるので、どのような流れで進むのかとともにお伝えします。

自営業者・個人事業主も自己破産ができる

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自営業者も自己破産を利用することができる

そもそも個人事業主は自己破産できるのですか?倒産とか債務整理・任意整理などの言葉がたくさんあって、何が正しいのかよくわからないのですが。

個人事業主であっても自己破産手続を利用することができます。言葉の意味を整理してみましょう。

何か商売をするにあたって、会社(法人)を設立するようなケースもありますが、個人で商売をしているケースも当然あります。
商売をしているということは、うまくいかない場合には多額の債務を負うことになります。

そのような場合には債務整理をするのですが、債務整理というとサラリーマンが怪我や病気で失業をした、OLがショッピングに夢中になりすぎた、というようなものを思い浮かべる方も多く、商売をやっていると耳にする「倒産」という言葉との違いもわからないので、そもそも自己破産手続を利用できるのかがわからない、とう方もいらっしゃるでしょう。

倒産とは、法律用語ではないのですが、企業などが債務の支払いをできなくなった状態の事をいいます。
債務整理とは、借金などの債務の返済に困ったときに、経済的に立ち直るために行うものをいい、自己破産・個人再生・任意整理といった具体的な手続きがあります。

このうち任意整理とは、債務整理の方法のひとつで、裁判所を通した手続をとらず、依頼を受けた弁護士が直接債権者と交渉して借金を減額させる方法のことをいいます。
そして、個人事業主も債務を免責してもらって立ち直りたい場合には自己破産を利用することができます。

自営業者・個人事業主がする自己破産の流れ

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自営業者・個人事業主の自己破産の流れを把握しておきます。

自己破産を個人事業主が使うときにはどんな流れになるのですか?

おおまかな流れを知っておきましょう。

個人事業主が自己破産を利用する場合には次のような流れになります。

法律相談・契約

債務整理を利用するためには、まず弁護士との法律相談を受ける必要があります。
自己破産及びそれに伴う免責は,無条件に認められるわけではなく、支払不能になっている事や、免責不許可事由がないことなどの様々な要件が満たされていることが必要です。
依頼者に,債務整理のうち特定の手続きを利用したいという意図があったとしても、その手続きは実はその人が利用することが適切ではないということがあります。
そのため、事前に法律相談という形で債務の額・内容、収支の状況などを確認して、債務整理のうちどの手続が適切なのか,弁護士に示してもらうことになります。
法律相談をするためには、弁護士の事務所に電話で予約をして、予約をした日時に訪問をして行います。
相談で納得がいった場合には弁護士との間で自己破産手続申立のための委任契約を行います。

受任通知の発送

弁護士との間で委任契約が成立すると、弁護士は債権者に対して「受任通知」というものを発送します。
受任通知というのは、弁護士が案件を引き受けましたという事を知らせるという意味ですが、以後の連絡については本人にするのではなく、弁護士にしてくださいという内容も含まれています。
消費者金融・銀行などの貸金業者はこの通知を受け取ると原則として本人に督促しないことになっています。

債権の調査と弁護士費用の分割

前述の受任通知には、貸金業者に対しては取引の履歴の提出を求める文言が、その他の債権者に対しては債権の届出をお願いする文言が記載されていることが通常です。
そして,これに応じて貸金業者は取引の履歴を弁護士に送りますので、弁護士は,その履歴をもとに債権の調査を行います。
借入が相当長期であるような場合には、違法な利率で利息を支払っていた可能性もあり、そのような場合には総債務額が減ったり、場合によっては違法に取得した利息分を返してください(過払い金返還請求)という主張ができたりする場合もあります。
貸金業者以外の借入については、債権の届出がされるので、その届出内容の精査をします。
これには3ヶ月程度の期間がかかるので、その間依頼者は弁護士費用の分割での支払いを行います。
また、後述しますが、個人事業主の自己破産案件の場合は必ず管財事件になるので、裁判所への引き継ぎ予納金もこの期間中に準備します。

申し立て準備

弁護士費用・予納金の準備に見通しがつくと、自己破産申立ての準備を行います。
自己破産は裁判所に申立てをすることで行い、申立ての際には申立書と添付書類の提出を行います。
申立書の記載内容については本人から事情を聞く必要があったり、添付書類は本人でないと取り寄せができないものもあったりするので、依頼者は,弁護士と協力をしながら申立書の作成・添付書類の収集を行います。
申立書の作成・添付書類の収集が終わると申し立てを行います。

破産手続開始決定

申立てに応じて裁判所が破産手続きの開始決定をします。
これにより、裁判所から破産手続きを指揮する管財人が選任され、以後は管財人の業務を中心に手続きが進みます。
破産手続きに伴う引っ越しの制限や郵便物の管財人への転送はここから始まります。

管財人による調査

管財人は,破産申立書および添付書類に基づいて,破産案件についての調査を行います。
自営業をしている人に営業用資産があるような場合には、管財人がその営業用資産の売却をおこなって債権者への配当にまわすことになります。
またこの調査に先立って、管財人の事務所で対面での打ち合わせを行います。

債権者集会

管財人による調査が終わると、管財人がその調査内容を裁判所において債権者の前で報告する期日である債権者集会が行われます。
実際には貸金業者がこれに出席するようなことはほとんどなく、裁判所において裁判官と管財人、申立人と申立代理人が集まって管財人が報告をすることが一般的です。

手続き終了・免責

債権者集会が必要に応じた回数開催された後,破産者の債務を免責してよいか否かを判断する免責手続が行われます。免責手続を経たうえで,免責について問題がなければ,後日裁判所から免責を許可する決定が送付され,全ての破産手続きは終了します。

自営業者・個人事業主が自己破産をする場合の注意点

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自営業者・個人事業主の自己破産は必ず少額管財になるという注意点を知っておきましょう。

自己破産を調べていたら、引き継ぎ予納金のかからない同時廃止という手続きがあるというのを見たのですが、これは利用できないのですか?

個人事業主の場合には、資産を調査する必要があるので、必ず管財事件になります。

破産手続きには、管財人が選任されず簡単な手続きで終わる同時廃止事件と、管財人が選任される管財事件という2種類があります。
管財人が選任されない同時廃止事件では、管財人に支払うために準備をしなければならない20万円程度の引継ぎ予納金の準備が不要になりますので、できる限りこちらの手続きで行いたいといえます。

しかし、自営業者・個人事業主が破産手続きの申立をする場合には管財事件になります。
というのも、商売をしている以上、取引先が複数存在したり,複数の銀行口座があったり、事業用の資産があったり,会計帳簿を作成していたりすることが多く,その資産関係や財務関係の調査の必要性が高いためです。

まとめ

このページでは、自営業者・個人事業主の自己破産の流れについてお伝えしてきました。
自己破産を利用する者が自営業者である場合には必ず管財事件になりますので、確実に引き継ぎ予納金を準備できるようにする必要があるという注意点があります。
手続きに不明な点があるようでしたら、弁護士と相談しながら行うようにしましょう。