- 個人再生の返済が遅れると、再生計画が取り消されて個人再生手続が無駄になることがある。
- やむを得ない理由で支払いができないときは、返済期間を延長してもらえることがある。
- 残高の返済を免除してもらえる制度もあるが、利用のための要件は厳しい。
【Cross Talk】うっかり返済が滞ってしまった!再生計画はいったいどうなる?
私は以前個人再生の手続をしたのですが、先日、うっかり返済が一週間遅れてしまいました。以前弁護士の先生から、再生計画どおりの返済をしないと再生計画が取り消されてしまうと聞いたことがあるのですが、私は一体どうなってしまうのでしょうか。
法律上は、再生計画の履行を怠ると債権者の申立てにより再生計画が取り消されてしまうことがあります。
しかし、実際は1回の滞納で再生計画が取り消されることはあまり多くありません。もっとも、2回、3回と滞納を繰り返すと取消しのリスクが高まりますので、今後は十分に気を付ける必要があります。
少し安心しましたが、再生計画は厳格に守ることが要求されているのですね。法律の定めや実際の運用について詳しく教えてください。
借金を大幅に減額してもらうことができる個人再生は、借金に苦しむ方にとってメリットの大きい制度です。
しかし、メリットが大きい一方で、再生計画どおりの返済ができなかった場合には厳しいペナルティも用意されています。
再生計画どおりの返済をすべきなのは言うまでもありませんが、やむを得ない事情により返済が困難になった場合の制度も用意されています。
支払いが遅れると個人再生が取り消されることも
- 再生計画どおりの返済が行われなかったときは、債権者の申立てにより、再生計画が取り消されることがある。
- 実際には1回の滞納で再生計画が取り消されることは少ない。
民事再生において滞納は何回まで許されているのですか?
「○回までなら許される」という明確な回答は難しいのです。法律上は、1回の滞納であっても再生債権者が裁判所に再生計画の取消しの申立てを行うことは可能です。
一般的には、滞納を何回か繰り返したときに取消しになることが多いです。
1回でも再生計画が取消しになることがあるとは驚きました。
せっかく苦労して個人再生を認めてもらったのですから、再生計画が取り消されることにならないよう、返済には十分注意する必要があります。
個人再生は借金を大幅に減額してもらい、減額後の残金を原則3年間で返済していく債務整理の手続です。
再生計画どおりに返済をすべきなのは言うまでもありませんが、3年間の返済期間の中で、予想外の支出が生じたり、うっかり忘れてしまうなどして、返済が滞ってしまった場合があるかもしれません。
そのような場合にはどうなるのでしょうか?
個人再生の手続について定めた民事再生法という法律には再生債権者の申立てにより裁判所が再生計画の取消しをすることができる場合について定められています。
その中に「再生債務者等が再生計画の履行を怠ったこと」という項目があります。
すなわち法律の条文上は、たとえ1回でも再生計画どおりの履行を怠ると再生計画が取り消される可能性があります。するとせっかく行った個人再生の手続が水の泡となり、自己破産しか選択肢がなくなってしまうこともあります。
もっとも、実際には一度返済が滞っただけで再生計画が取消しになることはほとんどなく、2回、3回と滞納を繰り返したときに初めて債権者が取消しの申立てを行うのが一般的です。
1回の滞納でわざわざ裁判所に取消しの申立てをするのは、再生債権者にとっても面倒だからです。
「では何回までなら許されるのか」と疑問に思われるかもしれません。
しかし、すでに述べたとおり法律の規定上は1回の滞納でも債権者が取消しの申立てをする可能性はありますので、「○回までなら大丈夫」と明確にお答えすることは困難です。
あくまで「必ず再生計画どおりに返済しなければいけない」という緊張感を持って毎月の返済を行うことが求められているのです。
計画変更ができることがある
- 再生計画どおりの返済が困難になった場合は、返済期間を最長で2年延長してもらえることがある。
- 計画変更が認められるのは、やむを得ない理由があり、かつ再生計画の継続が著しく困難になったときに限られる。
急な出費や収入の減少などにより、どうしても返済ができなくなってしまった場合、法律上の救済措置があるのでしょうか。
最初に検討すべきなのは再生計画の変更です。
一定の要件を充たす場合には再生計画を延長してもらい、最長で5年での支払いを認めてもらうことができます。
どのような場合に再生計画の延長が可能なのか、詳しく教えてください。
再生計画の認可後に様々な事情の変化により再生計画どおりの返済が困難になることがあります。たとえば、会社をリストラされてしまって給与が大きく減額してしまった場合や、家族が病気になって治療費や入院費を負担しなければいけない場合などです。
そのような場合には、再生計画を変更して返済期間を延長してもらうことができる場合があります。
民事再生法では、やむを得ない理由があり、かつ再生計画の継続が著しく困難になったときに限り、再生計画を最大2年以内の範囲で延長することができるとされています。
2つの要件は両方満たしている必要があり、「家族の病気というやむを得ない理由があるが、何とか再生計画を継続できる場合」や、「再生計画の継続が著しく困難になったが、その原因がギャンブルである場合」には、変更は認められない可能性が高いです。
また、これらの要件を充たしていても返済額を減額してもらうことはできず、あくまで返済期間を延長してもらえるにすぎません。
ハードシップ免責が受けられることがある
- 再生計画を変更しても返済が困難な場合には、残額を免除してもらうことができるハードシップ免責という制度がある。
- ハードシップ免責を利用するためには厳しい要件が定められている。
収入が完全に途絶えてしまった場合など、再生計画を変更しても返済が困難な場合はどうなるのでしょうか。
そのような場合は「ハードシップ免責」という制度を利用する余地が残っています。
これは残りの借金を免除してもらうことができる制度です。
ただし、ハードシップ免責は返済期間の延長よりもさらに厳しい要件が定められています。
ハードシップ免責とはどのような制度で、どのようなときに利用できるのか教えてください。
ハードシップ免責とは?
ハードシップ免責とは、やむを得ない理由により再生計画を遂行することが極めて困難になった場合に、まだ履行していない再生債権について免責の決定をしてもらうことができる制度です。「免責」とは、借金を「チャラ」にしてもらえることを意味します。
免責を受ける条件
ハードシップ免責は再生債務者にとって利益の大きい制度ですので、利用するためには厳しい要件を充たしている必要があります。
まず、再生計画の変更と同様に、やむを得ない理由があり、かつ再生計画の継続が著しく困難になったときに限り利用することができます。
2つ目の要件として、借金総額の4分の3以上を返済している必要があります。つまり個人再生を認めてもらった直後には利用することはできません。
3つ目の要件として、ハードシップ免責の決定が債権者の一般の利益に反しないことが求められます。
わかりづらい要件ですが、再生計画に基づいて返済を終えた金額と、最初から自己破産を選んだとしたら債権者が受け取ることができたであろう配当額を比較して、前者が上回っている場合に限って認められるということになります。
最後の要件として、再生計画を変更しても支払いの継続が極めて困難であること、あるいは再生計画の変更が極めて困難であることが必要となります。
まとめ
いかがだったでしょうか。個人再生で再生計画どおりの返済ができなかった場合にどうなるか、ご理解いただけたでしょうか。
1回の滞納で再生計画が取り消されることはあまりありません。しかし、法律上は1回の滞納でも再生債権者から申立てをされる可能性はありますので、返済が滞らないように十分に注意する必要があります。
どうしても返済が困難になった場合は、再生計画の変更やハードシップ免責という制度が用意されています。
しかし、これらの制度は誰でも利用できるわけではなく、法律上の要件を充たしているときに初めて利用することができます。
個人再生を利用する際には、自分の収入や支出を踏まえて実現可能な再生計画を立てることと、認可してもらった再生計画は必ず守ることが何よりも重要になります。