過払い金が発生している場合、放置していると時効になって請求できなくなります
ざっくりポイント
  • 過払い金は不当利得返還請求権という債権
  • 債権は消滅時効にかかってしまうと請求できなくなる
  • 時効になりそうな場合でも中断することは可能

目次

【Cross Talk】過払い金がなくなるって本当!?

実は消費者金融とは20年以上の取引があり、昔は相当高い利息で借りていました。
過払い金というものの存在について気にはなっているのですが、必要になったら請求する感じでもよいかなと思っているのですが…

過払い金は10年以上行使しなければ時効にかかってしまうものなので注意をしましょう。

過払い金請求権は行使できるようになってから10年で時効にかかる

かつて、いわゆるグレーゾーン金利が存在していた頃に消費者金融や信販会社の貸付を利用していた場合には、過払い金というものが発生する余地がありました。
この過払い金ですが2010年に改正された出資法の施行により発生する余地がなくなりました。
過払い金請求権は法的には不当利得返還請求という民法上の権利であり、この請求権は10年で消滅時効にかかります。
つまり、過払い金は10年で時効になり、時効の期間を経過した後に貸金業者に請求をしても消滅時効を主張され回収ができなくなります。
時効は中断という行為によって完成するのを阻止することができるので、気になっている方は早めに弁護士に相談するようにしてください。

過払い金請求に迫る期間の制限

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 過払い金請求は民法の不当利得返還請求である
  • 不当利得返還請求は10年で消滅時効にかかる

過払い金はどのような根拠で請求できなくなるのですか?

刑事事件ではよく耳にする時効という制度の適用を受けて消滅することになります。

利息制限法の範囲を超え出資法に違反しない範囲で貸付を行っていたグレーゾーン金利について、2006年に最高裁判所が違法であるので返還してもらう権利があるという判決を出しました。

この返還してもらう権利のことを通称「過払い金」と呼んでおり、出資法が現在の利率に変更された2010年までの貸付については、過払い金が発生している余地があります。

ただ、上記の判決後に大方の貸金業者が利率を利息制限法の範囲に下げたこともあり、実際には2007年くらいまでの貸付にしか過払い金が発生しないことの方が多いようです。

この過払い金ですが、請求権の根拠は民法703条から規定されている債権の一種である不当利得返還請求権をベースにしています。
この不当利得返還請求権をはじめとする債権については、時効にかかると請求できなくなるという消滅時効の制度があり、不当利得返還請求権については行使ができるようになってから10年を経過すると請求をしても時効を主張され、事実上請求できなくなります。

過払い金が発生していた2007年からはすでに10年以上が経過しています。過払い金が発生していた時期から取引が継続しており、完済から10年が経過していない場合でなければ、過払い金は時効で請求ができないといえるのが現状です。
過払い金が請求できるかどうかは、貸金業者に取引の履歴の開示を請求して確認することができます。

過払い金が時効になることを防ぐ方法

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 時効の中断という手続きを行うことによって時効になることを防ぐことができる

調査の結果過払い金がギリギリ請求できるのがわかったのですが、もう期限としては1ヶ月程度しかない場合には、貸金業者と交渉して間に合うものなのでしょうか。

時効の中断という措置をとって時効になることを防げます。

調査の結果過払い金がある、と判断できる場合でも、時効までの期間が短いような場合には、交渉をしているうちに時効を主張されてしまうのでは?と心配する方もいらっしゃるでしょう。

しかし、このようなケースでは、「時効の中断」という時効の完成を防ぐ方法もある事を知っておきましょう。
消滅時効というのは、債権が存在しているにもかかわらず、何も行わないことによって生じる法律上の効果です。
そのため、債権者として行動をした場合には、時効の完成を認める必要がないというのが民法の考え方で、時効の中断に該当する行為を取った場合には時効の完成が認められません。

後述する時効の中断の措置をとると、そこからまた10年時効を数え直すことになります。
時効の中断には様々な種類があるのですが、過払い金の請求をする場合に利用するのは次の2つの種類です。

裁判を起こす

一番わかりやすい方法としては、過払い金の債権者である借入を行った人が債務者である貸金業者に対して裁判上の請求をすることです。
民法では、裁判を起こすと時効は中断するという規定になっています。

なお、裁判をするにあたっては仮執行や仮処分といった民事保全法上の措置が行われることがありますが(例、貸金業者の銀行口座を仮差押えする)、こういった行為にも時効の中断の効力が認められる事になっています。

内容証明郵便を利用する

過払い金の返還を巡る裁判を起こすのはわかりやすいのですが、過払い金がいくらなのかの計算などに時間がかかる場合もあり、裁判に間に合わないというケースもあります。
そのような場合には、民法で規定されている「催告」というものを行い、催告から6ヶ月以内に支払いをしてもらうか、裁判を起こすかによって時効を中断することができます。

「催告」というと「過払い金を払ってください」と貸金業者にお願いすればよいようなイメージですが、きちんと請求をしたことを証明するために内容証明郵便を利用することが法律実務となっています。
内容証明はどのような内容の文書を作成したのかを郵便法の規定に沿って証明してくれるもので、郵便局が「いつ・どのような内容の文章」を相手に送ったのかを証明してくれます。

これにより、民法に規定されている「催告」に該当する文書を債務者である貸金業者に送った、と証明することができ、債権者が一時的に時効の完成を主張できなくすることができます。

まとめ

このページでは、過払い金請求というものがどういうものか、過払い金請求には期限がある、といったことを中心にお伝えしてきました。
過払い金請求は民法上の不当利得返還請求権にあたり、時効により消滅する権利であり、出資法の改正後すでに長期間経過している現状、消滅時効で主張できなくなっているものもたくさんあります。
ただし、時効にかかっておらず請求できるものについては、時効の中断により消滅時効を主張できなくすることができます。
過払い金の有無の調査や実際の取り戻しは弁護士に相談するとスムーズに行うことができますので、是非弁護士に相談してみてください。