任意整理で裁判になる場合や、差し押さえなどの疑問について弁護士が解説いたします。
ざっくりポイント
  • 債権者が裁判を起こすケースや、債務者が過払い金の請求で裁判を起こすケースがある
  • 弁護士に依頼する場合、基本的に本人は裁判に行く必要はない
  • 裁判を起こされた後に任意整理をする場合、条件が厳しくなる可能性がある
  • 目次

    【Cross Talk 】任意整理で裁判になるケースとは?

    任意整理を検討しているのですが、裁判にならないか心配です。任意整理で裁判になるケースはありますか?

    任意整理で裁判になるケースとして、任意整理の手続きが長期化して債権者が裁判を起こすケースや、過払い金を請求するために債務者が裁判を起こすケースがあります。

    任意整理について裁判になる場合があるんですね。裁判になった後に、任意整理できるかも教えてください!

    任意整理で裁判になるケースや、裁判所に行く必要があるのかなどを解説いたします。

    弁護士費用が払えずに手続きが長期化した場合など、任意整理において裁判になるケースがあります。
    任意整理で裁判になった場合、裁判所に行かなければならないのか、財産を差し押さえられてしまうのかなどは、気になるところです。

    そこで今回は、任意整理で裁判になるケースや、裁判になった場合の疑問点などを解説いたします。

    任意整理において裁判となるケース

    知っておきたい借金(債務)整理のポイント
    • 債権者が裁判をする主な理由は、債務名義を得て強制執行をするため
    • 過払い金を請求するために、債務者が裁判を起こす場合もある

    任意整理で裁判になるケースとして、どんな場合がありますか?

    まずは、債権者が債務名義を得て強制執行をするために裁判を起こすケースです。また、過払い金を請求するために、債務者の側が裁判を起こすケースもあります。

    債権者が訴訟をする理由

    債権者が訴訟をする主な理由は、裁判に勝って勝訴判決を得ることで、債務者の給与などの財産に強制執行をするためです。
    給与などの財産に強制執行をすることにより、債務者が借金を支払わなくても強制的に回収することができます。

    強制執行をするには債務名義が必要ですが、裁判の確定判決は債務名義の一種なので、勝訴判決が確定すれば債権者は強制執行が可能になります。

    弁護士・司法書士が放置をして債権者が訴訟をする

    弁護士・司法書士に任意整理を依頼したものの、依頼を受けた弁護士・司法書士が業務を放置したために、債権者が訴訟を起こすケースがまれにあります。
    通常はあまり考えられないことですが、悪質な事務所に依頼してしまったことで任意整理の業務が放置されてしまい、債権者が借金を回収するために裁判を起こす場合です。

    上記のようなトラブルを避けるには、債務整理の実績や経験が豊富な弁護士に任意整理を依頼することをおすすめします。

    弁護士・司法書士に対する費用が払えずに長期化して債権者が訴訟をする

    弁護士や司法書士に対する費用が払えずに長期化した場合、債権者が訴訟をしてしまう可能性があります。
    弁護士や司法書士に任意整理を依頼する場合は費用がかかりますが、費用を支払えない場合は、基本的に任意整理の手続きが進みません。

    任意整理の手続きが進まない間に、債権者が裁判を起こしてしまう可能性があるのです。
    弁護士や司法書士が受任通知を送付した場合、債権者が債務者や保証人に対して直接取り立てをすることは禁止されますが、訴訟を起こすことは禁止されないので、裁判に踏み切ることがあります。

    債務調査の結果過払い金が発覚して請求のための訴訟を起こす

    債務を調査した結果、過払い金があることが発覚した場合は、過払い金を請求するために、債務者が債権者に対して裁判を起こすケースがあります。

    過払い金とは、いわゆるグレーゾーン金利がまかり通っていた時期において、貸金業者などの債権者に払いすぎていた利息のことです。
    債務の調査(借金の状況について調査をすること)をした結果、過払い金があることが判明した場合、債務者は債権者に対して過払金を返還するように請求できます。

    債権者が請求に応じない場合は、債務者が裁判を起こして、過払金を返還するように請求する方法があるのです。

    任意整理で裁判になった際の疑問

    知っておきたい借金(債務)整理のポイント
    • 弁護士に依頼した場合、基本的に本人が裁判所に行く必要はない
    • 裁判を起こされた後に和解をする場合、条件が厳しくなる可能性がある

    任意整理について裁判になった場合、本人が裁判所に行かなければなりませんか?裁判を起こされた後に、任意整理はできるかも心配です。

    弁護士に依頼した場合、基本的に本人が裁判所に行く必要はありません。裁判を起こされても任意整理は可能ですが、条件が厳しくなる可能性があります。

    弁護士に依頼していれば依頼者が裁判所に行く必要はない

    任意整理で裁判になった場合、裁判の代理人になることを弁護士に依頼していれば、依頼者本人は基本的に裁判所に行く必要はありません。
    任意整理で裁判となった場合、民事裁判となります。この民事裁判においては、実質的には当事者双方が書面を提出することで裁判が進行するため、本人の出廷が必要になる場面がほとんどないからです。

    民事裁判の代理人として弁護士を選任すれば、本人のかわりに弁護士が裁判に出廷して書面を提出するので、本人は基本的に裁判所に行く必要がありません。
    司法書士(認定司法書士)も、簡易裁判所における訴額(基本的には1社あたりの借金の金額のこと)140万円以下の裁判であれば代理人になることができます。
    ただし、金額が140万円を超える場合や、簡易裁判所以外の裁判(地方裁判所や高等裁判所など)の場合は、司法書士は代理人になれない点に注意しましょう。

    もし簡易裁判所の裁判において司法書士に依頼した場合に、債権者が控訴してしまうと、管轄が簡易裁判所ではなくなるので、司法書士では対応できなくなります。
    弁護士の場合は簡易裁判所以外であっても制限なく代理人になれるので、債権者が控訴するリスクを考えると、最初から弁護士に依頼する方法もあります。

    財産で差し押さえられる可能性が高いのは給与

    財産のうち、一般に差し押さえられる可能性が高いのは給与です。
    預貯金を差しおさえる場合、差押時点で既に入金されている預貯金は差し押さえることができますが、差し押さえ後に入金された分については差し押さえの効力は及びません。
    例えば、差し押さえの時点で預貯金が10万円あった場合、10万円は差し押さえられてしまいますが、差し押さえの後に5万円が入金された場合、5万円については再度差し押さえをしない限り効力は及ばないのです。

    一方、給与を差しおさえる場合は、債務の全額が回収されるまでは差し押さえが継続的に続きます。
    給与が月給制の場合は、毎月定期的に給与を差し押さえられてしまうということです。
    もっとも、給与を差し押さえられたとしても、給与の全額がもらえなくなるわけではありません。給与を全額差押できてしまうと、債務者が生活できなくなってしまうからです。
    法律上、給与については、通常はその4分の3は差押することが禁止となります(民事執行法152条)。給与を差し押さえられる場合は、手取り額の4分の1が、債務の全額を支払うまで差し押さえられてしまうことになります。

    既に裁判を起こされた場合に任意整理には意味があるか

    債権者に裁判を起こされた場合でも、任意整理をすることは法的には可能です。
    ただし、債権者が裁判を起こした後に任意整理をする場合、裁判の判決が確定すれば強制執行されてしまう可能性が高いので、裁判上の和解や訴えの取り下げが重要になります。

    裁判上の和解とは、裁判の手続の中で債権者と和解をして、双方が支払いについて合意する方法です。
    注意点として、裁判上の和解は確定判決と同様の効力があるので、裁判上の和解によって任意整理をした場合、もし後できちんと支払わなかった場合は、債権者に強制執行される可能性があります。

    訴えの取り下げとは、債権者が裁判所に申立てた訴訟を撤回してもらうことです。
    裁判の手続きを介さずに、裁判外で任意整理をした場合、それだけでは裁判の手続きは終わらないので、そのままでは判決が確定してしまいます。
    そこで、裁判外で任意整理をした場合は、任意整理について合意するとともに、債権者に訴えの取り下げをしてもらう必要があるのです。

    更に、債権者が裁判を起こした後に任意整理をする場合、上記のような点以外に、遅延損害金が追加されるなど、和解の条件が厳しくなる可能性がある点に注意しましょう。

    裁判を起こすには督促状を何回も送付したり、弁護士に依頼したりなど、様々な費用がかかるのが一般的です。かかった費用を回収するために、和解の条件が厳しくなることがあるのです。

    まとめ

    任意整理で裁判になるケースとして、弁護士費用が払えずに長期化して債権者が訴訟を起こす場合や、過払い金を請求するために債務者が訴訟を起こすケースなどがあります。
    債権者が訴訟を起こした場合でも、弁護士に裁判の代理人を依頼した場合は、基本的に本人が裁判所に行く必要はありません。
    債権者が訴訟を起こした後も任意整理は可能ですが、条件が厳しくなる可能性がある点に注意しましょう。