- 任意整理は貸金業者だから応じてもらえる可能性が高い
- 自己破産や個人再生は貸金業者と変わらない
- 個人間の借金がある場合の債務整理上の注意
【Cross Talk 】相手が貸金業者ではないのですが債務整理は可能ですか?
債務整理をしたいのですが、いくつかある借り入れのうち、1件だけ貸金業者ではない知人からの借り入れがあるのですが、債務整理は可能なのでしょうか?
そのような場合でも債務整理は可能です。ただ、債務整理のうち任意整理という方法では、借入先との合意を得る必要があります。なので、任意整理では借入先と合意できず、うまくいかない可能性があります。また、債務整理のうち自己破産や個人再生という方法は、知人からの借り入れがある場合にも選択可能です。しかし、知人だからといって貸金業者とは別に扱い優先的に返済している場合には、偏頗弁済という行為になって自己破産・個人再生に影響するので注意しましょう。
そうなんですね!詳しく教えてください。
債務整理の対象となる債務の多くが貸金業者からの借り入れなのですが、借金は貸金業者だけではなく、親族・友人・交際相手・会社などの貸金業者ではない人からも行います。このような個人間の借り入れについて債務整理は可能なのでしょうか。任意整理は債権者と同意できれば可能ですが、個人間では貸金業者のような同意を得られない可能性があります。自己破産・個人再生では債権者として反対される可能性があるのですが、その多くは手続きに影響を及ぼさず、法律上の規定によって免責・減額されます。個人の債権者がある場合の注意点と併せて確認しましょう。
貸金業者以外の個人間の借金も債務整理は可能
- 任意整理は債権者の同意を得られれば可能
- 自己破産・個人再生は債権者として関与してくる可能性があるのみで基本的には可能
貸金業者以外の個人間の借金も債務整理は可能ですか?
個人間の借金も債務整理は可能です。ただし、任意整理では債権者の同意を得る必要があります。自己破産や個人再生では債権者として手続きに関与してくる可能性がありますが基本的には可能です。
貸金業者以外の個人間の借金について、債務整理は可能なのでしょうか。
債務整理とは
債務整理とは、借金返済に困ったときに、法的な手段を用いて借金を減額・免除してもらうもので、任意整理・自己破産・個人再生などの手続きによって行われます。
個人間の借金がどうなるかは、それぞれの手続きによるので、任意整理と自己破産・個人再生に分けて見てみましょう。
任意整理は理論的には可能
裁判所の手続きをとらず、直接債権者と交渉して借金を減額させる方法をいいます。
この任意整理は債権者と直接交渉するもので、貸金業者と任意整理をする場合には、ほとんどの場合で元金のみを36回~60回で分割して支払う、という結果になるもので、利息・遅延損害金はカットしてもらえます。
これは、東京三会基準と呼ばれる基準に基づいて、弁護士が貸金業者と交渉を重ねてきた結果、自主的なルールとして確立したものです。
ですので、個人間の任意整理については、あくまで交渉がまとまるかどうかに関わり、債権者が希望する条件を受け入れてくれるならば任意整理ができます。
しかし、債権者が交渉を一切認めず、一括での返済しか認めないというような場合には、任意整理はできないことになります。
自己破産・個人再生は可能
自己破産・個人再生は、破産法・民事再生法の法律の適用がされれば、借金が免責・減額されます。
債権者は手続きの中で異議を申立てるなどが可能です。
しかし、小規模個人再生を行う場合で、債務の1/2の額の債権者が反対するような場合でなければ、手続きに影響を与えることはありません。
そのため、自己破産・個人再生は可能です。
過払い金請求
なお、払いすぎたお金が戻ってくる過払い金請求については不可能です。
なぜなら、過払い金請求は、貸金業者から借り入れした場合に発生するもので、個人間の借り入れについては法律上発生しないものだからです。
個人間の借金がある場合の債務整理の注意点
- 個人間の借金がある場合の債務整理の注意点
- 個人だからといって返済してしまうと偏波弁済として自己破産・個人再生に影響することに特に注意
個人間の借金がある場合の債務整理でなにか注意すべき点はありますか?
いくつかあるので確認してみましょう。
個人間の借金がある場合の債務整理の注意点について確認しましょう。
一般的な任意整理は意味がない・できない可能性がある
一般的な任意整理は意味がない・できない可能性があることです。
まず、任意整理は債権者が承諾しない限りできないことは上述した通りです。
また、個人間の借り入れは、そもそも利息や遅延損害金の支払い義務がないような場合があり、この場合元金の減額の交渉ができないと意味がなくなるといえます。
個人間の借金だからと返済してしまうと自己破産・個人再生に影響
個人間の借金がある場合で一番気をつけなければならないのが、個人間の借金だからと、自己破産・個人再生の手続き期間中に返済してしまう、偏頗弁済です。
自己破産・個人再生では、債権者は全て平等に扱わなければならず、これは貸金業者であろうと、個人・親族・会社であろうと関係ありません。
にもかかわらず、親族だから・友達だからと返済してしまう、いわゆる偏頗弁済(へんぱべんさい)を行うと、次のような不都合が生じます。
自己破産の場合には、偏頗弁済をしたものについては、管財人が後に取り返して債権者への配当に回します。
また、偏頗弁済をすると免責不許可事由となります(破産法252条1項3号)ので、裁量免責を得るために、同時廃止が可能であった場合でも少額管財となって、余計に費用がかかることになります。
また個人再生の場合には、支払った額が最低弁済額に加算されることになり、これを加算しないで再生計画案を提出すると債権者の利益に反する再生計画案として不認可となる可能性があります。
ヤミ金である場合
個人の借金であるとしてヤミ金であるような場合があります。
ヤミ金に返済していると、おなじく上記のように偏頗弁済とされることがありますし、ヤミ金の返済をすることで、稀にヤミ金に協力したと疑われて口座が凍結されることがあります。
ヤミ金である場合には返済はせずに警察に協力してもらって解決する必要があります。
取り立て規制は個人にはない
なお、個人が債権者である場合には、貸金業者のような取り立て規制がありません。
貸金業者は取り立てにあたって、取り立ての時間や、会社に取り立てをすること、弁護士に依頼した後に本人に取り立てをすること、などが禁止されています。
個人については貸金業者ではないので、これらの規制がありません。
まとめ
このページでは、親族・友人など貸金業者以外の人が債権者である場合の債務整理についてお伝えしました。
貸金業者以外が債権者でも債務整理は可能ですが、任意整理には応じてもらえない可能性があるなど、貸金業者との債務整理とは異なる面があります。大きなトラブルになる前に、なるべく早く弁護士に相談するようにしましょう。