- 自己破産で免責されると債務が消えるわけではなく、強制的に取り立てることができなくなる、という解釈がされている
- 自己破産後にする執拗な取立ては犯罪になることもある
- 警察や自己破産を依頼した弁護士を介して取立てを行う債権者に対して厳正な措置をとってもらう
【Cross Talk】自己破産後に取立てが来たらどうすればよい?
自己破産をした後には取立ては来ないですか?もし来たら対応はどのようにすればよいですか?
消費者金融や銀行などの貸金業者であれば取立てはしませんし、仮に個人などから取立てを受けた場合には応じなくても問題ないです。
取立てをしてくる場合には依頼をした弁護士に、犯罪行為に該当する行為を行う者が居る場合には警察に対応を相談しましょう。
自己破産について調べていると、借金が免責される、という情報を目にすることがほとんどです。
その結果、借金の取立てが無くなることが期待されるのですが、取立て自体は人が行うことですので自己破産手続きなど関係なしに取立てをする、という人も中には居るでしょう。法律上は「借金が免責される」というのは借金が消えてなくなる、という解釈ではなく、借金自体はあるのだけど、法律的な手段によって取立てができなくなる、という解釈がされています。
そして、自己破産手続きで免責がされたにもかかわらず取立てを行う場合には、破産法・刑法という法律で処罰される可能性があります。免責を受けた者は取立てに応じる必要はありませんし、取立て行為が目にあまる場合には警察に相談したり、法的な措置で対抗することで解決します。
自己破産手続きで借金が免責された後の関係は?
- 自己破産手続きで借金が免責されても借金が消えるわけではない。
- 借金は消えないが、法律的な手段による回収ができなくなっているという解釈がされている。
- 任意に支払った場合は返済としては有効である。
自己破産手続きで借金が免責された場合って借金自体が消えてしまうのではないのですか?
難しい法律上の理論になるのですが、借金自体が消えるわけではなくて、強制執行ができなくなるだけであると言われているんです。
自己破産手続きを利用した結果、破産者は免責されることになります。
この「免責」という効果なのですが、シンプルに考えると借金が消えるようなイメージを持つ方も多いと思います。
そのイメージで特段問題は無いのですが、実は破産法の解釈は違った見方をしています。
学者による学説の対立がある分野ではあるのですが、免責されても支払い義務がなくなるだけで任意に支払うことはできる、という解釈がされています。
このような債務を自然債務と呼んでいます。
借金が消えてなくなることと、支払義務がなくなるだけである、ということの違いは、免責後に破産をした人が任意に支払った時の効果がどうなるかに関わります。
借金が消えてなくなっているという解釈であれば、債権者だった人は金銭を受け取る理由がなくなるので、非債弁済・贈与・不当利得といった別の法律問題が新たに発生する可能性があります。
これに対して、自然債務であるという解釈によると、任意に支払ってきたものについては弁済として有効に扱い、債権者は金銭を受け取ってそのまま自分のものにすることができるという事になり、こちらが法律上の解釈となっています。
あまり、実際の自己破産手続きや、これを巡る一連の法律的な請求には直接関係しないのですが、こういった解釈をしている事を知っておいてください。
借金の取立てはできなくなるが、実際行った場合にはどうなる?
- 消費者金融・銀行などの貸金業者は自己破産に着手した段階で取立てをしなくなる
- 貸金業者ではなく個人から借入をしたものについて取立てをされる可能性はある
- 取立て目的で面会を強要することは破産法が禁じており、さらに取立ての態様によって刑法の規定に違反する犯罪になる
では実際に自己破産手続き後に取立てはされませんか?取立てが来た場合の対処法を教えてください。
消費者金融や銀行などの貸金業者については、そもそも自己破産手続きを依頼した段階で請求しなくなります。ただ、個人の方については取立てをする可能性はあります。
取立てが犯罪になる可能性を示して取立てをやめてもらい、それでも執拗に迫る場合には逆に法的な手段に出ることも必要になるでしょう。
自己破産手続きによって免責された後に実際に取立てがあるのでしょうか。
この点については、債権者が消費者金融や銀行などの貸金業者なのかそうではないのか、によって分けて考えます。
債権者が消費者金融や銀行などの貸金業者の場合には、自己破産手続きの依頼を弁護士が受けた旨の通知(受任通知)が来た段階から債務者に対する取り立てが法律上禁止されます。
そして免責されると、貸金業者は貸倒償却という会計上の処理をして終わりという態度なので、取立てをすることはありません。
取立てを受けるならば、貸金業者以外の個人から借入をしている場合が大半でしょう。
よくある例としては、自己破産をしたにもかかわらず、お金を返してもらえない事に納得いかない元交際相手や元々は友人関係にあった人からの取り立てなどが挙げられます。
このような者は、自己破産は、消費者金融や銀行などの金融機関との間でやるもので、金融機関ではない自分達には関係なく請求できると思っている場合や、そもそも法律を守る気がない場合などが考えられます。
自己破産手続きで免責を認めたにも関わらず、その後の取立てについて何らの制限を規定していなければ、免責というものに実効性がありません。
そこで、破産法275条において、返済を迫る目的で破産申立てをした人やその親族の人に、会うことを強要するなどした場合には犯罪になるという事が規定されています。
この規定は刑が3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金となっている非常に重い刑であるといえます。
また、債権者が債務者の元に訪れて勝手にお金を持って帰れば窃盗罪が、お金を持っていく際に暴行や脅迫を行えば強盗罪や恐喝罪が、「払えないのであれば土下座しろ」などと強要すれば強要罪が、それぞれ成立することになります。
もし、執拗な取立てが来るような時には、警察に相談しても良いですし、破産申立てを依頼した弁護士に相談をして、適切な措置をとってもらう事も視野に入れた方が良いでしょう。
このような執拗な取立ての背景には、単なる金銭の回収への意欲だけではなく、嫌がらせをしたい・懲らしめてやりたいといった動機があることもあります。
そのため、返済義務がなくなっていること、取立て行為が犯罪に該当する事をきちんと認識してもらう事も必要で、場合によっては、逆に債権者に対して、損害賠償請求や接近禁止命令を出してもらうなどの措置を巡って裁判を起こすことも視野にいれなければならないこともあるでしょう。
まとめ
このページでは、自己破産手続きを利用して免責をしてもらった後に取立てを受けることがあるのか、という事と、万が一取立てがあった場合の措置についてお伝えしてきました。
消費者金融・銀行などの金融機関については、弁護士が自己破産手続きの依頼を受けた段階で取立てをしなくなります。
ただ、個人債権者については取立てを行う者は実際に居ます。
取立てについては、破産法や刑法に規定がある犯罪行為になる可能性があるので、その旨をきちんと警告し、それでも取立てをしてくる場合には、警察に相談したり、自己破産手続きを依頼した弁護士に相談したりするなどして対処するようにしましょう。