- 自己破産しても、原則的には、ガス、水道、電気が止められることはない
- ただし、滞納が数か月に及ぶ場合には、破産手続が開始される前に停止される場合があるため、早めに弁護士に相談すると良い
【Cross Talk】自己破産前に公共料金の支払いをしてない!自己破産したら止められちゃうんじゃないの!?
私は自己破産前に、ガス、水道、電気などの公共料金を滞納していたのですが、自己破産したら停止されてしまうのでしょうか。
結論としては原則的には、供給等が停止されることはありません。その理由は、破産法により、「破産者に対して継続的給付の義務を負う双務契約の相手方は、<中略>その義務の履行を拒むことができない。」(破産法55条1項)との規定が定められていることによります。
「継続的給付の義務を負う双務契約の相手方」とは、一般的には、ガス、水道、電気などの公共サービスを提供する会社を指します。この他にも携帯電話回線契約、インターネット契約、警備契約などがあります。
ただし、すでに数か月間の滞納がある場合には、破産手続が開始される前に停止されてしまう場合があります。滞納が数か月に及ぶ場合には、弁護士に相談すると良いでしょう。
なるほど、ありがとうございます。破産してしまうと、ガスや電気が使えなくなると思い、不安を感じておりました。今後も是非、自己破産について、ご相談させてください。
自己破産をした場合にその後、ガス、水道、電気はどうなってしまうのでしょうか。
自己破産した後も、電気等は止められない!
- 破産手続中に滞納料金の支払いがないことを理由として、電気等の供給を停止することはできない
- 破産手続開始後、免責許可決定された場合、破産申立て前の電気等の債務の支払い義務は免れる
先生、冒頭でもお聞きしましたが、再度確認させてください。自己破産しても、本当に電気などは停止されることはないのでしょうか。
冒頭でもご説明したとおり、滞納が数か月に及んでいる場合には、自己破産手続の前に供給等が停止されてしまう可能性があります。このような場合には、破産手続開始の申立て以前に、一旦滞納分を支払うといった方法も考えられますが、自己破産をご検討される場合には、すでに資産状況がかなり悪化している場合が少なくはないでしょう。
そのような場合には、弁護士にご相談頂ければ、弁護士から自己破産を予定している旨の通知を、各供給会社にすることにより、供給停止を回避することができる場合がございます。
「自己破産しても、電気等の供給が停止されないのか」について、改めてお答しますと、破産手続開始前の未払いを理由とする破産手続中の電気等の供給を止めることはできないと法律で決められている(破産法55条1項)ことから、破産手続中は電気、ガス、水道の公共サービスは受けられます。
また、破産手続開始後、免責許可決定されると、破産申立て前の滞納については、原則的にはその支払い義務を免れます(破産法253条)。
したがいまして、原則的には自己破産をした後であっても、電気等が止められることはありません。自己破産制度は、法的清算を行うことにより、個人の経済的再生の機会を確保することにその目的があるためです。
破産手続に関する3つの例外
- 電気等の供給は弁護士が介入しない場合、破産手続開始前には供給停止される可能性が高い
- 同時廃止の場合には、電気等の会社が破産の事実を気づかないため、弁護士が介入しない場合には供給停止となる可能性が高い
- 破産手続開始後の未払いについては、弁護士の介入により供給停止を回避できる場合がある
自己破産の手続を行えば、電気等が停止される心配は全くないのでしょうか。
そうとも言い切れません。これまでのご説明も、「原則的には」と申しましたとおり、一定の例外がございます。下にそれぞれ詳しくご説明いたします。
破産手続開始前だと止められてしまう
破産法55条1項の規定によりますと、簡単に言えば、破産手続中には、ガス、水道、電気につき、供給を停止できないといった内容となっています。ただし、ここに言う「破産手続中」とは、厳密には、法的な「破産手続開始後」を指し、裁判所に手続きを申立て前の場合には、破産法55条1項の規定上、相手方に供給停止を強制することができません(つまり、正式に裁判所に破産手続を申し立てる以前であれば、電気等の会社は供給を停止することができます)。
このような場合には、弁護士が受任通知とともに、破産手続を行う予定である旨を電気等会社に通知(支払不能の通知)を行うことにより、供給停止を回避できる可能性があります。
また、滞納分を支払って解消することも考えられますが、破産手続開始前に支払ってしまうことには破産手続上問題が生じる可能性があります。滞納がある場合には、弁護士に相談するとよいでしょう。
同時廃止の場合は供給が停止される危険がある
同時廃止とは、破産管財人が選任されず、破産開始手続と同時に破産手続きを終了させる手続きをいいます。
このような場合には、破産管財人がつかないことから、電気等の会社に通知がされず、供給が停止されてしまう場合があります。
しかしながら、このように同時廃止の場合であっても、破産法55条1項の規定の効力は及ぶことから、代理人弁護士から通知を行うことにより、供給停止の回避をすることができます。
このような場合には弁護士に相談すると良いでしょう。
破産手続開始後の未払い
破産法上、原則として、破産手続開始前の債権については、破産手続の効力が及びますが、破産手続開始後の債権には及びません。
つまり、破産申立て後の電気等の公共料金未払によって電気等のサービスを止められる可能性があるということです。
しかしながら、管財事件となっている場合には、破産管財人が支払い等の管理を行い、また、管財事件ではない場合であっても、弁護士の適切な介入によって、供給停止を待ってもらうことが可能な場合があります。
もっとも、下水道代は、免責されない、すなわち未払分の支払い義務が消えないため、しっかり支払っていく必要があります。
未払いがある場合、不安に思っていることを弁護士に相談してみましょう。
自己破産手続が終わったら
- 破産手続が開始されれば、ガス、電気、水道等の公共サービスは止められる心配はない
- 破産手続が終結した後も、新たな未払いがなければ、公共サービスは止められない
自己破産手続が完了した場合はどのような効果があるのでしょうか。
原則的には、裁判所により免責許可が決定された場合には、破産手続開始前の債権につき、支払義務を免れます。
したがって、他の借金と同様に下水道代以外の公共料金についても支払義務が免除されます。自己破産した場合であっても、新たな未払いがなければ電気等の公共サービスは受けられますし、新たに契約を締結することが可能です。
まとめ
自己破産をした場合には、ガス、水道、電気等の公共サービスがどのようになるのかが不安であると思います。しかしながら、多くの場合には、弁護士の適切な介入により解決が可能であることから、早期に弁護士に相談してみると良いでしょう。