- 自己破産の種類
- 破産管財人とはどのような人か
- 破産手続きでどのように関わるか
【Cross Talk】自己破産手続きを考えています。破産管財人ってどんな人ですか
借金返済が出来ず、自己破産を考えています。自己破産をするにあたって「破産管財人」という人が関係してくるというのを見たのですが、これはどのような人なのでしょうか。
「破産管財人」は、自己破産の申立て後に、自己破産手続きをすすめる役割として裁判所から選任される人で、実務上弁護士が選任されます。
なるほど!詳しく教えていただけますか?
申し立てをした自己破産手続きが、管財事件として扱われることになった場合には、裁判所から破産管財人という人が選任され、手続に関与してきます。破産管財人は自己破産に関する手続きを主導する役割で、自己破産手続きが適切に行われているかを調査して裁判所に報告する役割があります。
破産管財人は何をする人なのか、どのように申立人と関わってくるのかについてお伝えいたします。
破産管財人とは
- 破産管財人は管財事件のときにつけられる
- 破産管財人の職務
破産管財人というのはどのような人なのでしょうか。
自己破産手続きの中でも管財事件のときに裁判所から選任されます。破産手続きをすすめる役割を持った人です。
破産管財人とは自己破産手続きでどのような役割を持っているのか確認しましょう。
自己破産手続きの種類
自己破産手続きは、同時廃止事件と管財事件で二つの手続きに分けられます(また、管財事件も通常管財(特定管財)と少額管財という2つの運用がありますが、個人の自己破産で通常管財(特定管財)になる場合はほぼありません)。自己破産手続きとは、簡単に言えば、借金の支払いができないので、自己の財産をお金に換えて債権者に配当する代わりに、借金を支払うことなく(免責)して、経済的に再出発する手続きです。
そのため、自己破産手続きでは、借金の支払いが不能な状態にあるか、債権者に配当する財産として何があるか、免責を不許可とすべき事由がないか、などを調査いたします。
調査の中で、配当するような資産がない場合で、免責を不許可とすべき事由がないような場合には、簡易な手続きで自己破産を終わらせることができ、この簡易な手続きが同時廃止ということになります。
それ以外の個人の自己破産については、管財事件となります。
破産管理人が選任される理由
破産管財人が選任される理由は、裁判所のマンパワーを補うためです。
破産をする際には財産の調査、免責不許可事由に該当する理由がないか、免責不許可事由に該当する場合には裁量免責が相当かどうか、などを調査する必要があります。
また、配当に回す財産がある場合の財産の換価や、特定の債権者への偏頗弁済があった場合の取り戻しなどの事務が発生することもあります。
もし景気が悪いなどで申立てが集中してしまうと、通常の裁判所・裁判官だけでは対応しきれない可能性があります。
破産申立てがあった場合にこれらの事務に従事してもらうために、破産管財人が選任されます。
そして、破産管財人は裁判所・裁判官が行うことを代行する側面があるため、実務上弁護士などの法律専門家が選任されております。
破産管財人は少額管財をする場合につけられる
破産管財人は管財事件の場合に、自己破産の申立て後に裁判所から選任されます。
選任される破産管財人は、破産申立てをたくさんこなしているなど破産手続きに精通していて、裁判所の破産管財人候補者名簿に登録されている弁護士です。
各地方裁判所によって基準が異なるものの、実務経験が豊富な弁護士が登録されていて、東京地方裁判所のように自己破産をたくさん取り扱っている裁判所では、破産管財人研修を行っている地域もあります。
破産管財人選任に費用は掛かる?
- 破産管財人は弁護士などの専門家が選任される
- 引継予納金として納める額が費用に充てられる
破産管財人は弁護士のような専門家がなるんですよね?ということは費用がかかるのでしょうか。
引継予納金としておさめることになるので費用がかかると考えておきましょう。
破産管財人に費用はかかるのでしょうか。
破産管財人は裁判所が選任するのですが、申立てをする際に引継予納金という形で納めることになるので、費用がかかると考えるべきです。
管財事件
個人の自己破産で管財事件の場合、ほとんどは後述する少額管財となるのですが、破産手続きに協力的ではない大規模な個人事業主などで資産関係が複雑であり、かつ財産隠しや偏頗弁済などで簡易な調査では終わらせられないような場合には通常管財(東京地方裁判所では特定管財と呼ぶ)になります。
裁判所によって異なるのですが、すくなくとも引継予納金として東京地方裁判所管轄では50万円以上が必要になります。
少額管財事件
個人の自己破産で管財事件の場合、ほとんどは債務額が少額で簡易な調査で済ませられる少額管財事件となります。
少額管財事件の場合には、東京地方裁判所管轄では20万円~の引継予納金とされています。
資産状況などによって20万円以上かかる場合もありますので注意をしましょう。
引継予納金は申立てまでの準備期間で貯める
引継予納金が20万円にしても50万円にしても、このような大金どうやって準備をするのか?と考えてしまう方も多いのではないでしょうか。
この引継ぎ予納金は、自己破産を弁護士に依頼してから、実際に申立てをするまでの準備期間に貯めることで準備します。
弁護士に自己破産を依頼すると、返済をストップすることができます。
今まで貸金業者に返済していたお金を弁護士費用の分割支払いと、引継予納金の準備に当てることになります。
無理なく準備できるので、お金がかかるからといって諦める必要はありません。
破産管財人の職務内容
- 破産管財人の職務
破産管財人はどのようなことをするのですか?
破産管財人の職務内容について確認しましょう。
破産管財人は次のような職務を行います。
破産者の債務額確定
破産者の債務額を確定します。
破産者とは破産申立てをして破産手続き開始決定をした人のことをいいます。
正確な債務額や、債務について抵当権などの担保権がついているかなどを調査して債務額を確定します。
破産債権者は自己破産手続きが開始すると、債権者から債権届出がされます。
この債権届出や、破産者の申立て書類のほか、銀行通帳の取引履歴をはじめとした財産の移動に関する書類から、債務者の債務額を確定します。
債務を隠して申立てをした場合、その債務については返済する義務があるので注意をしましょう。
破産者の財産管理・処分・回収等作業
破産者の財産管理・処分・回収等に関する作業を行います。
破産者に資産がある場合には、その財産は債権者の配当のための財産である「破産財団」に属するという扱いになります。
この破産財団に属することになる財産は、毀滅・隠匿しないように管財人が管理をすることになり、お金に替える処分(換価)を行います。
例えば、売却する価値のある自動車を持っている場合には、破産者から車検証・鍵などと一緒に預かり管理をして、中古自動車販売業者に売却を行います。
破産者が偏頗弁済をしたような場合には、そのお金を取り戻すための手続きを行い、任意に返還しない場合には訴訟によって回収をするという形で破産財団の管理を行うこともあります。
破産に至った原因調査(免責調査)
破産に至った原因調査を行います。
この調査は主に、申立て時の破産に至った事情をもとに、それを申立て書類と突き合わせたうえで、破産者と管財人が面接(管財人面接)を行って確認することで行われます。
管財人面接までに不明な点があれば、随時自己破産の申立てをサポートした弁護士を通じて質問されることになります。
免責不許可事由がある場合には、裁量免責が相当なのかどうかもあわせて調査します。
免責不許可事由となった原因や当事者のその後の生活・反省の程度を、債権者の意向なども踏まえて調査を行います。
債権者集会での報告共有
破産管財人は、以上の調査をしたうえで、裁判所で行われる債権者集会で報告を行います。
その名のとおり債権者集会には裁判所のほかに債権者が出席することが可能ですが、現実にはほとんど出頭することはありません。
報告は債権者集会の期日を裁判所で設定して行い、この報告には破産者も同席します。
ほとんどの場合では、裁判所に対して管財人が事前に提出した書面の通りである旨を述べる程度で、場合によって裁判所から破産者に簡単な問いかけがある程度で、期日自体は5分程度で終わることがほとんどです。
ただ、不動産の売却がうまく進んでいないなどで、すぐに終了できない場合には第2回債権者集会に続くことになります。
配当手続き
破産財団として破産者の資産をお金に変えたものを債権者に配当します。
ほとんどの場合で配当をするほどのお金は用意されず、そのまま終了することになります。
破産管財人が選任された場合の対応
- 破産管財人が選任されたときに破産者がしなければならない対応
- 破産管財人の調査に確実に答える
破産管財人が選任された場合になにか対応が必要ですか?
破産管財人からの調査にはきちんと答えるようにしましょう。
破産管財人が選任されたときに破産者がしなければいけない対応などについて確認しましょう。
破産管財人の調査を受ける
破産管財人は自己破産の申立書類から、破産事件の調査を行います。
中には申立書類だけでは詳細がわからないこともあります。
例えば銀行口座に個人名義の出し入れがあったような場合、たとえ真実としてはオークションサイトでの私物の売買であったとしても、破産管財人としては個人からの借り入れや、個人に対する返済との区別をつけることは、銀行口座の記載の調査だけではわかりません。
不明点については破産管財人から、申立てを依頼した弁護士を通して問い合わせてくるので、きちんと答えます。
どのような返答をするかについては弁護士にまずは正直に告げたうえで、どのような返答をするか検討します。
この調査には答える義務があり、きちんと回答しない場合、少額管財が通常管財となるなどのおそれがあるので、確実に回答しましょう。
郵便の転送
破産管財人が選任されている期間、破産者あてにきた郵送物は一度破産管財人に転送され中身を確認したうえで破産者に送られます。
これは、財産隠匿などを調べるためのです。
移転・旅行等の制限がある
破産者は破産管財人からの調査に応じる必要があるので住所移転が制限されています。
この住所移転については、短期の出張などの旅行も含まれます。
どうしても必要がある場合には、事前に裁判所の許可が必要です。
自己破産手続きをする際の破産管財人との接点
- 自己破産手続きにおいて、いつどのように申立人は管財人と接触するのか
自己破産手続きをする場合、私たちはどのような形で破産管財人と接点をもつのでしょうか。
破産管財人は自己破産の申立て時に選任され、手続終了までは関与することになります。
自己破産手続きにおいて、申立人と破産管財人はどのような形で接点を持つことになるのでしょうか。
管財人面接前のすり合わせ
自己破産申立てをすると、最初に管財人面接というものが行われます。
管財人面接に先立って、自己破産申立書に記載されている事項についての疑問点や、追加資料の提出を申立代理人に対して求めてきます。
この調査を拒否、妨害するようなことがあると、免責不許可事由に該当することになり(破産法252条)、最悪の場合では免責が受けられなくなるので、真摯に協力をしましょう。
破産財団として管財人が財産を管理する場合には、必要になるものを引き渡すように求めてきますので、これにはきちんと応じましょう。
管財人面接
破産申立時に管財人面接の日程が決められますので、所定の期日に管財人と面接をします。
管財人との面接では、難しい法律知識を必要とするものではなく、申立書に記載された借金の内容や、これからの生活に関すること、反省をしているか?といったことが中心です。
個人の自己破産については一回の期日で終わりますが、調査すべき事項が多いなど、破産管財人への返答が終わっていない事項があるような場合には複数回行われることもあります。
管財人が配当をして、免責に関する調査報告書を裁判所に提出すると、次は裁判所での期日となります。
第一回債権者集会
法律の建前上は、債権者に対して破産手続きの進捗を管財人から報告するものになります。
ただ、債権者が出席することはまれです。
第一回と記載しているのは、配当が終わっていないなど手続きが複雑になっている場合に、第二回…と続くものになるからですが、個人の債務整理が順調に終わっている場合には第一回で終わります。
手続きとしては、期日に裁判官・管財人・申立人が集まって、管財人より裁判所に対して配当に関する経過と調査報告書の内容を陳述するというものになりますが、形式的なものであっという間に終わることのほうが多いようです。
裁判所から質問があったとしても、反省や今後の生活に関するもので、難しい法律議論を戦わせるというようなものではありません。
管財人面接・第一回債権者集会に同席できるのは弁護士だけ
管財人面接・第一回債権者集会で管財人と直接接することになるのですが、これらの期日に代理人としてつきそってくれるのは弁護士のみです。
債務整理は司法書士も行っているのですが、司法書士が自己破産手続きをする場合にはあくまで書類作成を代行したという扱いになります。
そのため、期日に代理人として同行することができません。
自己破産手続きを確実に行いたいのであれば、弁護士に依頼をするのが適切です。
まとめ
このページでは、破産管財人とはどのような人か、どのように申立人と関わるかについてお伝えしました。
少額管財になる場合に選任される管財人は手続きの進行をする重要な役割をもった人です。
自己破産の申立ては弁護士に依頼して行い、管財人との関係をスムーズに調整してもらうのが良いといえるでしょう。