- 個人再生から自己破産に切り替えることは可能だが、いくつか制限がある
- 「支払不能」の状態になければ自己破産はできない
- 給与取得者等再生やハードシップ免責を利用した場合は、7年間は自己破産できない
【Cross Talk】個人再生から自己破産に切り替えるときの注意点とは?
再生計画の認可を受けましたが、病気が原因で仕事を続けることが困難になり、再生計画どおりの返済が難しくなってしまいました。
今後返済を続けられる目処も立たないので、自己破産に切り替えたいと思っているのですが、個人再生から自己破産に切り替えることは可能なのでしょうか。
「再生計画の認可後の事情の変化により自己破産に切り替えたくなった」という方はときどきいらっしゃいますが、切り替えをするためにはいくつか注意点があります。
特に気を付けなければいけないのは、切り替えの時期と、免責不許可事由の該当性の2点です。
法律的な話になり、理解が追い付かなくなってきました。詳しく教えていただけますでしょうか。
個人再生は、大幅に減額した借金を原則として3年の分割で支払っていく債務整理の手続です。自己破産のように借金を帳消しにすることはできませんが、マイホームを残すことができるという大きなメリットがあります。
ところが、一度は個人再生を選択したものの、事情の変化により自己破産を検討される方は少なくありません。この記事では、「個人再生を選んだが、やっぱり自己破産をして借金を帳消しにしたい」と思ったときにどのような手続をとればよいのか解説いたします。
個人再生と自己破産の違い
- 個人再生は借金を大幅に減額することができるが、支払い義務は残る
- 自己破産は借金を帳消しにすることができるが、財産は没収されてしまう
自己破産は借金をゼロにできる手続だと聞きましたが、デメリットとしては何があるのでしょうか。個人再生とは何が違いますか?
自己破産はメリットの大きい手続であるが、デメリットもあります。
それは不動産などの財産を取り上げられてしまう点です。一方、個人再生は住宅ローンの支払いが残っていてもマイホームを手元に残すことができる点が大きなメリットです。
自己破産を選ぶか個人再生を選ぶか決めるときには、それぞれのメリットだけでなくデメリットもきちんと理解しておく必要がありますね。
2つの手続の違いについて、もう少し詳しく教えていただけますでしょうか。
個人再生とは
個人再生とは、裁判所に申立てをして行う債務整理の手続で、大幅に減額された借金を、原則として3年で分割して返済していくものです。個人再生では「住宅ローン特則」と呼ばれる制度を利用することにより住宅を残したまま手続をすることができるため、住宅ローンの返済が残っているサラリーマンなどに人気のある手続です。
民事再生には小規模個人再生と給与所得者等再生という2種類の手続があります。小規模個人再生は継続して収入を得る見込みがある個人を対象としており、給与所得者等再生は、小規模個人再生を利用できる人のうち、給与等の安定した収入があり、収入の変動幅が小さい人を対象とした手続です。
個人再生を行うためには、裁判所に申立てを行う必要があります。その後、どのように生活を立て直して返済を行っていくのかまとめた「再生計画案」を作成し、裁判所に提出します。再生計画案が認可されて確定すると、再生計画に沿った返済が開始されます。
自己破産とは
自己破産は、裁判所に申立てをして行う債務整理の手続という点では個人再生と同じですが、個人再生と異なり、免責許可を受けることにより借金を完全に帳消しにしてもらうことができる手続です。個人再生のように返済の義務は残らず、借金から完全に解放されることができるのが自己破産の最大のメリットです。
一方、自己破産には財産を処分されてしまうというデメリットもあります。つまり、不動産や高価な車などの目立った財産は売却されて現金に換えられ、金融機関などの債権者に分配されてしまうことになります。
自己破産には同時廃止事件と管財事件の2種類があります。目立った財産がない場合には同時廃止事件となりますが、不動産などがある場合には管財事件となり、破産管財人と呼ばれる者が選任されて財産の換価と配当が行われます。
個人再生計画認可後であれば再生計画を一度取り消してもらう必要がある
- 「支払不能」の状態にあると認めてもらわなければ自己破産は認められない
- 「支払不能」と認めてもらうためには再生計画の取り消しが必要となる場合がある
個人再生から自己破産に切り替えるときに注意すべきポイントは何ですか?
まずは切り替えの時期です。
再生計画が認可された後に自己破産をする場合、一度再生計画を取り消してもらわなければいけないことがあります。
それはなぜでしょうか?再生計画の取消しとはどのような手続なのですか?
自己破産をするためには債務者が「支払不能」であることが要件となります。法律的に言えば、弁済能力の欠如により弁済期が到来した債務を、一般的・継続的に返済することができない状態になっている必要があります。
ところが、再生計画を認可してもらった債務者は借金が大幅に減額され、分割による支払い義務しか生じていません。このような状態で自己破産の要件である「支払不能」の状態にあると認めてもらうことができないことが多いです。
そこで、再生計画の取消しという手続が必要となることがあります。再生計画の取消しとは、債務者が再生計画どおりに返済を行わないときに、債権者の申立てにより、裁判所が再生計画の効力を失わせることをいいます。再生計画が取り消されると借金の減額はなかったことになり、債務者は従来の借金を支払う義務が生じます(ただし、再生計画に基づいてすでに弁済がなされた分は減額されます。)
これにより、債務者は「支払不能」の状態に陥り、裁判所に自己破産の要件である支払不能と認めてもらうことが可能となります。
個人再生から自己破産に切り替える際のその他の制限
もう一点注意しないといけないのは自己破産の免責不許可事由です。自己破産の申し立てを行っても、法律で定められた免責不許可事由に該当する場合、裁判所は原則として免責を許可してくれません。
免責不許可事由の一つに、「給与所得者等再生が確定した日から7年以内に自己破産を申請した場合」というものがあります。すなわち、個人再生で給与所得者等再生を選択した場合、再生計画許可決定が確定してから7年間は免責が認められません。
また、ハードシップ免責が確定した後7年間も同様に免責を認めてもらうことはできません。ハードシップ免責とは、再生計画の認可を受けて返済中にやむを得ない事情で返済が困難になったとき、ある一定の条件を満たす場合に限って残りの借金の返済を免責してもらう手続をいいます。
まとめ
個人再生から自己破産に切り替えるための手続についてご理解いただけたでしょうか。認可された再生計画どおりの返済が難しくなったとき、自己破産に切り替えるためには法律上いくつかの制限がありますので注意が必要です。
切り替えが可能なのか本人が判断することは難しい場合も多いかと思いますので、債務整理から自己破産に切り替えたいと思ったときには債務整理に詳しい弁護士に相談することをお勧めいたします。