- 個人再生には、個人再生申立ての弁護士費用、申立手続費用、個人再生委員の費用がかかる
- 個人再生のおおよその期間は4~6ヶ月程度である
【Cross Talk】個人再生をしたい!個人再生ってどのくらい期間・費用はかかるの?
借金が多くなってしまい債務整理を考えています。それでも住宅ローンで買った自宅はなんとか残したいです。そこで個人再生を考えていますが、どのくらいの期間・費用がかかりますか?
そうですね、個人再生はすこし長いイメージで、準備期間で人にもよりますが大体6か月程度、申立てをしてから6ヶ月程度、その後の部分返済で3年はかかります。費用は弁護士費用が40~60万円程度・個人再生委員への報酬が15~30万円程度です。うまく支払える仕組みはありますので、ご相談ください。
是非お願いします。
個人再生の特色としては、債務を一部削減できる裁判上の債務整理手続であるものの、自己破産のように資格の制限が生じず、「借金を減らしたいが、家を売りたくはない」といった要望がある方で住宅ローン支払中であっても住宅を保持できる場合があるなど、手続きに一定の幅が認められています。ここでは、そのような個人再生の費用や手続期間に関心がある方へ向けて、その内容についてご説明いたします。
個人再生のおおよその期間は6ヶ月間
- 個人再生であれば、申立て後の期間はおおよそ6ヶ月間(東京地方裁判所)
- 個人再生の手続期間は、各地の裁判所の状況によって違いがある(4~5ヶ月の運用)
個人再生の手続きにかかる期間についてもう少しご説明をいただけますか。わたしは、現在、東京在住ですが、会社の命令によっては転勤も考えられることから、時間的にどのくらいの期間を要するのかについて、特に、ご説明をいただけますでしょうか。
承知いたしました。
まず、裁判所に申立てをするために、各種資料の収集や数か月分の家計表の作成、弁護士費用及び個人再生委員報酬の準備等が必要ですので、その準備期間で概ね数か月~半年程度(個々の依頼者の方の状況で変わります。)の期間を要します。
また、裁判例への申立て後について、冒頭で個人再生にかかる期間を6ヶ月程度とご説明しましたが、相談者様のように、東京都に生活の本拠(住所、居所)がある場合には、個人再生の手続は東京地方裁判所に管轄がある(民事再生法4条、5条、6条参照)ことから、一般的には6ヶ月の期間がかかります。
この東京地方裁判所での所要期間は、全国的には長期にわたる部類に属します。東京地方裁判所での手続きが長期となるのは、後でご説明する個人再生委員を必ず選任する必要がある等の一定の手続きを行うためです。
手続期間について、東京地方裁判所を例に挙げてより詳細に説明いたしますと、以下のようになります。
なお、東京地方裁判所においては、民事再生手続標準スケジュールを策定し、公表しております。
申立から開始決定までの日数は1か月、申立から債権者集会及び再生計画の認可決定までには、およそ6か月としています。
個人再生の費用はどのぐらい!?
- 実費としては、収入印紙代、3回の官報掲載料、切手代、再生委員の報酬で15万円~30万円程度
- 弁済予定額6回分の支払いを6ヶ月間にわたって支払うことになる
- 裁判所によって取扱いが異なるので、詳しくは弁護士に聞こう!
個人再生の費用はどうなっていますか?
弁護士費用、手続きのための実費、管財人がつく場合の報酬がそれぞれかかり、おおよそ合計で70~80万円くらいで考えておいてください。以下詳しく見てみましょう。
収入印紙代、個人再生委員の報酬
まず、裁判所手続費用として、収入印紙代が1万円、切手代約2,000円、官報掲載費として約2万円かかります。その他、個人再生事件については、東京地方裁判所においては、全件、個人再生委員(裁判所が選任する弁護士等)を選任するため、再生委員の報酬を支払わなければなりません。
なお、東京地方裁判所以外の裁判所(大阪地方裁判所等)では、弁護士が代理人として個人再生を申立てる場合には、原則個人再生委員を選任しないといった実務上の取り扱いがあります。
分割予納金(履行テスト)
ここでのご説明は、主として東京地方裁判所での取り扱いです。分割予納金(履行テスト)は法的な手続というよりは、実務上の取り扱いとなります。
個人再生手続では、手続きの結果支払うことになる債務を今後支払うことができるかの確認を行っています。
個人再生を取り扱う裁判所によって、当該手続を行わないことがあるものの、この記事では東京地方裁判所での取り扱いを例に説明していきます。
分割予納金とは、個人再生申立書記載の弁済予定額を、申立人に、毎月、個人再生委員が指定する銀行口座に振り込ませ、再生計画の履行可能性についてテストを行うことをいいます(履行テスト:東京地方裁判所)。
再生計画の履行確保の手段として設けられているものであり、東京地方裁判所では、通常、再生計画における弁済予定金額につき、6回分の支払いを1ヶ月ごとに、6ヶ月間にわたって行います。
この分割予納金について、債務者が遅滞なく納付することができれば、履行可能性があるものとされ、他の要件も整っていれば、再生計画認可がされることとなります。仮に、分割予納金の納付が遅滞した場合であっても、特別な理由がある場合などには、再生手続は廃止されず、手続が継続される場合があります。詳しくは弁護士に相談することをおすすめします。
個人再生を長引かせないための注意点
- 手続き費用の滞納や必要資料の準備の遅れによって個人再生手続きが長引く
個人再生が長引いてしまうケースはあるのでしょうか。
一旦申立てがはじまると裁判所での手続きは淡々とすすみます。長引く原因は申立て前の準備段階での弁護士費用の支払い遅延や、申立て書類の作成・添付書類の収集がすすまないことが原因です。
1)手続きが長引く原因は申立て前にある
個人再生は一旦申立てがされると、裁判所での手続きは所定の方式に則り進むことになります。
もし手続きが長期化するとすれば、申立て前の準備時点であることがほとんどです。
多く見られる原因は、手続き費用の滞納や必要資料の提出遅れです。
手続き費用の分割払を滞納
個人再生の費用は既に述べたように総額で70万円程度を要しますが、債務整理を取り扱っている事務所のほとんどは、上記の費用を分割で積立てて支払うこととしています。
もっとも、裁判所への申立ては、弁護士費用等の分割の支払いが終わるころか、支払いが終わってから、行うことになりますので、費用の支払いが滞りがちになることで、申立てがどんどん先に伸びてしまうことがあります。
依頼者が手続きに対して協力的でない場合
また、弁護士費用の支払いさえしていればあとは待っているだけかというとそうではありません。
申立てにあたっては、申立てに至るまでの事情や、依頼者に関する情報の申立書への記載は不可欠ですし、添付の必要な書類の収集には依頼者の協力は欠かせません。
たとえば、どの銀行に口座があるのかについては依頼者が申告しなければわかりませんし、通帳や取引履歴の2年分のコピーは依頼者が提出しなければ弁護士は手に入れることができません。
これらの準備は依頼者にとっても負担ですが、提出に中々協力してもらえない場合には、必要書類が揃うまで申立てができないので手続きも長引いてしまいます。
そのため、手続きを長引かせないためには、依頼者の方においても、上記の点を注意される必要があります。
個人再生の支払い期間
- 個人再生の分割返済は基本的に3年で支払う
- 特別の事情があれば5年まで伸ばすことができる
個人再生はどれくらいの期間で返済をするのですか?
基本的に3年の分割弁済ですが、特別な事情があれば5年まで延ばすことができます。
個人再生の支払い期間は原則3年
個人再生の支払い期間は原則としては3年以内にすることが定められています(民事再生法229条2項2号、244条)。
基本的には毎月1回を3年間なので36回の分割をすると念頭に置いておいて下さい。
特別な事情があれば5年
支払い期間の例外として、「特別の事情」があれば5年での分割も認められます。
「特別の事情」とは3年の分割だと毎月の支払いが厳しい場合を指します。
たとえば、毎月支払える額が2万円だとして、100万円に債務が減っても36回分割をすれば毎月約2万8千円の支払いが必要です。
そのため、5年(60回)の分割であれば、毎月1万7千円程度になるので、これであれば支払えます。
このような場合には特別な事情ありとして、支払い期間を延ばしてもらうことになります。
さらに、5年の分割でも払えないような場合には、それは返済がもはやできない場合として、自己破産が相当ということになると考えましょう。
まとめ
このページでは、個人再生の期間と費用についてお伝えしました。
個人再生にかかる期間は、申立後は6ヶ月程度ですが、依頼者の協力が不可欠で、協力ないと準備期間で長期化することがあります。
費用については70~80万円程度かかりますが、分割払いなども可能なので、気になる方は一度弁護士に相談することをおすすめします。