借金を減らすために個人再生したら離婚の慰謝料は払わなくていいの?
ざっくりポイント
  • 個人再生手続きにおいても非減免債権は減額されない
  • 慰謝料は非減免債権である「再生債務者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」に該当する場合がある
  • 離婚においての慰謝料は必ずしも「再生債務者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」にあたらない可能性があるので、実際には裁判で判断を仰ぐことになる

目次

【Cross Talk】離婚における慰謝料は個人再生で減額されるかはケースバイケース?

私は離婚をして慰謝料を払っているのですが、個人再生で慰謝料ってどのような扱いになるんでしょうか?

実は「離婚の慰謝料」と一括りに言っても、どんな離婚の仕方をしたのか、慰謝料といっても中身を精査するとほぼ財産分与と評価できる、などいろいろなものがあり、減額できるかどうかはケースバイケースになります。最終的には裁判で決めることがほとんどなので、弁護士と相談しながら行ってください。

離婚をした際に決定した慰謝料が減額されるかどうかはケースバイケースで、最終的な判断は裁判ですることになる。

個人再生をする場合でも、減額することができない債権があり、そのような債権を「非減免債権」と呼んでいます。非減免債権の一つに、積極的に相手を害する意思をもって行った不法行為の損害賠償請求権があります。
そして、この一つに「慰謝料」が含まれます。離婚をするときに「慰謝料」の取決めをすることがありますが、離婚にあたっては文字通りの「慰謝料」のほかに「養育費」「財産分与」といった様々な金銭の支払いが発生します。
形式上は非減免債権に該当しそうなのですが、相手に対して害を与えたのか・そもそも慰謝料と評価されるべきなのか、という判断をすべきことになります。その判断は容易ではないので、最終的には裁判で争うことになり、裁判所が決定することになります。

個人再生手続きにおいても免責されない非減免債権とはどのようなものか

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 個人再生手続きで減額されない非減免債権というものがある
  • 非常に悪質性の強い不法行為に基づく損害賠償請求権などが該当する

そもそも個人再生において免責されない債権があるんですか?

積極的に相手を害する意思をもって行ったことを原因とする不法行為の損害賠償請求権などが非減免債権とされています。

個人再生手続きを利用すると債権が圧縮されるのですが、民事再生法229条3項は一部の債権について減額しないとする、非減免債権を規定しています。
以下その概要について見てみましょう。

不法行為の損害賠償請求権

他人の権利や法律上の保護される利益を侵害した場合には、不法行為の損害賠償請求権というものが発生します(民法709条)。
上記のように書くと難しいのですが、たとえば人を殴って怪我をさせた場合や、交通事故で人にケガをさせたような場合がこれにあたります。
ただ、民法の不法行為の損害賠償請求権に関しては、「つい、うっかり」という過失に基づくものや、「知っていて」という故意に基づくものまですべて含まれています。
個人再生で非減免債権とされているのは不法行為の損害賠償請求権の中でも、悪意で加えた不法行為(民事再生法229条3項1号)、故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為の損害賠償請求権(民事再生法229条3項2号)については非減免債権としています。
難しい言い回しですが、積極的に相手を害する意思をもって行った不法行為の損害賠償請求権については減額の対象となりません。

家族関係の債務

民法においては、民法752条の夫婦の協力・扶助の義務や民法877条等の扶養義務など、家族に関する義務を規定しており、養育費等をいいます。
このような義務についても政策的な観点から非減免債権とされています。

離婚における慰謝料はどんな扱いをうけるのか

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 離婚における慰謝料は「不法行為の損害賠償請求権」がベースである
  • 離婚の慰謝料のすべてが非減免債権になるわけではない

離婚の時に慰謝料を決めたのですが、これはどの条文に該当するのですか?

慰謝料というのは「不法行為の損害賠償請求権」に該当するものなので、民事再生法229条3項1号が基本的には該当します。ただ、慰謝料といってもその内容が本当の意味の慰謝料なのか、慰謝料に該当するとして「悪意で加えた不法行為」に該当するのかについて検討しなければなりません。

離婚における慰謝料というのは、不法行為の損害賠償請求権をベースとする

離婚に際し、慰謝料の約束をすることがあり、これは不法行為の損害賠償請求権に該当します。
もっとも、離婚に際し、慰謝料のほかに財産分与や養育費など、様々なお金に関する取り決めをします。
このお金の取決めを裁判などでした場合には、慰謝料・財産分与・養育費などの項目に従ってそれぞれ取り決めをすることが多いですが、夫婦間の話し合いで取り決めをするような場合には、それぞれを区別せず、便宜上「慰謝料」と括ってしまうようなことも珍しくありません。
そのため、名目は「慰謝料」でも実態を見ると財産分与や養育費を含んでいるケースもあります。
例えば、夫婦がそれぞれに不貞行為やDVなど行っておらず、性格の不一致で離婚をする場合には、どちらも精神的な苦痛として「慰謝料」を請求できない可能性があります。
このような場合に、住んでいるマンションを夫の単独名義にしていた、共同して使う生活費を夫名義の口座に入れていたとして、妻が夫に対し、財産分与としてある程度の金額を払うよう請求することがあります。その際、夫が妻に対し、「財産分与」という名目でなく「慰謝料」という名目で一定金額を払う場合、この「慰謝料」は法的な意味で不法行為の損害賠償請求権には該当しませんので減額される可能性が高いのです。

離婚における慰謝料が減額されるかどうかはケースバイケースである

また、不法行為の損害賠償請求権としての慰謝料と評価される場合であっても、それが「悪意で加えた不法行為」があるものと評価できる場合でなければなりません。
法律上「悪意」とは、「知っていること」を意味しますが、民事再生法229条3項1号の「悪意で加えた不法行為」とは、単純に知っていることを意味するのではなく、積極的に相手を害する意思をもって行為を行ったことを意味します。
例えば、離婚時に夫の不貞行為が発覚して慰謝料を請求できるような場合でも、「悪意で加えた不法行為」なのかどうかは、妻(や夫)を傷つける目的で不貞行為が行われたのかが重要です。
以上のように、慰謝料として評価されるもののうち、どの範囲で減額されるかは法的な確定が必要となるので、一律に判断できるものではなく、ケースバイケースで判断されることになります。
その確定をするためには、最終的には裁判手続きにおいて裁判所に判断してもらう必要があるのです。

まとめ

このページでは、離婚の慰謝料について個人再生を利用すると減額されるのかどうかについてお伝えしてきました。
個人再生手続きについて規律する民事再生法は、非減免債権というものを規定しています。
慰謝料は非減免債権に該当する可能性があるものですが、一律に判断することはできず、最終的には裁判所が判断するほかありません。
ご自身で見通しを立てることは非常に難しいため、一度弁護士に相談してみましょう。