- 強制執行とは
- 強制執行の対象となる財産・強制執行の対象とならない財産
- 強制執行を回避するためには
【Cross Talk 】財産なんて何もないけど強制執行を受けるとどうなるの?
借金返済ができなくて長期間放置していました。裁判をして強制執行をするという通知を受けたのですが、もうお金もなく、特に多額の財産はないです。このまま放置してしまおうかと思っているのですが、強制執行では何が起きますか?
給与は債権で、全額ではないものの強制執行の対象となるので、手取りが減ってしまいます!早めに債務整理をしましょう。
聞いておいて良かったです!相談に乗ってください。
借金の返済をしなければ裁判を起こされて最終的には強制執行が行われます。
強制執行とは相手の財産を強制的に取り上げる民事上の手続きで、法律で認められている正当な権利行使です。
とはいえ、個人が生活できなくなってしまうことを認めるわけではありませんので、強制執行ができる対象は一定の範囲に限られます。
このページでは強制執行がどのような手続きなのか、強制執行を避けるためにはどのようにすべきかについてお伝えいたします。
借金を払えなくなったときの強制執行とは
- 強制執行とは
- 借金を払えなくなった場合に最もされる強制執行は給与の差し押さえ
強制執行とはどのようなものですか?
法律に従って相手の財産を強制的に取り上げる手続きのことをいいます。
借金を払えなくなったときの強制執行とはどのようなものなのでしょうか?
強制執行とは
強制執行とは、権利の内容を実現するために、相手の財産を強制的に取り上げる手続きのことをいいます。
借金をしている場合は、債務者は債権者に対して契約通りに金銭を返済する義務があります(債務)。
返済をしない場合は相手に返済を請求する、返済をしないからといって、相手の自宅に入ってお金を強制的に持っていく・お金に代るものを持っていく、ということ(自力救済と呼んでいます)は認められていません。
これは、本当にそのような債務があるのかを確定させる必要があることと、債権者が返済を求めるために我先にと回収を急ぐ結果弱肉強食の状態になってしまうことから社会秩序の維持がはかれないためです。
所有権のある人に所有物を返してもらう、債権のある人が債務者に対して一定の請求を行ってもらう、これらは国が強制執行として実現することになります。
借金返済を求める場合には、相手の財産を差し押さえ、お金に換金し、返済へ充てる手続きが取られます。
強制執行には、執行の対象によって
- 動産執行
- 不動産執行
- 債権執行
と呼ばれる種類に分類されます。
強制執行の対象となる財産
強制執行の対象となるのは、動産・不動産・債権・無体財産権など、あらゆる財産権に及びます。
それぞれの例を確認しましょう。
財産権 | 例 |
---|---|
動産 | 自動車、貴金属、ブランド品、電化製品など |
不動産 | 土地、建物、マンションなど |
債権 | 預貯金、売掛金、貸付金、給与など |
無体財産権 | 特許権、商標権、著作権 |
ただし、後述する強制執行の対象とならない財産は、その対象となりません。
強制執行の対象とならない財産
強制執行の対象とならない財産としては、強制執行について定める民事執行法131条の「差押禁止動産」、152条の「差押禁止債権」で規定しています。
差押禁止動産・差押禁止債権を総称して、差押禁止財産と言います。
一 債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
二 債務者等の一月間の生活に必要な食料及び燃料
三 標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭
四 主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物
五 主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物
六 技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)
七 実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの
八 仏像、位牌はいその他礼拝又は祭祀しに直接供するため欠くことができない物
九 債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿及びこれらに類する書類
十 債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物
十一 債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具
十二 発明又は著作に係る物で、まだ公表していないもの
十三 債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物
十四 建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品
(差押禁止債権)
第百五十二条 次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。
一 債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権
二 給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権
2 退職手当及びその性質を有する給与に係る債権については、その給付の四分の三に相当する部分は、差し押さえてはならない。
3 債権者が前条第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権(金銭の支払を目的とする債権をいう。以下同じ。)を請求する場合における前二項の規定の適用については、前二項中「四分の三」とあるのは、「二分の一」とする。
差押禁止動産・債権に関しては概ね
- 生活に必要最低限必要なもの
- 仕事をするのに最低限必要なもの
- 信仰や宗教・プライバシー・教育など政策的に配慮すべきもの
などがこれにあたります。
そのため、借金をしているからといって、強制執行で家財を全て持っていかれるということはありません。
多くの場合、給与が強制執行の対象となる
借金をしている場合の多くは、給与が強制執行の対象となります。
民事執行法152条1項2号は、給与に係る債権の3/4に相当する額の差押を禁止しています。(33万円を超える部分については全額差し押さえられます)
これは裏を返すと、1/4は差し押さえが可能で、一度差し押さえをすると借金の全額返済が終わるまで毎月債権者は給与を受け取ることができます。
給与を差し押さえられると、会社に対して裁判所・債権者から通知がくるようになるので、会社にも借金返済ができず強制執行を受けていることが分かることになります。
税金滞納した場合・公正証書がある場合にはいきなり強制執行
この強制執行が行われるためには「債務名義」という、債権の存在およびその範囲を公証する書類が必要です。
そのため、貸金業者はまず裁判を起こして勝訴判決をもらい、それが確定すると手に入る確定判決という債務名義を取得することになります。
ただし、税金の滞納に関しては、国税徴収法という法律にもとづいて強制執行を行うことができます(滞納処分)。
また、借り入れをする際、執行受諾文言付きの公正証書を作成している場合は、債務名義となるので裁判なしに強制執行をすることができます。
公正証書は中小規模の貸金業者や、商工ローンを利用する際に作成させられていることがあるので、注意しましょう。
借金の滞納をしたとき、強制執行を回避するには?
- 借金を滞納したときに強制執行を回避するためには
- 借金を滞納している局面では債務整理が最も有力
会社に知られたくはないので強制執行になるのは回避したいです。
債務整理を検討してみましょう。
借金の滞納をしたとき、強制執行を回避するには、どのような方法があるのでしょうか。
貸金業者と交渉
貸金業者と交渉をして強制執行を回避することは可能なのでしょうか。
例えば、冠婚葬祭や家賃の更新料の支払いなどで、一時的に返済が難しい場合、貸金業者と話し合えば、一時的に利息のみの支払いに減額してくれるなどで乗り切れる場合があります。
しかし、借金の滞納をして長期間返済できなくなっているような場合は、交渉で解決することは難しいでしょう。
借り換え・おまとめローン
借り換えローンやおまとめローンの利用はどうでしょうか?
借り換えローンとは、金利の高い消費者金融や信販会社からの借り入れを、金利の安い銀行などから借り入れて返済することで、金利を安くして返済の負担を軽減することです。
おまとめローンとは、いくつかある借金を、金利の安い銀行などから借り入れて、金利を下げ、月額の負担を下げることです。
いずれも、より大きな額を借り入れするので、消費者金融や信販会社から借り入れをする場合よりも審査は厳格になります。
消費者金融や信販会社に対する返済すら滞っているような場合は、いわゆるブラックリストと言う状態になっている可能性が高く、借り入れをするのは困難でしょう。
債務整理
債務整理を検討しましょう。
債務整理のうち自己破産・個人再生をすれば、強制執行を停止することが可能です。
また、訴訟を起こされる前であれば、長期間滞納をしていても貸金業者は任意整理に応じますし、仮に訴訟を起こされた、確定判決を取得されたという場合でも交渉が絶対に不可能というわけではありません。
既に借金の返済を滞納している場合は、早めに債務整理の相談を弁護士にしてみてください。
まとめ
このページでは、強制執行についてお伝えしました。
債務者の財産から債権の支払いに充てることができるのが強制執行です。
ですので、借金返済の場合は、給与への強制執行が行われやすく、会社に知られる・手取りが大幅に減ることとなります。
早めに債務整理をして、強制執行されないようにしましょう。