- 名義貸しは、貸した相手が借金したまま逃げてしまえば名義を貸した自分が借金を負うことになる
- 詐欺罪の幇助に問われる可能性がある
- 名義人の自分が借金返済をする義務がある。借金返済できないような場合には債務整理を検討する
【Cross Talk】名義貸しをしたら貸した相手が借金したまま失踪した!?
友人がいわゆるブラックリスト状態で、新たな借入ができなく、でもどうしてもお金が必要とのことで頼み込まれて、私の名義で消費者金融のカードを作ってあげたんです。
そうしたら、枠一杯に借金借入をして、そのまま2回ほど借金返済したところで友人と連絡が取れなくなってしまいました。消費者金融から返済がされてない、という督促連絡が来てるんです。どうしたらいいでしょうか。
名義貸しでの借金問題ですね。貸主は名義人にお金を貸しているわけですから、残念ですが名義を貸した人にもその借金の支払い義務はあります。どうしても支払えないのであれば債務整理を検討してみてください。
いわゆる借入・借金における名義貸しとは、ブラックリストに載ってしまったり、上限いっぱいまで借り切ってしまったなどの事情で新たな借金・借入ができない友人・知人・親族などのために、代わりに自分の名義で消費者金融や銀行から借入をしてあげたりする行為を言います。
また、家計を同じくする奥さん、旦那さん、子どもの名義を借りて借金をすることも同じく「借金における名義貸し(名義借り)」にあたります。
このような場合、実質的に借りたお金を使ったのは友人や知人、家族であっても、名義人である自分が借金をしたことになっているので、自分が支払いをする義務を負います。
もし、その友人、知人や親族などが逃げてしまえば、そのまま名義人である自分に支払い義務が残りますし、場合によっては詐欺罪など刑事事件に発展しかねない場合もあります。知人に逃げられた場合など、残った借金は自分のものではない!返済したくない…!!という気持ちも分かります。
でも、そこで支払いを延滞していると、一括返済を求められたり、名義を貸した自分がいわゆるブラックリストに載ってしまいます。
残念ですが借りた名義人本人として借金を返済していくしかなく、もし借入に対する返済ができないような場合には債務整理を検討するようにしましょう。
名義貸しはとても危険
- 名義貸しの借金により、名義人の自分が債務を負うことになり、返済しなければブラックリストに載ることに
- 場合によって犯罪行為となってしまう、という危険性知る
反省はしているのですが、名義貸しにはどのような危険性があるのか、教えてもらえませんか。
名義貸しによっては自分が債務を負うことはもちろん、延滞した場合にはCICなどの個人信用情報機関に登録され、また借りた知人が詐欺罪に問われるときには、その行為を容易にした点で幇助として処罰される可能性があります。
どうしてもお金が…と名義貸しを頼まれ、他人が借入をするのに借金について名義貸しをしたような場合には、どのような法律関係になるのかを把握しておきましょう。
借りてもいない借金を負うことになる
名義貸しでの借金においては、名義を貸した人は、「知人がどうしてもというので協力してあげただけ…。」というのが本音でしょう。でも、お金を貸している消費者金融や銀行側から見れば名義を貸した人が借金・借入をしてきたことに他なりません。
消費者金融・銀行などの貸金業者から借金・借入をする場合には、貸金業者に名義を貸した自分の名前などで申込書を書き、自分の身分証明書を提出しますが、実質的な借主である友人・知人の名前はどこにも出てきません。
そのため、当然、貸金業者としては借入をした名義人(あなた)に借金の返済を求めてきます。
その時に、私は借入をした者ではない!と主張しても、貸金業者側からすれば、お金を貸した名義人以外のことや、借金をした背景事情は全く分かりません。
借金・借入の申込みを代わりに行い、身分証明書などを提供した名義人に落ち度があるので、それを信用した貸主に対しては、名義人自身がお金を借りたわけではない、との主張は当然認められません。そのため、名義人は借金の返済義務からは免れられない、ということを知りましょう。
いつの間にかブラックリストに
借金の返済をしなければ当然支払い督促がきます。
「督促は来ているけど、私は名義を貸しただけで返済義務はないから…」と支払いに応じないで延滞するとどうなるのでしょうか。
この場合、法律上支払い義務は名義人にあるので、債務が履行されていない状態になります。
貸主が貸金業者である場合には、名義人に関する信用情報を処理することになり、その結果、名義人がいわゆるブラックリストに載ることになってしまうのです。
詐欺罪など刑事事件に発展する可能性も
名義を借りた人は、消費者金融や銀行等から金銭を受け取っています。そして、本来お金を借りようとした人自身がいわゆるブラックリストに載っている場合には、貸金業者からお金を借りることは不可能です。
しかし、名義を偽って借入をして、実際、手元にお金を引き出した場合には、これは刑法の詐欺罪にあたる行為になります。この、詐欺罪にあたる行為を、名義を貸すという行為によって容易にしていることから、その行為は詐欺罪の幇助になる可能性があります。
そのため、場合によっては逮捕され、刑事裁判で有罪となってしまう場合もあります。
以上のように、名義貸しは非常に危険な行為であることを認識しておきましょう。
名義貸しが行われる具体例
- 名義貸しの具体例
- 携帯電話や銀行口座の名義貸しは特に危険
名義貸しにはどのようなものがありますか?
借金の契約をしてあげて、その口座を他人に使わせる場合が典型ですが、あわせて携帯電話や銀行口座の名義貸しには注意してください。
名義貸しの具体例について確認しましょう。
自分の名前で消費者金融の契約をおこない他人に利用させる
借金の名義貸しとして典型的なものが、自分の名前で契約を行い、そのクレジットカードを他人に利用させることです。
実際に利用しているのが他人であっても、契約名義は自分なので、名義貸しということになります。
携帯電話や銀行口座の名義貸しは犯罪行為への加担である。
名義貸しとして特に注意が必要なのが、携帯電話や銀行口座の名義貸しです。
携帯電話を自分の名義で申し込んで、誰かに送って使わせたり、銀行口座を申し込んで他人に使わせる行為です。
携帯電話に関して、料金は必ず支払うと主張して送ることを要求されますが、実際には料金を支払ってはもらえません。
またこれらの携帯電話や銀行口座は、いわゆるヤミ金融や振り込め詐欺グループなどに利用されるため、携帯電話が使えなくなる、銀行口座が凍結されるなど実生活に大きな影響を与える可能性があります。
ヤミ金融や振り込め詐欺は犯罪なので、携帯電話や銀行口座の名義貸しによって自分も幇助犯として罪に問われる可能性もあります。
絶対に行わないようにしましょう。
借金の名義貸しで返済不能等の被害を受けた時の対処法
- 名義を借りた人に借金分を支払らって(返して)もらうことだが、現実的には難しい
- 名義人が返済するしかないが、できない場合には債務整理をすることも検討する
実際に私の場合ではどのように対処すれば良いでしょうか。
名義を借りた人が特定でき、交渉できる場合にはその人に支払ってもらいますが、現実的には難しいと思いますので、自分で返済することになります。返済できない場合には借金を減額する交渉を行うなどの債務整理を検討しましょう。
では、名義貸しで名義を借りた人が払えなくなった場合の対処法について知りましょう。
相手に借金を返済してもらうか自分で返済する
まず、法律上の建前からすれば、名義を貸した方は名義を借りた人に、きちんと返済をしてもらうように請求する権利があります。
そのため、建前としては名義を貸した相手にお金を支払ってもらうというのが筋になります。
ただし、その者が支払いできなくなってしまっているような場合や、名義を借りた人がそもそも何者なのかわからない、失踪してしまっているような場合には、もちろん請求できません。このような場合には、残念だとは思うのですが、自分で借金を返済するしかありません。
弁護士に相談する
連絡は取れるが名義を借りた人が支払えないような場合に、弁護士などに依頼して名義を借りた人から回収してもらおうとする場合、弁護士費用などと取り戻したい金額が釣り合わないいわゆる「費用倒れ」になってしまう可能性があります。
借りた人が返済できないという場合には、相手の給与の一部差し押さえを行っていくことはできますが、仕事を辞めてしまったり、そもそも連絡が取れない、無職であるような場合には差押えを行うことはできません。
また名義を借りて借金した友人・知人が失踪してしまったような場合には、住民票の移動歴をたどって相手に請求をしていくことが考えられます。
しかし、この方法はそれも住民票の移動があったような場合にのみ請求できるのであって、また、仮に居場所がわかったとしても法律上の請求によって回収ができるとも限りません。
そもそも支払いができない状態だからこそ失踪をするのであって、追跡したところで回収できる見込みは低いでしょう。
一方で、名義を貸したあなたがその借金を返済できないのであれば、弁護士等に借金を減額する方法(債務整理)について相談することは有益です。借金の債務整理にもいろいろ種類があるのですが、どの手続きが現状に合っているのかは、借金の額、借入先の数など様々な事情から総合的に判断していくことになります。
債務整理の手続きの詳細については、「借金が返済できない!どうにかしたい!借金(債務)整理の手続4種類の特徴を教えて!」のページを参照してください。
名義貸しをしないための対処法
- 名義を貸してほしい事情をしっかり確認し弁護士に相談を促すなどの適切な対処をする
- どうしてもお金が必要な場合には生活福祉資金貸付制度などを受ける
名義貸しをしないための対処法を教えていただけませんか。
名義貸しを頼まれた人に事情をしっかり確認して、弁護士に相談を促すなど適切な対処をしてもらうのが良いでしょう。どうしても自身にお金が必要な事情がある場合には、生活福祉資金貸付制度の利用などを検討しましょう。
名義貸しをしないためには、まず名義を貸して欲しいという人がどのような状況か把握しましょう。
名義を貸した人が自分が借りられる額以上の借入をしようとしているのであれば、その借金は既になんとかできるものではなくなっている可能性が高いです。
そのため、名義貸しをするよりも、その人が早く債務整理をしたほうがいい状況であるといえます。
名義貸しに応じることなく、名義貸しを依頼してきた人に弁護士に相談してもらうなどの対処をするのが良いでしょう。
上述したように、名義貸しは最悪の場合犯罪として処罰の対象となるので、報酬を支払うと言われても名義貸しには応じるべきではありません。もし自分の苦しい、という場合は、生活福祉支援貸付制度などもありますので、そのような制度を利用し、名義貸しで報酬を受け取るようなことはしないようにしましょう。
まとめ
このコラムでは、名義貸しの借金によってどのような法律関係になるか、どんな危険性があるのか、といったことについてお伝えしました。
知人に名義を貸して借金したものの結局その知人が返済できないような状況が生じたときに、「自分は名義を貸しただけです」という主張を消費者金融会社や銀行などに対して言っても、その借金の返済義務からは免れられません。
名義貸しはどれだけ仲の良い知人や友人から頼まれても行ってはいけません。そして、万が一名義貸しをしてしまい借金の返済が難しいような場合は、借金減額する対応方法などを熟知している弁護士などに債務整理を相談することをおすすめします。