- 子供が勝手に借金した時には取消権がある
- 特定の場合には取消権が行使できない場合もある
- 子に債務が残る場合には支払い義務は子にあり、親にはないので子の債務整理を検討する
【Cross Talk】まさか子供が借金を?どのように対応すれば良いのか
子供が借金をしていることが発覚しまして、どのようにすればいいか…気が気ではなくて相談をしたいです。
基本的には取り消すことができるのですが、場合によっては取り消せないこともあります。
未成年者が勝手に借金をしてしまうような場合があります。
未成年者は判断能力が一般的に不十分です。この理由から民法は未成年者(現行法では18歳未満)が契約をする際に、親権者など法定代理人の許可が必要であるとしており、許可なく契約をした場合には取り消すことができるとされています。お金を借りることは金銭消費貸借契約なので、未成年者が勝手に契約をした場合でも取り消せます。
ただし、事前に法定代理人から許可をもらっていたなど、未成年者と取引をした相手方を保護するべきと判断されるような事情がある場合には取消しはできなくなることがあります。したがって、契約時の事実関係の確認をするようにしましょう。
未成年者である子供の借金は取り消すことができる
- 未成年者が親権者の同意を得ないで行った契約は民法上取り消すことができる
- 借金は金銭消費貸借契約なので、取り消すことができる可能性がある
先ほど未成年者の契約は取り消すことができる、ということだったのですが詳しく教えてもらえますか?
未成年者が親の同意を得ないでした契約の取消権について知りましょう。
未成年者が契約をした場合の法律関係についてはどうなっているのかを知りましょう。
親の同意がない借金は取消可能
契約を結んだ場合にはその契約通りに行動することが望まれるのは当然です。
ただ、この前提が成立するためには、当事者は自分のした契約がどのようなものなのかをきちんと判断できなければなりません。
未成年者は、自分のした契約の結果どのようなことになるか?という事を判断する能力が、一般的に成年者より低いといえます。
そのため、未成年者が自由に契約をできるとするのは無理がある一方で、未成年者が契約をすると効力が生じないというのは未成年者と契約をする相手に負担となる結果、未成年者と契約することがなくなってしまいます。
そのバランスを取るために、民法では、事前に法定代理人が許可を与えている場合・営業を許した場合・お小遣いの範囲でする契約(例:コンビニでお菓子を買う)である場合を除いて、法定代理人の同意を得ないでした契約は取り消すことができるとしています(民法4条~)。
取り消すことができないケースについては後述します。
また、「取消し」というのは、契約はいったん有効であり、取消権が行使されると契約時にさかのぼって契約がなかったこととなることを言います。
「法定代理人」とは民法が規定している同意や取消しを行うことができる人のことですが、第一次的には親権者ですが、親権者が死亡・親権の停止などにより不在の場合には未成年後見人が法定代理人になります。
実務的なお話しをすると、取消権は相手に意思表示をすることになりますが、証拠として残すために内容証明郵便を利用して行います。
お金を借りるというのは金銭消費貸借契約なので、この契約も取り消すことができるのです。
取り消した場合も返す必要がある場合がある
契約が取り消されるということは、契約自体が最初からなかったことになりますが、では契約がなかったのであればお金を未成年者が受け取っていることについて法的な根拠がないのだから返してもらえるのでは?と思う方もいらっしゃると思います。
その通りなのですが、民法はこの場合の取消しの場合の返還については「現に利益を受ける範囲」で返還すれば良いとされています(民法121条但し書き)。
理解が難しいかもしれませんが、例えば、浪費をしてしまって無いような場合には、現に利益を受けている金銭が無いと判断され、返還義務はないとされる一方、生活費で使ったような場合には、本来生活費にあてるはずであった金銭が残存しており、返還義務があると判断されます。
親が未成年者の子の借金を取り消せないケース
- 契約の相手方の保護を優先しなければならないケースがあり、その場合には取り消せない
取消しは制限される場合があるのですか?
はい。一般論としては契約の相手を優先して保護する=取消権を制限する場合があります。
原則として未成年者が親の同意を得ないでする契約は取り消すことができるのですが、相手方の保護を優先しなければならないケースがあり、そのような場合には契約の取り消せない場合があります。
親が同意をしている
まず一つ目は、親(法定代理人)が同意をしていると法的に評価をされる場合です。
消費者金融からお金を借りるということに簡単に同意をする親はいないと思いますが、例えば、洋服を買う際にデパートのポイントカードにクレジットカードの機能がついているものを申し込む際に同意をしているケースはよくあります。
この場合には、そのカードを使ったショッピングはもちろん、そのカードでできる借入についても同意したと考えられます。
子が親の同意を偽造していた・未成年者ではない振る舞いをしていた
親の同意を偽造したり、自分が未成年者ではないふりをしたりする事で契約をするような場合もあります。
例えば、サイン・印鑑などを偽造するような場合です。
このような行為を「詐術(さじゅつ)」と呼んでおり、未成年者が詐術を使って契約をした場合にまで取消権を認める必要はないといえるため、契約を取り消せなくなっています(民法21条)
営業の許可
未成年者でも事業者として営業を許可する際には、事前に親権者の許可が必要です。
しかし、例えば材料や商品の仕入れをする、賃貸物件の契約を行う、備品の購入を行う、それらすべてに毎回親の同意を必要とすることは現実的ではありません。
そこで営業の許可を与えるときには包括的な行為の許可を行うことになります。
営業行為としての借入については、この包括的な許可の中に入ることになり、取り消すことができません。
子の借金であっても親は返済義務を負わない
- 親子であっても債務者は子なので親が支払い義務を負うわけではない
もし契約を取り消せないという場合には親である私が支払わなければならないですよね。
いいえ、あくまでこの場合の債務者は子なので、支払う義務が法的に存在しているのは子の方です。
子が行った借金について、取り消せない場合の支払い義務は誰にあるのでしょうか。
この取り消すことができなくなった金銭消費貸借契約における債務者は、親ではなく子であるので、法的な支払い義務は子にあります。
そのため子の借金については親が支払うべき義務は、たとえ子が未成年者であっても存在しません。
ただし、借入にあたって親が連帯保証人になっているケースでは、親は連帯保証債務の支払いをしなければならなくなります。
借金を負わざるをえない場合は債務整理を検討すべき
- 通常通りの支払いが難しい場合には債務整理を検討してください。
子の借金が払うべきものである場合でも、実際そんなお金支払えない、という場合にはどうすれば良いでしょうか。
そういった場合には債務整理を検討しましょう。
子が行った借金について子が払うべき場合、あるいは連帯保証人になるなどして自分が負うことになった場合には支払い義務が発生するのですが、中には支払える金額ではない場合もあります。
そのような場合には、債務整理を検討しましょう。
債務整理の具体的な手続きである任意整理や個人再生を利用すれば返済内容が楽になりますし、自己破産を利用すれば返済しなくてよくなります。
まとめ
このページでは未成年者が借金をした場合についてお伝えしました。
未成年者の契約の取消権についてお伝えしましたが、細かいこともたくさんありますので、詳しい状況をきちんと整理して返済義務のあるなしを確定させなければなりません。
返済をしなければならないのかどうか、支払えない場合の債務整理が必要な場合など、弁護士に相談して上手に解決するようにしてください。