- 認知症になると金銭管理を行えない・債務整理などの手続きが必要である
- 成年後見制度を利用する
- 成年後見人が債務整理などの手続きを弁護士に依頼する
【Cross Talk 】認知症の母が借金をしているのはどうすれば良いでしょう
認知症の母について相談があります。昔に作っていた消費者金融のカードを利用して借金をしているようなのです。どう対応すべきでしょうか。
このまま放置してしまうと借金や必要のない消費をする可能性があります。成年後見の申立てを行って、借金については債務整理を行います。また、不要な訪問販売などで被害にあっているような場合では取消権などを行使できる場合もあります。
手続きについて詳しく教えてください。
認知症になった人が借金をする場合があります。もともと借金があったものの返済している最中に認知症になる場合や、認知症になってから借金をする場合などがありますが、いずれの場合にも適切な対応をしなければなりません。家族が認知症になってしまった場合の借金への対応について検討しましょう。
認知症になったときの借金に関する問題点
- 認知症になったときの借金に関する問題
- 金銭を適切に管理できず借金や債務を増やす可能性があり債務整理などをするには成年後見人の選任が必要
認知症になったときの借金に関する問題としてはどのようなものが挙げられますか?
認知症になると金銭の管理ができなくなり、不必要な借金を重ねることあります。また、借金をしてしまったり、高額なローンを組んでしまった場合に、債務整理や契約の取消しをするのに成年後見人から手続きをする必要があります。
認知症になったときの借金に関する問題には次のようなものがあります。
借金返済が正しくできない
まず借金返済を正しくできないことがあります。
借金をしている自体を正確に認識していなかったり、返済日に返済しなければならないということがわからなくなっているようなこともあります。
その結果、遅延損害金が発生したり、督促の電話や通知を受けることになりパニックになる、返済を長期間できずに貸金業者から訴訟を起こされるなどの可能性があります。
必要のない借金を増やしてしまう
必要のない借金を増やしてしまうことがあります。
お金が必要ではないのに持っている消費者金融のカードで借金をしてしまう、クレジットカードを使って必要ではない買い物を重ねてしまう、ということもあります。
債務整理をするためには成年後見制度を利用する必要がある
借金や立替金の返済ができなくなっているような場合には、債務整理をする必要があります。
しかし、認知症が進行しており、契約の内容すらも理解することができない場合には、契約が無効であるとされることがあります(民法3条の2)。
そのため債務整理を依頼するために、成年後見制度を利用して、成年後見人を選任してもらい、成年後見人から弁護士を依頼して債務整理をする必要が発生します。
成年後見制度を利用して認知症の人の債務整理などを行う
- 債務整理などを行うには成年後見制度の利用をする
- 成年後見制度の手続きの概要
既に母は認知症が進んでいます。債務整理をするにはどのような手続きをすれば良いのでしょうか。
成年後見制度を利用します。成年後見人を選任して、後見人が本人に代理して弁護士に依頼して債務整理を行います。
認知症の人が債務整理をするには、成年後見制度の利用をします。
家庭裁判所に申立てを行う
成年後見制度を利用して、成年後見人を選任してもらい、成年後見人が代理人として手続きを行うことになります。
成年後見制度を利用するためには、家庭裁判所に申立てを行います。
家庭裁判所で審理を行い、本人が契約などの是非弁別が判断できないような状態になっている場合には、成年後見開始の審判がされ、成年後見人が選任されます(民法7条、民法843条)。
以後は、日用品の購入以外の契約については、成年後見人が取り消しをすることができ(民法9条)、必要な契約について成年後見人が代理人として行うことになります。
なお、成年後見人の選任には、少なくとも2ヶ月程度はかかるので、早目に手続きに着手することが必要です。
成年後見の申立てに必要な書類
成年後見の申立ては申立書と添付書類を添付したうえで行います。
提出すべき書類としては、
- 申立書一式
- 後見開始申立書
- 申立事情説明書
- 親族関係図
- 財産目録
- 収支状況報告書
- 後見人等候補者事情説明書
- 親族の同意書
- 本人に関する資料(財産目録に記載した事項についての資料)
- 戸籍謄本(本人・後見人の候補者)
- 住民票(本人・後見人の候補者)
- 後見登記されていないことの証明書
- 成年後見用の診断書・診断書附票
などが必要です。
成年後見人が債務整理などの手続きを弁護士に依頼する
成年後見人に就任すると、代理人として成年被後見人(本人)の債務整理手続きなどを弁護士に依頼することができます。
また、通常のクーリングオフは8日・20日などの短い期間制限が規定されていますが、例えば一人暮らしの高齢者がテレビを10セットも購入するような、過量契約にあたるような場合(特定商取引法9条の2第1項・2項)や、エステや語学教育のような長期間にわたる取引(特定継続的役務提供)にあたるようなケースでは、申込の撤回や解除ができる場合があります。
また、判断力の低下の不当な利用による取引については、消費者契約法による取り消しが認められています(消費者契約法4条3項5号)。
なお、成年後見人は、債務整理などの手続きが完了した後も、本人のために財産管理などを継続する必要があります。
まとめ
このページでは、認知症になってしまって借金などの債務を負っているケースの対応方法についてお伝えしました。
既に借り入れをしている借金の返済が適切にできない、借金やショッピングを必要もないのに繰り返してしまうような危険があります。このような危険に対処するためには、成年後見人を選任することを検討しなければなりません。
債務や手続きについてわからないことがある場合には、まずは弁護士に相談するようにしましょう。