任意整理の流れについてしっかり学んで不安を無くしましょう
ざっくりポイント
  • 任意整理では、依頼者は依頼をしたら支払いを止めて、支払い再開まで弁護士にお任せ
  • 弁護士は債務全体を把握した上で債権者との交渉をする
  • きちんと返済さえしていれば難しくない手続

目次

【Cross Talk】任意整理の心配は手続の流れを知れば軽くなります。

借金の返済が苦しく、任意整理をしたいのですが、任意整理はどのような流れで進むのでしょうか。

実際は弁護士に任せて月々の支払条件変更のお知らせを待つだけです。それまでの間、弁護士・司法書士がどんな事をしているのか知って安心してください。

詳しく教えてください!

任意整理の流れはどのように進むのでしょうか。

1.法律相談、2.債務の調査・弁護士費用の支払い、3.交渉・和解締結、4.支払い開始・完了という流れで進みます。

任意整理ってどんな手続?

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 任意整理は債務整理の一つの手段
  • 裁判所を利用する自己破産・個人再生と違って任意整理は債権者と個別に交渉をする

任意整理ってどんな手続なんですか?

債権者と返済条件について話し合って、返済の負担を減らす手続です。

任意整理とは、債務整理手段の一つの方法で、裁判所の手続をとらず、直接債権者と交渉して借金を減額させる方法のことを言います。

借金返済に困ったときに経済的な立直りを目指して法的な手段を行う債務整理の方法の1つです。
他の債務整理には、借金を免除してもらう自己破産、借金を減額してもらい返済していく個人再生というものがあります。
自己破産・個人再生は裁判所に申立てをして行うのですが、任意整理は個々の債権者と弁護士が話し合う手続であるという点で違いがあります。

債権者と話し合う内容は次のような点です。

  • 元金がいくらなのか
  • 未払いの利息・遅延損害金がいくらなのか
  • これから何パーセントの利息で払うか
  • これから何回で支払うか
  • これから月々いくらで支払うか

複数の債権者がいる場合には、弁護士は依頼者が月にいくらまでなら支払えるのか?ということを確認したうえで、すべての債権者に支払いができるように調整をします。

任意整理の基本的な流れを知る

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 任意整理は①法律相談②債務の調査・弁護士費用の支払い③交渉・和解締結④支払い開始・完了という流れですすむ。

任意整理はどのように進みますか?

一つのケースをご紹介しますと、弁護士に依頼してから、報酬を分割で支払ってもらっている間に、弁護士側で債務の詳しい調査を行います。分割での報酬支払いと債務の調査が終わった時点で、債権者との交渉を始めます。交渉が終わり、条件が整った時点で書類を取り交わし、あとは返済を随時していくことになります。


では実際に任意整理がどのように進むのかを見てみましょう。

法律相談を行う

任意整理はいきなり弁護士に申し込みをするわけではなく、まずは弁護士に法律相談をするところから始めます。
任意整理は借金の返済を前提とする手続ですので、返済ができない場合には任意整理を利用することができません。
債務と収支のバランスなどを考えて、任意整理が難しいと判断された場合には利用ができないのです。

弁護士は、これらの事情を踏まえて法律相談を行い、任意整理を利用できることを事前に確認をします。
法律相談をし、依頼者に納得してもらえれば、契約を締結します。

任意整理を依頼するのに必要な書類は?

任意整理を依頼するには次のような書類が必要です。

・本人確認書類と印鑑
弁護士と委任契約を締結するためには、本人確認書類と印鑑は必ず必要となります。
本人確認書類としては、運転免許証、運転経歴証明書、保険証、パスポートなどが挙げられます。
マイナンバーカードが利用できるかは、事前に各事務所に問い合わせをしておきましょう。
印鑑は認印でも大丈夫ですが、いわゆるシャチハタなどのスタンプ印の利用はできないと考えておきましょう。

それ以外は必ず必要というわけではありませんが、以下のようなものがあれば参考になるので、持っていくようにしましょう。

・クレジットカードやキャッシュカード
借入や返済を目的としてATMを利用するためのクレジットカード・キャッシュカードは、手元にあるのであれば持参しましょう。
万が一の場合ですが、債務整理を依頼して、相手に債務整理が依頼された旨の通知が行く前にカードの利用をしてしまうようなことがあると、後に問題となる場合があります。
そのため、法律事務所で依頼をした際に、ハサミを入れて使えないようにした上で、債権者に債務整理を開始した旨の通知を送付することもあります。

・金銭消費貸借契約書

貸金業者に申し込みをする際に必ず発行されます。
契約条件について確認が容易になるので、持参しましょう。
もっとも、契約書を持っていないという方も多いので、手元に無ければ持参は不要です。

・取引明細
返済や借入をすると、利用に関する明細が発行されます。
もし手元にあれば、念のため持参をしましょう。

契約後から交渉開始まで

契約後から債権者との交渉が開始するまで、依頼者と弁護士がどのようなことをするか確認しましょう。

・依頼者側
まず依頼者は、貸金業者との関係で返済をストップします。
返済をしなければ、督促を受けたり、裁判をされたりするのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、弁護士が依頼を受けると、貸金業者は、本人に対して正当な理由がない限り督促をすることができないとされています(貸金業法21条9号)。
また、依頼者は、依頼後、一括での支払いが難しければ、弁護士費用を分割で毎月支払うことになります。
弁護士費用の支払いが滞ると、任意整理の交渉に進みませんので、滞りなく支払いをしましょう。
どうしても支払いが遅れるときには弁護士に事前に連絡をしておきましょう。
連絡もなく、弁護士側からの督促の連絡にも応じないような場合、弁護士は辞任をしてしまうことになり、再度貸金業者から督促を受けることになりますので、注意しましょう。

・弁護士側
一方で弁護士は、案件を引き受けると貸金業者に「受任通知」というものを発送します。
これは「私たちが依頼を引き受けました」という内容で、債権者がこれを受け取ると、上述のように正当な理由なく本人に電話や書面で督促できなくなります。

この受任通知には併せて「今までの取引の履歴を出してください」という内容も記載されており、これに応じて貸金業者も取引履歴を出すことになっています。
取引履歴にはいつ借入をして、いつ返済をしたかという内容が記載されています。
弁護士は、これを基に、「引き直し計算」という正確な債務がいくらであるかの調査を行って、借金の元金がいくらか、未払利息・遅延損害金がいくらかの計算をします。

債権者と交渉を行う

成功報酬以外の弁護士費用の支払いと債務の調査が終わると、貸金業者との交渉を開始します。
交渉は、通常、弁護士側から貸金業者に条件に関する希望の書面を送付し、これに対して貸金業者の担当者が電話などで条件を細かく設定する、という方法で行われます。

和解をして返済が始まる

条件に双方の異論がなければ、和解書という書類を作成して弁護士が受け取ります。
この和解書を依頼者に送付して、和解書に書かれている金額を依頼者自身が入金する方法、弁護士事務所に振込みをして弁護士事務所で入金をする方法(弁済代行といいます。)のいずれかで返済を行います。

和解が整うと弁護士に対する成功報酬・解決報酬金の支払いもありますので、一括での支払いが難しければ、返済と同時に分割払いで支払っていくことになります。
すべての返済が終わると任意整理は終了です!

任意整理をスムーズに終わらせるために

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 任意整理依頼後に弁護士費用の支払いを滞納しない
  • 任意整理依頼後にできなくなることを知っておく
  • 任意整理後に返済を途切れさせない

任意整理をスムーズに終わらせるためには何か注意点はあるのでしょうか。

依頼後に弁護士費用の滞納をしないこと、任意整理後に返済を延滞しないことなどがあります。


任意整理を利用して完済までスムーズに終わらせるためにはどのような注意が必要でしょうか。

依頼後に弁護士費用を滞納しない

まず、依頼後に弁護士費用を滞納しないことが重要です。
法律事務所に依頼をする際には、着手金は一括で支払うことになっているケースが多いです。
しかし、債務整理に関しては、これを一括で支払うことが難しいのが通常なので、多くの事務所は分割での支払いで対応することにしています。
任意整理の依頼後には、弁護士は債務の調査を始めますが、正式な交渉を行うのは弁護士費用の着手金の分割支払いが終わってからになることが多いです。

つまり、分割の弁護士費用の滞納があると、その分交渉が遅れます。
弁護士に依頼をすると、上述したように債権者は依頼者に請求をすることができなくなります。
しかし、長期間任意整理ができないまま放置されている状態になると、債権者は訴訟を起こすことができます。
最悪のケースでは、そのまま給与が差し押さえられてしまう可能性もあります。
また、弁護士は、長期間費用の支払いがなかったり、依頼者と連絡がとれなくなっていたりすると、辞任せざるを得なくなりますので、その場合には債権者は一斉に督促を始めます。
弁護士費用の滞納をしないこと、仮に滞納する場合でも最小限におさめ、弁護士との連絡を絶やさないことが重要です。

任意整理後にできなくなることを知っておく

任意整理は返済の負担が少なくなりますが、メリットばかりではありません。
任意整理などの債務整理をすると、いわゆる「ブラックリスト」という状態になり、新たな借入・クレジットカードを作ることなどができません。

生活面での影響というと、クレジットカードが使えなくなるのですが、例えば家族のだれかが発行した家族カードを利用したり、デビットカードを利用したりすることはできます。
また、大きな借入でいうと、家族で進学する子どもがいるような場合に、奨学金の保証人になれません。
さらに、貸金業者から新たな借入れをすることができなくなります。
生活をきちんと見直して、任意整理の手続が終わるまで返済を継続できる体制を作り、万が一のときには助けてもらえる人に事前に相談をしておくことが望ましいといえます。

任意整理後の滞納に注意する

任意整理後、貸金業者との交渉をまとめた後に滞納はしないようにしましょう。
貸金業者との交渉の中では、返済が遅れた場合の措置についても取決めがされます。
細かい文言によって差があるのですが、2回分以上の滞納をすると、貸金業者は一括請求ができるようになるのが一般的です。
毎月1万円の支払いを貸金業者に行うのであれば、2万円分以上の滞納を行うと、残額の一括請求が可能となってしまいます。

一括請求される状態になると、再度弁護士に依頼して債務整理をやり直す必要があります。
ギリギリの生活をしていると、冠婚葬祭や家賃の更新といった出費が重なる場合に返済できなくなる可能性もありますので、きちんと貯蓄をして、延滞しないように注意をしましょう。

まとめ

このページでは、任意整理の流れ、任意整理とはどのようなものかと併せてお伝えしました。
依頼者側としては、依頼した後、和解までは基本的に弁護士費用を支払って、和解後はきっちり支払いをする、という点が重要であることを忘れないようにしましょう。