- 任意整理をしても結婚ができなくなったり離婚しなければならなくなったりするわけではない
- 任意整理したことの影響は基本的に本人にのみ
- 本人が新たに借入ができない、保証人になれないことの間接的な影響を受ける可能性はある
【Cross Talk 】任意整理すると結婚できなくなる?
彼女との間で「そろそろ結婚を」という話が出ているのですが、私には借金があってこのまま返済していくのは難しいと思っています。任意整理をしたいのですが、任意整理をすると何か結婚に影響が出ますか?
任意整理をしても結婚ができなくなるわけではありません。また、任意整理したことの影響は、基本的にご本人だけに及びますので、配偶者となる方に返済の責任が生じるといったことはありません。
これは自己破産など他の債務整理でも同様です。
結婚はできるんですね。安心しました。
借金の返済の負担を軽減する方策として、任意整理をはじめとする債務整理を行うことが考えられます。
ただし、交際相手との結婚を考えている、あるいはすでに結婚しているという方の中には、任意整理等をすることで結婚に影響が出ないか、任意整理をすると離婚しなければならなくなるのではないかといった不安を抱いている方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、任意整理と結婚との関係について詳しく解説いたします。
任意整理をすると結婚できないわけではない
- 任意整理をしても結婚はできる
- 任意整理の影響は本人にだけ発生するが、本人がローンを組めないことで配偶者も影響を受ける可能性がある
任意整理をしても結婚には関係ないのですか?
任意整理をしても結婚はできます。任意整理をしたことの影響は基本的に本人にだけ発生するので、配偶者になる方には何の責任も生じません。ただ、任意整理をした方は一定期間ローンを組めなくなるので、家や車を買うことができないといった、事実上の影響を受ける可能性は否定できません。
任意整理とは
任意整理は債務整理の一種で、自己破産や個人再生と異なり、裁判所の手続をとらずに直接債権者と交渉して借金を減額させる方法をいいます。
裁判所を介さないため簡易迅速に手続きを進めることができ、基本的に財産を手放す必要がないなどのメリットがある反面、借金の減免の効果は自己破産や個人再生と比べるとそれほど大きくありません。
そのため、比較的借金の額が少ない方や、家など残したい財産がある方に利用されるケースが多いと言えるでしょう。
任意整理をすると結婚できなくなるという法律はない
任意整理をしたことで結婚ができなくなるという法律はありません。
結婚するかどうかは、あくまで当事者の意思にゆだねられているのです。
任意整理をすることで結婚後に影響すること
任意整理をしたことによる影響は、基本的に任意整理をした本人にのみ発生します。
結婚をしたからと言って、配偶者となった方まで任意整理で定められた債務を返済する義務を負うことにはならないのです。
ただし、結婚生活に全く影響がないとは言い切れません。
任意整理をしたことで、本人はいわゆるブラックリストに載ってしまいます(信用情報機関に事故情報が登録されます)。
そうなると、本人は一定期間、新たに借入をしたり、クレジットカードを作ったり、保証人になったりすることができなくなります。
そのため、例えば本人名義では一定期間住宅ローンや車のローンを組むことができなくなります。
配偶者に十分な収入や資産があれば、配偶者名義で住宅ローンや車のローンを組むことは可能ですが、そうでない場合には配偶者名義でローンを組むこともできません。
そのため、本人名義でも配偶者名義でも家や車を持つことができないということになってしまいます。
このように、任意整理をしたことが結婚後の生活に事実上の影響を及ぼす可能性は否定できません。
他の債務整理方法でも結婚できなくなるということはない
ここまで解説した、任意整理をしても結婚ができなくなることはない、任意整理の影響は基本的に本人にだけ発生するが、配偶者も本人がブラックリストに載ることの影響を間接的に受ける可能性がある、ということは、自己破産や個人再生といった他の債務整理にもそのまま当てはまります。
結婚している人が任意整理をするとどうなるか
- 任意整理をしたことで離婚しなければならなくなるわけではない
- ローンを組めないことなどで結婚生活に影響が出る点は結婚前に任意整理をする場合と同じ
結婚前に任意整理をするとどうなるかはわかりましたが、結婚後に任意整理をするとどうなるのですか?離婚しないといけないんでしょうか?
基本的には結婚前に任意整理をする場合と同じように考えていただいて結構です。任意整理をしたからといって離婚しなければならなくなるわけではありません。任意整理をした本人はブラックリストに載ってしまいますが、配偶者には影響しません。ただ、任意整理をした本人名義で住宅ローンや車のローンを組むことができなくなるなど、結婚生活において事実上の影響を受ける可能性はあります。
任意整理をしたからといって離婚をしなければならないとする法律はない
任意整理をしたからといって離婚しなければならない(離婚を強制される)という法律はありません。
一方、日本の民法では、当事者間で離婚の合意ができればどのような理由によっても離婚することができます。
したがって、当事者間で合意ができれば、任意整理をしたことで離婚することも可能です。
他方、当事者間で離婚の合意ができない場合、民法が定める離婚事由(法定離婚事由。例えば不貞行為など)があれば、裁判によって離婚することができます。
任意整理をしただけでは法定離婚事由には該当しないと考えられるので、当事者間で離婚の合意ができない場合に、裁判によって離婚を強制されることはないのです。
このように、離婚するかどうかは離婚の合意ができるか、言い換えれば当事者の意思次第ということになります。
任意整理で発生する影響は基本的には本人のみに発生する
結婚している人が任意整理をした場合であっても、任意整理による影響は、基本的に本人のみに発生します。
いわゆるブラックリストに載るのも本人だけです。配偶者の信用情報には影響がないので、配偶者は借入をしたりクレジットカードを作ったりすることができます。
任意整理をすることで結婚生活に及ぼす影響
もっとも、上述した結婚前に任意整理をした場合と同様、任意整理をしたことで結婚生活に事実上の影響を及ぼす可能性はあります(配偶者の収入や資産が少ない場合には配偶者名義でローンが組めず、家や車を買うことができないなど)。
まとめ
任意整理と結婚との関係について解説しました。
任意整理をすることで結婚が制限されたり、離婚を強制されたりすることはなく、結婚や離婚はあくまで当事者の意思次第です。
ただし、任意整理をすると一定期間ローンが組めなくなるなど、結婚生活において事実上の影響を受ける可能性があることに注意しましょう。
さらに詳しく知りたい方は、一度弁護士にご相談することをおすすめします。