任意整理をする時に一括返済をすると借金が減額できることがある。
ざっくりポイント
  • 任意整理は通常元金の支払い以下の減額を認めていない
  • 一括で返済ができる場合には元金の減額を認めてもらえることがある

目次

【Cross Talk】債務を一括で支払ってしまうので減額できないでしょうか

任意整理をするのですが、親族が借金を一括で払ってくれます。一括で払えるので多少債務を減額してもらう…というような交渉はできないでしょうか。

場合によってはできることもあるので、ぜひご相談ください。

一括返済をする場合には借金を減額できることがある

任意整理は債権者との交渉を行って支払いを軽くしてもらえるものなのですが、その場合でも借金の元金の減額を認めてくれるようなことは実務上ありません。しかし元金を一括返済できる状況なのであれば、場合によっては減額をしてくれることもあります。

通常の任意整理はどのように行われるか

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 任意整理は債権者と交渉をするということになっているが実務上の処理はほぼ決まっている
  • 元金の減額は通常の任意整理では行われない

任意整理は交渉をするんですよね?なんとか元金を減額してもらえないのでしょうか?

度重なる交渉を消費者金融と重ねてきた結果、標準的な任意整理では遅延損害金や将来の利息をなくしてもらう一方で、元金の減額はできないのが現状です。

任意整理とは「裁判所の手続をとらず、直接債権者と交渉して借金の返済の負担を軽くさせる方法」をいいます。

交渉では、次のような事項について取り扱います。

  • 元金の額
  • 未払い利息の額
  • 遅延損害金の額
  • 支払をする金額の総額
  • 和解以後の利息の取り扱い
  • 支払開始日
  • 毎月の支払い日
  • 遅れた場合の措置

交渉にあたっては「東京三会基準」という、東京の3つの弁護士会が作った基準に則って和解案の呈示がされます。
東京三会基準では、将来の利息をつけない・遅延損害金をつけない、といったことが謳われているので、最低限元金での和解交渉をすることになります。

現在の実務では、貸金業者もおおむねこれに協力するようになっているので、任意整理の交渉における金額の面で言うと、元金のみの分割払いにしてもらい将来利息・遅延損害金については請求しない、少なくとも将来利息だけは請求しないことにしてもらう、というのが任意整理の標準的な内容になっています。

ですので、貸金業者が応じてくれれば元金までの減額はしてもらえるのですが、元金も減額しての支払いにしてください、というものになると貸金業者は原則として応じません。

一括返済で元金を減額してもらえるか

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 基本的には任意整理をする場合でも元金は払うことになる
  • ただし、一部の業者が元金の減額を認めている場合もある

一括で払えるのなら減額してもらえないのでしょうか。

貸金業者としては一括で支払えるような状況なのであれば、契約なのだから利息も遅延損害金も支払ってほしい…と考えるのが通常です。ですので、任意整理をすれば譲れる額の元金までは譲っても、それ以上を譲るようなところは原則ありません。ただ、一部貸金業者が減額に応じる場合があります。

任意整理で元金を減額してもらうために、たとえば親族や友人に用立ててもらって一括返済ができるような場合には、元金を減額することはできるのでしょうか。

結論から言うと、原則はダメですが、一部の貸金業者の中には減額に応じるところもあるようです。
任意整理は契約通りの借金返済が困難になった場合に返済を軽くする手続きです。

一括返済ができるのであれば、契約通りに支払うのが筋なので、減額する理由はないのではないか?という考え方もできます。
一方で、任意整理は長期で36回(3年)~長い場合には60回(5年)での返済をする手続きで、全額返済しきれないような場合も出てきます。

そのような場合には貸金業者としてはまた督促をしなければならなくなるのですが、この督促もタダではなく、そのために人を雇わなければならないのでコストがかかります。
そのため、元金を減額してでも早く一括で返して欲しいという考え方もありえます。

現在は、元金以上は譲らないという貸金業者がほとんどですが、中には一括返済ができるのであれば元金の減額に応じる会社もあるという状況です。

一括返済をする場合の注意点

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 債権者平等原則に反しない行動をする必要がある
  • 弁護士に依頼して行う場合でないと交渉はまとまらない

実際に任意整理をしてもらって一括弁済をしてしまおうと思っていますが注意点はありますか?

法律の世界では債権者は平等に扱わなければならないという原則があるので、債権者の中の一部のみに一括返済するというのは許されない場合があるということと、債務整理をはじめとした任意整理は弁護士に依頼しないと難しい点が多いので注意が必要です。

任意整理を利用して借金を一括で返済する場合にはどのような注意点があるのでしょうか。

債権者平等原則に反しないこと

法律の世界では、ある人に対して債権者が複数居る場合には、その債権者は平等に取り扱わなければならないとする原則があり、そのことを債権者平等原則といいます。
たとえば、債権者が3社あった場合に、A社とB社には一括返済をするけれども、C社には分割で支払っていく、というようなことをするのは、この債権者平等原則に違反することになります。

任意整理だけで債務整理を終えることが確実に見込まれる場合、直ちに法的な問題が生じる可能性は低いですが、一括返済をする業者以外の業者との分割払いの交渉が難航するおそれがあります。
また、自己破産や個人再生へ移行する可能性がある場合、これらの手続との関係では偏頗弁済とみなされ、法的に問題となる可能性があるため、特に注意が必要です。詳しくは偏頗弁済について解説している記事をご参照ください。

そのため、一括返済をする場合には、すべての債権者との関係で、一括して返済をするか、個々の債務額に応じた平等な割合で債務の一部をそれぞれ一括して返済するようにしなければならないのが原則です。

弁護士を通した依頼をする

一括返済の前提となる任意整理については、弁護士に依頼するのが良いでしょう。
これは、任意整理をするためには、元本額を確定する作業などを行わなければならないのですが、そのための調査をするには取引履歴を取り寄せて「引き直し計算」という作業を行います。

引き直し計算自体はインターネットでエクセルをダウンロードして行うことが可能なのですが、取引履歴の取り寄せには通常2週間~2か月程度の期間を要するものになります。
弁護士に依頼しなければその2か月間については返済を継続しなければなりません。

また、交渉自体も自分で行わなければならないのですが、一般人ではどのような交渉を行えば、有利に借金減額をしてもらえるのかが分からないため、貸金業者が優位に交渉を進めることになるのが通常です。
確かに弁護士に依頼をすると費用がかかるのですが、返済をストップして督促を受けなくしてくれる、債務の正確な計算や交渉を任せてしまうことができる、交渉も優位に進めてくれることができるなどメリットのほうが大きいといえます。

まとめ

このページでは債務を一括して返済できる場合の任意整理についてお伝えしてきました。
一括返済ができる場合でも基本的には元金の支払いはしなければならないのですが、例外的にその元金を減額してくれることもありますので、まずは弁護士に相談をしてみましょう。