- まずは借り入れの理由や金額など詳しい事情を確認する。
- 借金を立て替えたり、連帯保証人になったりすることはトラブルの原因になる。
- 返済が難しければ債務整理の手続を検討する。
【Cross Talk】恋人に借金があることが分かったら、どうすれば良いのでしょうか?
結婚を考えていた恋人から、借金があると告白されました。頭が真っ白になり、何をするべきかわかりません。
それは大変ですね。貸金業法が改正されたことにより多重債務者は減少していると言われていますが、依然として借金に苦しんでいる方はたくさんいるのが実情です。
私はどうすれば良いのでしょうか?
恋愛についてのアドバイスは難しいですが、借金については私たち弁護士が専門家として相談に乗ることができます。
恋人に借金があることが判明したときはまず事情の確認を行いましょう。借金の額がそこまで多額でなかったり、返済の目処が立っていたりするのであればそこまで大きな問題にはなりません。
恋人が気の毒だからといって安易に借金を肩代わりしたり、連帯保証人になったりすることはトラブルに繋がりやすいので十分に注意が必要です。
借金の返済が困難になったときには債務整理の手段を検討しましょう。債務整理には任意整理、個人再生、自己破産、特定調停といった手続があり、それぞれメリットとデメリットがあります。
恋人(彼氏・彼女)に借金が発覚したら、まずしなければいけないこと
- 借金をするのには様々な理由があるので、まずは落ち着いてなぜ借金をすることになったのか確認する。
- 重要なのは返済の見込みがあるかどうか。多重債務の場合は要注意。
恋人に借金があることが分かり、ショックでどうすればいいか分かりません。借金をするような恋人とは別れた方が良いのでしょうか。
弁護士には借金に関するご相談が多く寄せられます。収入が低く生活費に困ったという場合や、事業資金を補填するために借り入れをしたという場合など、事情は様々です。まずは事情を聞いてみてはいかがでしょうか。
そうはいっても、具体的にどのようなことを聞けばいいのですか?
理由を聞く
最初に確認すべきことは、恋人が借金をすることになった理由です。
借金をすることは必ずしも悪いことではありません。人が借金をするのには「親が負った借金を相続した」、「病気の家族の治療費や入院費が必要だった」、「進学するために入学金が必要だった」など様々な事情があります。事業を経営している方であれば、事業の立ち上げや継続のために個人の名義で借り入れをしなければならないのはよくあることです。
「借金なんてとんでもない!」と突っぱねるのではなく、まずは落ち着いて理由を確認するようにしましょう。
借金をするに至った理由は、今後どのように借金を解消するかという問題にも関わります。例えば浪費やギャンブルを理由に借金を重ねたような場合、「免責不許可事由」に該当して自己破産が認められない可能性があります。
金額を聞く
言うまでもありませんが、借金の総額がいくらかは重要な問題です。
数十万円の借金であれば、仕事をしながら少しずつ返済して完済したり、家族や親戚に肩代わりしてもらったりすることが可能かもしれません。
しかし、数百万円、あるいは1,000万円以上ということになれば、そもそも返済できるかどうかが問題となることが多いでしょう。返済が困難であれば自己破産などの裁判所を通じた手続による債務整理を視野に入れることになります。
借入先を聞く
どこからいくらずつ借金をしているかも確認しましょう。
借入先として一番多いのは、やはり銀行や消費者金融などの金融機関です。テレビCMを出しているような大手の金融機関であれば出資法により定められた金利(上限金利は貸付額に応じて15%~20%)の範囲内で貸付けが行われている可能性が高いですが、金利は業者によって異なります。
問題となりやすいのは、ある金融機関に返済するために別の金融機関から借り入れを行っているような場合です。このような状態を「多重債務」といいます。多重債務の状態に陥ると借金が雪だるま式に膨らんでいくことになります。
個人から借り入れをしている場合には、相手との人間関係が問題となります。借入先が家族や親戚であれば返済の猶予や減額の交渉もしやすいですが、友人や昔の恋人から借り入れをしている場合には人間的なトラブルに発展する可能性が高くなります。
出資法に違反してお金を貸している闇金業者であればヤミ金融対策法により金銭消費貸借契約は無効となり、返済の義務はありません。もっとも、そのような業者は反社会的勢力との繋がりがあったり、執拗な嫌がらせをしてきたりする可能性がありますので注意が必要です。
返済の見通しを聞く
同じ300万円の借金でも、年収300万円の人と1,000万円の人では重みが全く異なります。今後借金をどうやって返済していくつもりなのか確認することはとても重要です。
多額の借金を抱えていたとしても、自己が所有している不動産が担保になっているような場合もあります。この場合は借金が返せなくなると不動産が取り上げられてしまいますが、自己破産は避けられる可能性が高いでしょう。
恋人(彼氏・彼女)に借金が発覚した際に、やってはいけないこと
- 恋人の借金を立て替えるのは危険。
- 連帯保証人になると、借金を全額肩代わりしなければいけなくなることも。
恋人に借金をすることになった事情を聞いたら、過去に家族が病気で入院して入院費用や治療費用で300万円を借りることになったそうです。
幸い私は預貯金が300万円ほどあるので、とりあえず立て替えてあげようと思っているのですが、いかがでしょうか。
借金の立て替えはトラブルになりやすいので、基本的にするべきではありません。あなたが恋人の借金を立て替えると、あなたが恋人にお金を貸しているのと同じ状態になりますが、恋人がそのお金を必ず支払ってくれるとは限りません。
たしかに、恋愛関係にお金の問題を持ち込みたくはありません…。立て替えはやめておこうと思います。そのほかにやってはいけないことはあるのでしょうか。
借金の立て替え
大切な恋人が借金を抱えていることを知ったとき、「自分が代わりに返済してあげたい」という思いがよぎるかもしれません。しかし、借金の立て替えには十分に慎重になるべきです。
あなたが借金を立て替えると、法律上、あなたに「求償権」という権利が発生します。つまり、恋人が金融機関に対して抱えている300万円の借金をあなたが代わりに支払ったとすると、今度はあなたが恋人に対して300万円を支払うように請求する権利が発生するのです。しかし、たとえ法的手段をとったとしてもあなたが立て替えた300万円を確実に回収できるという保証はありません。恋人が自己破産してしまえば恋人に対するあなたの権利は消滅します。
よほどお金に余裕があって「貸したお金が返ってこなくても構わない」と思っているのでなければ、借金の立て替えをすべきではありません。あなた自身が借金をして立て替えるなどというのはなおさらやめましょう。
恋人の連帯保証人になること
連帯保証人とは、お金を借りた本人が返済できなくなったときに代わりに返済する義務を負う人をいいます。本人の支払い能力とは関係なく返済の義務を負うのが連帯保証人の特徴です。
もし恋人が自己破産したり音信不通になったりしたときには、連帯保証人であるあなたが借金を全て支払わなければならなくなります。連帯保証人が本人に代わって借金を返済すると立て替えたときと同様に求償権が発生しますが、全額を回収できるという保証はどこにもありません。
つまり、「連帯保証人になる」ということは「いつ借金を肩代わりするということになってもおかしくない」ということを意味します。
今のままでは借金返済できないと感じたらするべき方法
- 債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産、特定調停がある。
- どの手続を選ぶべきか、借り入れの総額や返済可能額などによって異なる。
- 迷ったときには法律の専門家である弁護士に相談する。
恋人と相談した結果、債務整理の手続を検討することにしました。インターネットで調べて任意整理や自己破産といった手続があることはわかったのですが、メリットやデメリットがよくわかりません。
どの手続を選ぶべきなのでしょうか。
安定した収入があり、一定の額を返済していくことができるのであれば任意整理や個人再生といった手続きがおすすめです。借り入れの額が多いときや収入がなく返済の目処が立たない場合などには、自己破産を検討しましょう。
債務整理にはどのような手続があり、どの方法を選ぶべきなのか教えていただけますでしょうか。
任意整理
任意整理とは、裁判所の手続をとらず、直接債権者と交渉して借金を減額や分割払いとしてもらう方法のことです。将来分の利息をカットしてもらい、借金の元本分を3年から5年の分割で支払う内容での合意を目指します。
借金の額を大幅に減らすことは通常できませんので、借金の額が大きすぎるときや、返済可能額が少ないときには利用することができません。
個人再生
個人再生とは、大幅に減額された借金を原則として3年の分割で返済していく裁判所を通じた手続です。自己破産と異なり、住宅ローンを支払い中でもマイホームを残せるというメリットがあるため、安定した収入があるサラリーマンなどが利用しやすい手続です。
自己破産
自己破産とは、借金を帳消しにしてもらうことができる裁判所を通じた手続です。借金から完全に開放され、新しい人生を歩むことができますが、不動産など高額の財産は没収されてしまいます。
特定調停
特定調停とは、簡易裁判所が債務者と債権者の間に入り、返済額や返済方法について合意することを目指す裁判手続です。簡易裁判所によって基準に多少ばらつきがありますが、任意整理と同様に元本分を分割して返済していく内容の和解をすることが通常です。任意整理と似ていますが、裁判所が債権者との間に入って仲裁してくれるのが特徴です。
弁護士に相談
債務整理をするためには、債権者と交渉を行ったり、法律の規定にのっとって申立書を作成し、各種資料を集めて裁判所に提出したりする必要があります。このような手続を代理で行ってくれるのが法律の専門家である弁護士です。
弁護士に債務整理を委任することにより、債権者からの直接の取り立ては全てストップし、法律事務所が窓口となって対応してくれるメリットもあります。
「債務整理にいくつかの方法があるのはわかったが、どの手続を選ぶべきか分からない」という方もいらっしゃると思います。弁護士に借金の総額や月々の返済可能額を伝えれば、どの債務整理の方法が考えられ、どのようなメリットとデメリットがあるのかアドバイスを受けることができます。
債務整理を検討する際には弁護士に相談することをおすすめいたします。
恋人(彼氏・彼女)が債務整理する場合の注意点とは?
- 恋人が債務整理をする場合の注意点
- 恋人が数年間ブラックリストとなることには注意
恋人が債務整理をする場合の注意点にはどのようなものがありますか?
債務整理をすると、債務整理をしてから数年はブラックリストという状態になることに注意しましょう。
恋人が債務整理をする場合の注意点にはどのようなものがあるのでしょうか。
債務整理後は数年間ブラックリスト入り
債務整理後は数年間、いわゆるブラックリストという状態になります。
ブラックリストというのは、信用情報に債務整理をした情報(事故情報)が登録されており、新たな借り入れ・クレジットカードの作成・スマートフォンの分割での購入などが難しくなります。
一緒に住むとき、賃貸をする際に、保証会社を使って賃貸することができない場合があったり、保証人になってもらうことができないことに注意しましょう。
なお、恋人がブラックリストになったからといって、自分までブラックリストになるわけではありません。
また、結婚をした後も相手がブラックリストであることで、自分の信用情報に影響するわけではありません。
家計の管理や自身の収入書類を提出する場合も
破産や個人再生など、裁判所を使った手続きを行う場合には、債務整理をする人の家計や財産の資料を提出する必要があります。
恋人と同居している場合、このような家計、財産の資料の一つとして、自分の収入や家計の資料の提出を求められる可能性があります。
資料の提出が必要か、提出するとしてどのような資料なのか、恋人からよく話を聞いたり、一緒に弁護士に相談に行ったりするなどして、確認すると良いでしょう。
自身の財産が管財人による管理の対象になる可能性も
自己破産をする場合には、破産者の財産は債権者に配当するために、破産管財人の管理の対象となることがあります。
恋人が破産する場合、恋人と一緒に購入したものや、恋人の家に置いてある財産が、資産として取り扱われてしまうと、管理処分の対象になる可能性があります。
自分のものはきちんと管理をしておくようにしましょう。
まとめ
恋人が借金をしていることが発覚すると、少なからずショックを受けることでしょう。しかし、人が借金をするのには様々な事情があります。まずは落ち着いて借り入れの経緯や総額、返済の見込みなどを確認するようにしましょう。もし返済が困難になったとしても、債権者との交渉や裁判手続によって借金を整理する方法はあります。どの方法をとるべきか迷ったときには弁護士に相談するようにしましょう。