- 借金で首が回らないから即破産ということにはならない
- 債務整理の方法は、自己破産以外にもいくつかの方法がある
- 隠れた債権を行使することで破産を回避することができる場合がある
【Cross Talk】借金で首が回らない場合はどうすればいいの
先生、借金で毎月の返済が苦しくて、もう、どうすれば良いのかわかりません。破産するほかないのでしょうか。
そんなことはございません。破産手続は債務整理の方法の一つですが、必ずしも相談者さんに当てはまるとは限りません。
例えば、破産手続では、一定額以上の財産を処分する必要がありますが、一定の収入が見込まれるのであれば、個人再生手続も選択肢として挙げられ、住宅ローン特則を用いて、持ち家を手放すことなく、債務整理が可能な場合があります。
この他にも、一見して返済不能と思われる場合であっても、借入先がヤミ金融業者であったり、不適切な株取引や先物取引を持ち掛けた会社などである場合には、逆にそれらの者から損害賠償額を取り返すことによって、破産そのものをしなくても良いといった場合があります。
悩まずにお近くの弁護士に相談されると良いでしょう。
大変に心強いお言葉です!詳しく相談に乗っていただいてもよろしいでしょうか。
借金が返済できず、お悩みといった状況はございますか。借金をどうにかしたいと考えた場合、主として任意整理、自己破産、個人再生の3つの手続きがあります。
また、「過払い金」で借金が減ることもあります(過払い金請求債権は取引終了から10年間で時効消滅します)。この記事では、どうにかしたい、借金問題について、その整理の手続きについてご説明いたします。
借金返済ができない原因は?
- 借金返済ができない原因の一つは収入が減った・無くなったような場合
- 収入があまり増えていないのに支出が増えるような場合にも借金返済に手が回らなくなる
- 借金を急に相続した場合にも返済できないことがある
必死に頑張って返済してきていたのですがどうして返済できなくなってしまったのか…。一般的に借金が返済できなくなる原因ってどんなものがあるのでしょうか。
収入が減る・支出が増えるなどそれぞれの原因を見てみましょうか。
借金返済ができないのはあなただけではありません。
借金が返済できなくなる原因を確認しましょう。
収入が減った・無くなった
まず、収入が減った・無くなったような場合に返済のための資金をやりくりできず、借金返済ができなくなることがあります。
病気や怪我で仕事ができなくなってしまったような場合に、収入が無くなったり減ってしまうことが考えられます。
また病気や怪我をしていなくても、会社が倒産したり、会社の業績が悪化してリストラ・残業代カットなどがあると、収入が無くなったり下がったりします。
夫婦共働きで家計をやりくりしていたときに、妻が妊娠をして仕事ができなくなってしまい、世帯収入が下がってしまった結果、返済のための資金がやりくりできなくなることもあります。
支出が増えた
次に支出が増えてしまったような場合です。
上述のように、妻が妊娠して子どもができたような場合、子どもにかかる負担が増えることになります。
子どもが小学生から中学生・高校生と学年があがることによって、教育費負担も増えます。
また、キャンブル・浪費などで借金をしてしまった場合には、その返済のための支出を増やすことにもなりかねません。
借金を相続した
少し特殊な例としては、借金を相続してしまったような場合が挙げられます。
故人に浪費癖があるような場合に、消費者金融などから多額の借金をしていて、その借金を相続することがあります。
また、故人が個人事業主であったような場合には、商売で発生した多額の債務の支払いを抱えていることもあります。
住宅ローンを抱えている場合には、通常は団信(団体信用生命保険)によって債務はなくなるのですが、なんらかの事情で団信を利用できていないような場合には家と一緒に借金を相続することとなる場合があります。
どんな特徴を持った人が借金返済できなくなるか
借金返済ができなくなる人の特徴としては、
・非正規雇用でギリギリの生活をしている
・借金をしている状況で楽観的すぎる
・諦めが悪い
自分がこのような状態であると認識したときには、早晩債務整理が必要になると考えておいてください。
借金返済ができなくなるとどうなる?
- 借金返済ができなくなるとどうなるか
- 遅延損害金などの契約面・督促を受けたり訴訟を起こされるなどの手続き面での変化を確認
借金返済ができなくなるとどうなるのでしょうか?
遅延損害金が発生することになったり、督促を受けることになる、訴訟を起こされるなどがありますので、契約面・手続き面でどのようなことが起きるか見てみましょう。
借金返済ができなくなるとどうなるのか確認しましょう。
遅延損害金が発生する
まず、契約内容として、返済日に借金返済ができないと、以後は遅延損害金が発生します。
遅れれば遅れるほど借金が増すことになります。
電話・書面による督促を受ける
返済がなければ電話・書面による督促を受けることになります。
数日遅れるようなことはよくあるので、電話での督促にとどまりますが、返済できなくなる期間が長くなればなるほど、書面の内容も硬い言葉での通知になることになります。
ブラックリストとなる
61日以上の延滞すると、信用情報に延滞した旨が登録され、以後は信用情報で審査を行うと、審査落ちすることになります。
このような状態のことを一般的にブラックリストやブラックリストになる、などの呼び方をしています。
借金やクレジットカードを作る・更新する、携帯電話を分割で購入するような場合も審査が通らないことになるので注意が必要です。
期限の利益を失う
延滞によって期限の利益を失うことになります。
期限の利益とは、契約で定められた金額以上の返済を求められても、これを拒否できるという利益です。
例えば30万円の借金をしていて、毎月1万円の返済の契約になっている場合に、1万円の支払いをすれば、残り29万円の返済を求められたとしても拒否できます。
返済ができなくなると、期限の利益を失うことになり、返済期が過ぎたもののみならず、借金全額についての取り立てをすることができます。
これは、全額の請求を求めて裁判をするのに不可欠なものです。
代位弁済・債権譲渡などがされる
延滞が続くと代位弁済や債権譲渡などがおこなわれます。
銀行などから借り入れをしている場合、借り入れに保証会社による保証がつけられています。
保証会社が銀行に対して代位弁済をすることで、保証会社は求償権という権利をもとに本人に請求ができます。
これは、取り立てに特化した会社に債権を移すために行われます。
同様に債権譲渡が行われたり、債権回収株式会社や弁護士に取り立ての依頼をすることがあります。
裁判を起こされ差し押さえを受ける
返済ができない場合には、最終的に裁判を起こされ差し押さえを受けます。
借金の返済ができなくなって、差し押さえるようなものはないと思っている方も多いと思うのですが、給与は1/4ですが毎月差し押さえをすることができ、全額返済されるまで差し押さえ続けることが可能となっています。
給与が差し押さえられると、勤務先から債権者に支払われることになり、手取りが大きく減るので、さらに生活が苦しくなることになります。
借金返済ができない場合にやってはいけないNG行動
- 借金返済ができなくなったときのNG行動 ショッピング枠現金化などよく見るものも実はNG行動
借金返済ができなくなったときでも、これはやってはいけないよということはありますか?
はい、夜逃げなんかは全く意味がないどころか、そもそも生活できなくなりますし、わりとよくある手法と見られているショッピング枠現金化は実は契約違反であるばかりか自己破産する際に免責不許可事由となるものなので、注意が必要です。
借金返済ができなくなったときにNGといえる行為には次のようなものがあります。
別の会社から借り入れをして返済する
貸金業者から借り入れをしていて、返済ができなくなると、別の会社から借り入れをして返済をすることがあります。
別の会社から借り入れをして返済をすると、その借入についても返済する必要があり、1社が2社、2社が3社とどんどん借り入れを増やすことになります。
額の問題だけではなく、1ヶ月のうちに複数回の返済日を迎えることになるので、返済日を迎えるたびに金策に走ることになり、精神的な疲労も大きいといえます。
そのため、他社から借り入れをしないと返済することはNG行為で、この時点から早目に手をうつ必要があるといえます。
ヤミ金融から借り入れをする
貸金業法は総量規制といって、貸付ができる限度額を定めています。
また、延滞をするとブラックリストとなって、借り入れができなくなります。
借り入れの限度額を迎えた場合や、ブラックリストとなった場合には、正規の貸金業者からの借り入れができなくなります。
このような場合に、「ブラックOK」などという触れ込みで近づいてきて、貸付をするのがヤミ金融です。
ヤミ金融は、代表的なものでいうと10日に1割の利息を払う「トイチ」と呼ばれる、利息制限法・出資法を超える法外な利息を請求し、返済できなくなると親族や職場などへの脅迫的で執拗な取り立てを行ないます。
また、自己破産をする際に、ヤミ金融から借り入れした場合には、免責不許可事由とされており、手続きが簡易で費用が安く済む同時廃止による免責をしてもらえなくなります。
そのため、ヤミ金融から借り入れをするのもNG行為です。
夜逃げをする
借金について「夜逃げをする」ということを思いつく人がいます。
確かに借金は債権として一定期間請求がされずに放置されると、時効にかかります。
しかし、住民票を移転するとその記録が残り、新しい住所地を見つけることができるので、通常夜逃げは住民票を移さずに行なう必要があります。
そのため、あたらしい拠点で仕事を探そうにも住民票を提出することができず仕事を探すのもままならない、また従来の住所地での住民登録を抹消され、保険証を作れず病院での治療が受けられないなど、生活に支障をきたすことになります。
また、夜逃げをして住所地が不明である人に対しては、裁判所の掲示板に張り出すことで訴状を届けたことにできる、公示送達という制度があります。
本人が不在でも裁判ができ、裁判ができると時効の更新という制度によって時効が完成しないので、夜逃げをして時効で借金から逃げ切ることは、事実上難しいのです。
そのため、夜逃げは意味のないNG行動といえます。
ショッピング枠現金化
ショッピング枠現金化は注意が必要なNG行為です。
ショッピング枠現金化とは、クレジットカードのショッピング枠を利用して、例えば無価値なものを高値で購入し、キャッシュバックを受けるなどの行為をいいます。
インターネットや看板などでよく見るショッピング枠現金化ですが、実はクレジットカードの会員規約に違反する行為で、クレジットカードの利用ができなくなる可能性があるとともに、自己破産をする際に免責不許可事由に該当するので、同時廃止が利用できなくなる可能性があります。
借金返済ができない場合の対応方法
- 借金返済ができない場合の対応方法
- 債務整理を中心に検討
借金返済ができない場合にはどう対応すればいいでしょうか?
いくつか方法は挙げられますが、基本的には債務整理をすることをおすすめします。
借金返済ができない場合の対応方法として、次のようなものを検討しましょう。
親族や友人から借り入れをして一括返済
まず、親族や友人から借り入れができるのであれば、借り入れをして一括返済をして、親族・友人に借りた分を返済しましょう。
貸金業者からの借金は、返済期日までに利息をつけて返済する必要があり、例えば冠婚葬祭で期日に支払えない場合には遅延損害金の支払いをする必要があります。
しかし、親族や友人から借りて貸金業者に対して支払えば、無利息になり、賃金業者への利息を支払う必要がなくなります。
親族や友人へはお願いすれば毎月の支払いを待ってもらえることが多いので、借金返済がかなり楽になります。
借り換え・おまとめローン
利息の負担を軽減する可能性があるものとして、借り換え・おまとめローンが挙げられます。
借り換えローンとは、消費者金融や信販会社などの利率の高い借り入れ先に対して、銀行のような利率の低いところから借り入れをして、利率の高い借り入れ先に返済をして、利息の負担を軽減するものです。
おまとめローンとは、複数の借入先からの借り入れを、利率の低い銀行から借り入れをして返済してしまって、利息や毎月の支払額の軽減をするものです。
借り換え・おまとめローンに関しては、銀行の審査も非常に厳しく、返済がままならなくなってからではまず審査に通らないので、利用するならば早目に利用する必要があります。
債務整理
以上のような方法をとるのが難しい場合には、債務整理を利用しましょう。
債務整理には主に任意整理・自己破産・個人再生がありますので、詳細は後述します。
その他の法律的な手段
以上の3つの方法以外に、例えば借金を相続したような場合には相続放棄が、相当長期間経過しているような場合には時効援用などの方法もあります。
これらの方法が利用できないかも弁護士に相談してみましょう。
借金返済ができない場合の主な債務整理の3つの種類
- 債務整理には3つの種類がある
- いずれの方法にもメリット・デメリットがあることから、債務整理を検討するにあたっては弁護士に相談するべきである
「債務整理」という言葉を、最近耳にしますが、具体的にはどのようなものなのでしょうか。
債務整理とは、一般的には、借金(債務)を返済もしくはなくすための手続き全般を言います。一般的には、その内容として、任意整理、自己破産、個人再生と3つの種類があります。
大きく分けますと、裁判外で手続きを行うのが任意整理。裁判所が関与する手続きが自己破産、個人再生です。以下、それぞれについて、簡単にご説明します。
【任意整理】債権者と直接交渉する方法
任意整理は、冒頭でも説明した通り、自己破産、個人再生などの裁判上での法的整理とは異なり、債権者と直接交渉する方法を言います。3年程度の期間を目途に借金の返済を計画します。
取引が継続している債権者が、消費者金融などである場合には、過払い金請求権が発生している場合があり、この場合には、取引記録を開示してもらい、過払い金を除いた残りの負債額を計算し、返済計画を立てます。
しかし、近年は、過払い金により負債が大幅に減少する事例が減少しています。また、長期の分割払いに同意しない金融事業者もいます。
このようなことから、任意整理の場合は、必ずしも借金の総額や月々の返済額が大きく減ることを期待できません。任意整理は、借入金額が比較的少ない場合や、ある程度の資力がある場合などに選択できる方法です。検討する場合は、弁護士に相談すると良いでしょう。
借金返済ができない場合のその他の対応策
- 主な3つ以外の対応方法
ところで「主な」という言い方をされているのは、他にも方法があるのですか
特殊な状況で利用可能な債務整理方法を確認しましょう。
債務整理は上記3つの方法が主な方法ですが、その他にも借金返済ができない場合の対応方法があるので確認しましょう。
【特定調停】裁判所で調停委員を介して交渉する方法
特定調停は、原則的には弁護士が介入せず、個人が債務整理を行うことを想定している手続きであり、一般に低廉な費用で債務整理を実現できる手続きです。
デメリットとしては、あくまでも話し合いですので、相手が応じなければ交渉はまとまらないことが挙げられます。3年以内の分割払いが原則とされているため、毎月の返済の負担を大きく減少させることを必ずしも期待できない場合もあります。調停が成立したにも関わらず、債務者が調停での合意内容をまもらない場合には、強制執行を受ける可能性があります。
【相続放棄・限定承認】相続した借金の支払いができない場合には
借金を相続してしまうため、返済ができなくなってしまうような場合には相続放棄・限定承認を検討しましょう。
相続放棄は、最初から相続人ではなかったと扱われることにより被相続人の財産を一切相続しない手続きであり、借金も相続しないことになります。
限定承認は、相続財産のうちプラスの財産の範囲でのみ借金も相続をするという手続きです。
相続放棄・限定承認については「あなたが背負う必要はありません!多額の借金を相続しても債務整理はできる!」で詳しくお伝えしていますので、借金を相続してお悩みならばこちらを参照してください。
【過払い金請求】過去に払いすぎた利息を取り返して借金返済に充てる
過去に利息制限法を超える利息で借り入れをしていた方については、利息制限法を超えて支払っていた部分について貸金業者から返還してもらえる可能性があります。
このようなお金のことを過払い金といいます。
貸金業者から返還してもらったこれらの金銭で、残った借金の返済にあてる方法も検討すべきです。
過払い金請求については「過払い金請求が出来なくなる?お金を取り返す方法を解説!」で解説していますので参照してください。
【時効援用】既に時効になっている貸金業者からの督促に対応
借金は、最後の返済から5年以上(一部の場合には10年)経過している場合には、時効により消滅したと主張することが可能です。
時効については期間が経過しているだけで足りず、時効の利益を行使する旨の主張(援用)を相手にする必要があります。
実務上は時効の援用は内容証明郵便を送ることによって行い、これにより督促をされなくなることが多いので、利用することを検討しましょう。
時効援用については「借金の消滅時効とは?期間と時効の援用について紹介」で詳しく解説していますので参考にしてください。
【任意売却】住宅ローンの返済ができない場合の不動産売却方法
住宅ローンの返済が滞っていて、任意整理や個人再生をしても住宅ローンの返済に目処がつかないことがあります。
この場合には住宅ローン債権者が住宅に設定している抵当権の実行がされて競売される場合があるのですが、競売ではなく、住宅ローン債権者と話し合いながら住宅を売却する任意売却という方法があります。同じ住宅を失うにしても、引っ越し代を負担してくれる可能性があるなど、新生活をより良い条件でスタートすることが可能となります。
また場合によっては、不動産投資家に買い取ってもらって、その投資家と賃貸借契約を結ぶことで、所有権は失いつつもそのまま住み続けることができるリースバックという方法をとることも可能です。
任意売却は住宅ローン債権者との交渉が不可欠となるため、任意売却専門の不動産会社が取り扱っています。
弁護士に債務整理の相談をして、必要に応じて紹介してもらうのが良いでしょう。
借金返済できない場合には結局どの手続きがいいの?
一般論として、この手段が一番といった方法はありません。なぜなら、その人ごとに事情はことなり、同じ借金の総額であっても、収入が少なく財産もないような場合には、自己破産が適切ですし、収入が多い方や処分されては困る財産がある方の場合には、任意整理や個人再生が適切なこともあります。
また、住宅ローンが残っているご自宅を残されるか否かで、自己破産か、個人再生どちらをおすすめするか異なってきます。
このように、その方のご収入や財産状況、ご希望等によって、「最善の選択」は異なることから、債務整理を考える場合には、法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ
いかがでしたか。
債務整理の方法は様々な選択肢があるので、借金で首が回らず、どうして良いか不明な場合には、一度弁護士に相談することをおすすめします。