- 基本的に合意のうえでの性交渉で妊娠・中絶では慰謝料請求は難しい
- 他に権利侵害があるときには慰謝料請求が認められる場合も
- 慰謝料を請求したい場合、まずは弁護士にご相談を
【Cross Talk 】中絶で慰謝料は請求できる?
交際相手の子どもを妊娠しましたが、経済的な事情で中絶することになりました。慰謝料は請求できますか?
双方が合意のうえでの性交渉による妊娠・中絶では一般的に慰謝料の請求は困難です。しかし、他に権利侵害があれば認められる事例もあります。
何らかの事情で中絶することになった場合、相手から慰謝料をもらえるのでしょうか?基本的に性交渉に双方が合意していた場合では難しいですが、状況によっては他の理由で慰謝料がもらえる可能性があります。任意の話し合いで相手が慰謝料を支払うこともあります。
本記事では、中絶での慰謝料請求について、認められた事例や慰謝料請求の手順・流れを解説していきます。
中絶による慰謝料請求が認められる場合とは
- 双方の同意での性交渉による妊娠・中絶は、慰謝料請求が難しい
- 状況によっては慰謝料請求が認められた判決もある
交際相手の子どもを中絶することになりました。相手が「避妊する」と言っていましたが、避妊具を付けていなかったのですが慰謝料は請求できますか?
避妊すると嘘をついた結果、妊娠・中絶に至ったことが民法709条の不法行為に該当し、慰謝料請求が認められる可能性があります。
人工妊娠中絶数は20代前半で多い傾向にある
厚生労働省の調査によると人工妊娠中絶数はコロナ禍で減少傾向にあります。
ただし年齢別で見ると20歳~24歳は2018年の累計が39,455人、2019年は39,733人、2020年は36,573人と減少幅が低くなっています。
年齢階級別では20~24歳が最も多い結果となりました。
20代前半はまだ学生の男女もいますので、妊娠しても経済的な理由で子どもを産むことが難しいという現状があります。
何らかの事情で望まない妊娠をして中絶をする場合、女性は心身共にダメージを負い中絶費用もかかります。
中絶で慰謝料を請求することはできるのでしょうか?
双方の同意での性交渉による妊娠では、一般的に慰謝料請求が難しいと言われています。
慰謝料は民法709条の「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」という「不法行為」に基づいて請求します。
双方が同意した性交渉は権利侵害にあたらないため、慰謝料の請求が難しい傾向にあります。
慰謝料が認められた事例も
中絶による慰謝料が認められる事例としては、強姦された、中絶を強要された、妊娠中に婚約破棄された場合などが想定されます。
また「避妊する」と言っておきながら避妊しなかったなど性交渉において権利侵害があったときに慰謝料が認められる可能性があります。
東京地方裁判所の2009(平成21)年5月27日の判決によると、女性が妊娠したにも関わらず男性が話し合いに応じず中絶することになった結果、中絶に伴う治療費・中絶による精神的な損害についての慰謝料・裁判における弁護士費用の2分の1が認められました。
よって双方の合意のうえで性交渉から妊娠に至った事例でも、状況によっては慰謝料が認められることがあります。
調停や裁判ではなく、任意の話し合いで相手が支払いに応じる可能性もあります。
中絶による慰謝料の相場は50~300万円程度と言われていますが、強姦や中絶強要の脅迫などがあった場合は金額が多くなることがあります。
中絶費用・慰謝料請求の流れ
- まずは男女トラブルに詳しい弁護士に相談することが重要
- 話し合いで双方が合意に至らないときには調停・訴訟に発展する
中絶することになり、気持ちが動揺しています。まずは何をすべきでしょうか?
弁護士に相談しましょう。第三者に話すだけでも気持ちが落ち着くことがあります。今後の対処法も教えてもらえます。
弁護士にご相談を
まずは男女トラブルの実績が豊富な弁護士に相談しましょう。
実績がある弁護士は法律的なアドバイスだけではなく、慰謝料が認められるか、請求できる慰謝料の相場、訴訟で勝てる可能性はどの位かなどを過去の類似事件も考慮し教えてくれるでしょう。
妊娠・中絶で気持ちが動揺するかもしれませんが、第三者に話を聞いてもらうことで気持ちが落ち着くこともあります。
内容証明郵便の送付、話し合い
内容証明郵便は郵便を出した日や内容、相手が受け取った日時が分かる郵送サービスです。
慰謝料請求をする際には、一般的に弁護士を通して内容証明郵便で相手に慰謝料を請求する理由、相手の行動が不法行為に該当することなどを記します。「何を書いていいのか分からない」という方もいらっしゃるかもしれませんが、内容は弁護士と相談して決定します。
相手が話し合いに応じる場合には話し合いの場を設けます。ボイスレコーダーなど録音できる機械で会話を録音し、弁護士(代理人)と相手または自身と弁護士と相手3人で話し合います。顔を合わせたくないという場合には弁護士に代理人として交渉を依頼できます。
相手に暴力を振るわれた、暴言を吐かれたなどの被害があったときには代理を依頼する方が多いです。
調停・裁判
慰謝料請求の調停もしくは裁判の手続きを行います。
調停はあくまで話し合いの場であり、最終的には双方が合意に至ることを目的として調停委員・裁判官が事情を聴いたり、助言をするなどして解決を目指します。
民事訴訟は個人の間の法的な紛争に関して、裁判官が当事者双方の言い分を聞く、証拠を調べるなどの過程を経て、判決を下し解決を図ります。
調停と訴訟のどちらが良いかは状況によりますので、弁護士と相談しながら検討しましょう。
まとめ
合意のうえで性交渉をした結果での妊娠・中絶に対する慰謝料請求は、任意の話し合いで相手が応じたときや他の権利侵害があった場合となります。
まずは男女問題に詳しい弁護士に相談し、対処法や解決方法を一緒に探していきましょう。