不貞行為を行ったと慰謝料請求をされた場合にどうすれば良い?
ざっくりポイント
  • 不貞行為とは
  • 不貞行為に基づく慰謝料請求に対応する方法
  • 不貞行為に基づく慰謝料請求をされた場合にやってはいけないこと

目次

【Cross Talk 】不貞行為を行ったと慰謝料を請求されているのですがどうすれば良いのでしょうか。

突然不貞行為を行った慰謝料の請求をされています。とある男性と交際をしていたのですが、私は知らなかったのですが既婚者だったようです。慰謝料の支払いをしなければならないのでしょうか。

いいえ、慰謝料を支払う必要はありません。独身であると偽っていたときちんと主張して、慰謝料請求を拒みましょう。

詳しく教えてください!

不貞行為を行ったと慰謝料請求された場合、どのように対応する?どんな対応がNG?

不貞行為を行った場合、夫婦の他方の当事者は精神的苦痛を受けます。この精神的苦痛に対する不法行為に基づく損害賠償として慰謝料の支払いがされます。不貞行為は二人で行うものなので、不貞行為の相手方も慰謝料を支払う必要がある場合もあります。しかし冒頭の相談者の例のように既婚者と知らないような場合など、慰謝料請求をしなくても良い場合もあります。

不貞行為(浮気・不倫)とは

知っておきたい離婚のポイント
  • 不貞行為とは
  • 不貞行為によってどうして慰謝料請求ができるのか

そもそも不貞行為によって慰謝料を請求できる法律上の根拠は何でしょう?

民法の不法行為に基づく損害賠償請求権(民法709条)として認められます。

不貞行為によってどうして慰謝料を請求できるのでしょうか。

不貞行為とは

不貞行為とは、婚姻をしている方が、配偶者以外の方と肉体関係・性的関係を持つことをいいます。
民法770条1項1号に離婚原因として規定されており、離婚をしなくても慰謝料請求の基礎となる行為です。

不貞行為があるとなぜ慰謝料請求できるのか

不貞行為があるとなぜ慰謝料請求ができるのでしょうか。
精神的苦痛を受けた人は、故意・過失によってその行為を行った人に対して、損害賠償請求をすることができる旨が規定されています(民法709条・民法710条)。
不貞行為によって、その配偶者は精神的苦痛を受けるので、本条に基いて慰謝料請求が可能となります。

民法
七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(財産以外の損害の賠償)
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

不貞行為でも慰謝料を支払う必要がない場合

知っておきたい離婚のポイント
  • 不貞行為とされる場合でも慰謝料を支払う必要がない場合

慰謝料を支払う必要がない場合にはどのようなものがありますか?

いくつか典型的な例があるので見てみましょう。

不貞行為であっても慰謝料を支払う必要がない場合について確認しましょう。

肉体関係がないにも関わらず請求されている場合

例えば、仕事の打ち合わせをカフェ等で行っただけにもかかわらず、不貞行為であると慰謝料の請求をされるような場合です。
肉体関係がなければそもそも不貞行為でもないので、慰謝料を支払う必要もありません。
ただし、肉体関係がなくても、デートを重ねるなどで、夫婦関係を破綻させているような場合には、精神的苦痛があるといえるので、慰謝料請求ができる可能性があります。

自分の意思ではなく不貞行為となった場合

肉体関係を持った場合でも、自分の意思ではなく性行為を強要された場合には、相手に精神的苦痛を与える「故意・過失」がないといえます。
そのため、不貞行為と主張されても慰謝料を支払う必要がありません。

そもそも結婚していると知らなかった

そもそも結婚していると知らなかった場合には、不貞行為で損害を与える故意がありません。
また、配偶者が巧みに嘘をついて、独身であるように装っていたような場合には、過失もないといえます。
そのため、慰謝料請求ができません。
ただ、配偶者が常に結婚指輪をしている、同じ職場で結婚していることは周知の事実、などで、結婚していると知らなかったことに対して過失があるような場合では、慰謝料を支払う可能性もあるので注意が必要です。

既に夫婦関係が破綻していた

不貞行為をした場合でも、既に夫婦関係が破綻していたような場合には、慰謝料を支払う必要がありません。
既に夫婦関係が破綻してしまっている場合、不貞行為によって夫婦関係が破綻したわけではないので、慰謝料を支払わせる必要がないからです。

時効期間を経過している

慰謝料請求権の時効期間を経過した場合も慰謝料を支払う必要はありません。
慰謝料の基礎となる不法行為損害賠償請求権は、加害者と被害を知ったときから3年・行為のときから20年で時効にかかる旨が規定されています(民法724条)。

主張している慰謝料請求が多すぎる場合の反論方法

知っておきたい離婚のポイント
  • 慰謝料請求が多すぎる場合の反論方法

今回請求されている慰謝料は1,000万円とかなり高額なのですが、多すぎる気がします。

相手が主張している慰謝料が多すぎる場合の反論方法を確認しましょう。

相手が主張している慰謝料の額が多すぎる場合に、どのような反論をすべきでしょうか。

慰謝料の相場を調べて高額であると主張する

まず慰謝料の相場を調べて、相場よりも高額すぎると反論しましょう。
不貞行為に基づく慰謝料請求の相場は50万円~400万円程度で、不貞行為の期間・妊娠をさせたかどうか・夫婦に子どもがいるか・どちらから不貞行為を持ちかけたか、などの事情によって増減します。
ご自身の状況ではいくらくらいになるのかの相場を調べて、主張している額が多すぎるかどうか調べましょう。

自分に過失が少ないことを主張する

既婚者であると知らなかったような場合には、自分に過失が少ないことを主張しましょう。
結婚していることを知らなかった場合には、その過失の割合に応じて慰謝料の額が増減します。
自分には過失がない・少ないということを主張しましょう。
出会った経緯や・交際中の言動・SNSでのやりとりなどから、相手が独身であると信じるのもやむを得ない事情を裏付けながら主張します。

相手に証拠がないことを主張する

相手に証拠がないことを主張します。
相手が事実関係に基いて慰謝料を請求している場合でも、それを裏付ける証拠がなければ、最終的には裁判でも取り上げてもらえません。
そのため、相手に不貞行為の事実を裏付ける証拠の提出を求めて、証拠がない事実については減額を主張しましょう。

求償権を主張する

不貞行為は男女共同で行う、共同不法行為です。
そのため、不貞行為に基づく損害賠償請求をされた場合、当事者双方が全額の支払いを求めることができます(民法719条1項)。

(共同不法行為者の責任)
第七百十九条 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。

この場合、全額支払った方は、他方に対して、負担部分を請求することができます。
この権利のことを「求償権」と呼んでいます(民法420条)。
例えば、不貞行為に基づく精神的苦痛に対する慰謝料の額が100万円だとして、不貞行為の責任割合が配偶者3:不貞行為の相手方2である場合、不貞行為の相手方は40万円分を負担することになります。
しかし、100万円の支払いを求められたときは、これに応じなければならず、その後は不倫をしていた配偶者に60万円を求償権によって請求します。
相手から全額の請求をされている場合には、支払いに応じた後に配偶者に求償権を行使することを主張すれば、その分の減額をしてもらえる可能性があります。

慰謝料請求に対してやってはいけないNG行為

知っておきたい離婚のポイント
  • 慰謝料請求をされているときにやってはいけないNG行為

不貞行為の慰謝料を請求されているときに、これはやってはいけないということはありますか?

相手の主張どおり支払いをしてしまうことなど、いくつかあるので確認してみましょう。

不貞行為の慰謝料を請求されているときに、やってはいけないことについて確認しましょう。

相手の主張する金額をよく調べないで支払ってしまう

一つ目のNG行為は、相手の主張する金額をよく調べないで支払ってしまうことです。
不貞行為の慰謝料請求は、怒りの感情とともに請求されることがほとんどなので、金額も多めに請求されることが多いです。
一度支払ってしまうと、取り戻すことはできないので、金額が妥当かどうかよく調べないで支払わないようにしましょう。

相手の主張を認めてしまう

相手の主張をそのまま認めてしまうこともNG行為の一つです。
慰謝料の金額を認めるのはもちろん、前提となる不貞行為に関する事実関係を認めてしまうと、後から撤回するのが困難であることがあります。
相手の主張を安易に認めないようにしましょう。

相手の感情を逆なでする

相手の感情を逆なでする、という行為はNGです。
相手の感情を逆なでするような行為をすると、金額や支払い方法での妥協をしてもらえなくなる可能性があるためです。

無視する

請求をされても無視することは、NG行為の一つです。
無視をすること自体が前述の感情を逆なでする行為でもありますし、裁判を起こされることになることも覚悟しなければなりません。
相手に証拠がない・不貞行為の事実関係がなく請求を拒む場合には、無視をするのではなく、きちんと請求に対して理由を提示して支払いを拒むようにしましょう。

慰謝料を請求されているのに不倫を続ける

絶対にやってはいけないのが、慰謝料を請求されているのに不倫を続けることです。
精神的苦痛を生じさせるものとして、慰謝料額が増えることになり、金額や支払い方法での妥協をしてもらえなくなるためです。

不貞行為に基づく慰謝料請求への対処方法

知っておきたい離婚のポイント
  • 慰謝料請求への対処方法

では、不貞行為であると慰謝料請求がされた場合、どう対処するのが良いのでしょうか。

慰謝料請求がされた場合に、順を追って何をすべきか確認しましょう。

不貞行為に基づく慰謝料請求にどう対処するのが良いのか確認しましょう。

まずは事実関係を整理する

不貞行為に基づく慰謝料請求にどう対処するかについては、まずは事実関係を整理しましょう。
いくらの金額の慰謝料を、どのような事実関係に基いて請求しているのかを確定させます。

慰謝料の相場を調査

事実関係をもとに、慰謝料の相場がどの程度であるか調査しましょう。
調査は過去の裁判例などをもとに調べることが可能ですが、一つ一つの案件で事情が異なるのが通常なので、弁護士に相談することをおすすめします。

相手の主張を裏付ける証拠の有無を調査する

相手の主張とその主張を裏付ける事実についての証拠の有無を確認しましょう。
どの内容について反論が可能か、主張を退けることができるかがわかれば、金額面での交渉がしやすくなります。

慰謝料を一括で支払えない場合には分割での支払いを提案する

慰謝料の支払いをしなければならない場合に、一括で支払えない場合もあるでしょう。
この場合には分割での支払いも提案してみましょう。

まとめ

このページでは、不貞行為をしたとして慰謝料の支払いを求められている場合の対応方法についてお伝えしました。
慰謝料請求されている場合、適切な金額なのかの判断や、相手との交渉は非常に難しいです。
弁護士に相談・依頼して、適切な金額の判断と交渉を任せることをおすすめします。