- 裁判ではモラハラだけで離婚は難しい事例が多いが、別居により離婚できる可能性はある
- 慰謝料の相場は50~200万円程度、モラハラ以外にDV・不貞行為などがあれば高くなる傾向がある
- まずは相手と話し合い、合意に至らない際には調停・審判、最終的には裁判に
【Cross Talk 】モラハラをする相手と離婚したい!
配偶者のモラハラが精神的に辛いです。離婚できますか?
相手が同意すれば可能です。しかし、最終的に訴訟になった場合はモラハラだけでは難しい事例が多いです。別居が長期間に渡ると「婚姻を継続し難い重大な事由」として裁判で離婚が認められる可能性があります。
詳しく教えてください。
モラルハラスメント(モラハラ)は、無視や人格を否定する言動で相手を追い込むとされ「精神的な暴力」とも言われています。直接的な暴力と違い目に見える被害ではありませんが、場合によっては相手を精神的に追い詰めてしまいます。
法律上、相互協力義務がある夫婦の間で許されない行為の1つと言えるでしょう。法務省の調査では離婚原因として「精神的な暴力を挙げている人」の割合は、男性が10.1%、女性は20.6%に上ります。
モラハラとは何か、モラハラ夫または妻の特徴や離婚・慰謝料などについて解説していきます。
モラハラで離婚できる?まずは証拠収集を
- モラルハラスメント(モラハラ)とは言葉や態度で相手を精神的に傷つける行為
- 相手が合意すれば離婚は可能だが、拒否された場合は困難な可能性が高い
配偶者に毎日無視されて辛いです。離婚したいですが、合意してくれません。
まずはモラハラの証拠を集めましょう。メモやメッセージアプリの履歴、第三者の証言などが証拠になる可能性があります。
モラルハラスメントとは言葉や態度で相手を精神的に傷つける行為
まずモラルハラスメントとは直訳すると「道徳的な嫌がらせ」ですが、具体的にどのような行為を指すのでしょうか?
東京都「東京ウィメンズプラザ」のホームページに掲載されている「2020年度DV防止講演会講演録①」によると、モラルハラスメント(モラハラ)とは「言葉や態度、身振りや文書などで人格や尊厳を傷つけたり、精神的に追い詰めたり、雰囲気を悪化させる行為」と記載されています。
参考:東京都 東京ウィメンズプラザ 令和元年度DV防止講演会(第1回)講演録①
相手の言葉を意図的に無視する行為はモラハラの代表的な例です。
意図的に大きな音を立ててドアを閉める、ため息をつく、舌打ちをするなどの不快な感情を表す態度・言動で日常的に相手へ自責の念・罪悪感を抱かせ、精神的に追い詰めます。このことから、精神的な暴力とも言えるでしょう。
離婚原因として「精神的な暴力を挙げている人」の割合は、男性が10.1%、女性は20.6%に上ります。
うつ病などメンタルヘルスにおける不調の原因となることもありますので、配偶者にモラハラをされている場合は早めの対処が必要です。
既に精神的に追い詰められている方は、内閣府の事業「DV相談+」※3への相談や、配偶者暴力支援センター・福祉事務所・最寄りの警察署に相談し、一時保護施設(シェルター)への避難を検討しましょう。
モラハラ夫または妻の特徴
内閣府男女共同参画局のホームページによると、「DV(家庭内暴力)の精神的なもの」※5の例は以下の通りです。
- 大声でどなる
- 「誰のおかげで生活できるんだ」「甲斐性無し」などと言う
- 実家や友人とつきあうのを制限したり、電話や手紙を細かくチェックしたりする
- 何を言っても無視して口をきかない
- 人の前でバカにしたり、命令するような口調でものを言ったりする
- 大切にしているものをこわしたり、捨てたりする
- 子どもに危害を加えるといっておどす
- なぐるそぶりや、物をなげつけるふりをして、おどかす
生活費を渡さない、仕事を制限する行為もモラハラと言えますが、経済的なDVにも繋がるおそれがあります。
上記のような言動をとることで、「嫌な気持ちになるけど怖いから、とりあえず静かにしておこう」などと加害者の思い通りになり操作されているモラハラ被害者も存在します。
中には巧妙に「相手が言うように自分はダメな人間だ」「私が悪い」と感じるよう仕向ける加害者もいます。
「婚姻を継続し難い重大な事由」とみなされると離婚が可能に
モラハラが原因で離婚はできるのでしょうか?
モラハラに限らず、双方の合意があれば離婚は可能
です。相手が離婚に合意しない場合には調停・裁判などで離婚することになります。裁判などで民法770条「法定離婚事由」を立証すると裁判官に認められやすくなります。
第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
モラハラは上記のうち「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。
まずは客観的な証拠の収集を
相手が離婚に応じず裁判になることを視野に入れ、モラハラの証拠を集めておきましょう。
相手の言動をメモや日記に記録、音声を録音、メール・メッセージアプリの履歴を残しておくなどの方法があります。第三者の証言してもらうという手段もあります。
メンタルクリニックに通っている方は、医師の診断書・証言が証拠となる可能性もあります。
身体的な暴力がある場合には、病院を受診し医師に診断書を書いてもらいましょう。
モラハラをする相手と離婚する場合の慰謝料相場と方法とは
- モラハラの慰謝料相場は50~200万円程度
- DV・不貞行為などがあると慰謝料が高くなる傾向がある
モラハラの影響でうつ病になってしまいました。慰謝料は請求できますか?
医師に診断書を書いてもらい、病気の原因がモラハラと証言してもらえれば慰謝料が認められる可能性が高くなるでしょう。
慰謝料相場は50~200万円程度
モラハラなどの不法行為(故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害すること)は慰謝料を請求できます。
モラハラが証明できた際には慰謝料を支払う判決が下される事例があります。
相場は50~200万円程度
で、被害者の精神的苦痛の大きさやモラハラをされた期間、被害の程度などによって金額が異なります。モラハラ以外に身体的な暴力被害があった、不貞行為があった場合などでは慰謝料が高くなる傾向があります。
モラハラによって精神疾患になったなどの実害が生じた事例は、慰謝料請求を認められる可能性が高くなります。慰謝料は相手の経済力も判断材料になりますので、相手の収入が高い場合は慰謝料が高くなる事例もあります。
相手と話し合い、合意に至らない際には調停へ
具体的にどのような手順で慰謝料を請求するのでしょうか?
まずは相手との話し合いになりますが、「1対1で話し合うことが難しい」という状況の方は多いでしょう。ですので、相手に内容証明郵便を送り、顔を合わせず弁護士を代理人として交渉するという方法があります。
また弁護士を同席させ3人で話し合うことも可能です。
話し合いができない、もしくは話し合っても合意に至らない場合は、家庭裁判所の「調停」を利用できます。調停とは解決に向けて主に調停委員と話し合う場です。相手と顔を合わせたくない場合は「進行に関する照会回答書」の備考欄に自身の意向を記入しましょう。
進行に関する照会回答書は相手に見せないことになっていますので、不安や悩みがある場合は率直な気持ちを記すことができます。
最終的には離婚裁判。まずは弁護士にご相談を
調停で合意できない、もしくは相手が欠席などの理由で不成立になった時は、裁判で慰謝料を請求します。
できれば早い段階で弁護士へ相談することをおすすめします。
これまでの判例結果や経験を基に、専門家としての意見や対処法を教えてもらうことができます。
まとめ
モラハラは「精神的な暴力」とも言われています。相手の心理を巧妙に操作するタイプのモラハラ加害者もいますので、「こんなことで相談するなんて」と思う方も一度弁護士へ相談することをおすすめします。離婚できるか、慰謝料がもらえるか気になる方もまずは相談してみましょう。