理由がない離婚について解説いたします。
ざっくりポイント
  • 理由がなくても双方が合意していれば協議離婚ができる
  • 一方が合意せず、最終的に裁判に発展した場合は認められる可能性は低い
  • 理由がない離婚をする前に、離婚のデメリットを知り離婚後の経済面・住まいについて考える

目次

【Cross Talk 】理由がない離婚について解説いたします。

明確な理由はないのですが、なんとなく結婚生活が嫌になり離婚したいです。離婚できますか?

夫婦が合意していれば離婚は可能ですが、一方が同意せず裁判になった際は離婚が認められない可能性があります。また、離婚後のデメリットを把握し経済面や住まいなどを考えておく必要があります。

詳しく教えてください。

理由がなくても夫婦が合意すれば離婚は可能。裁判では不利になる可能性が高い

「理由はないけど、今の生活が嫌になった」「配偶者に落ち度はないが、結婚に向いていないから独身に戻りたい」という場合は離婚できるのでしょうか?

夫婦が合意している場合には協議による離婚ができます。ただし最終的に裁判になった際には「法定離婚事由」がないと離婚が認められない可能性が高いです。

今回は最も多い離婚理由と法定離婚事由とは何か、離婚前におさえておきたい5つのポイントを解説していきます。

双方が合意すれば離婚は可能。裁判では「法定離婚事由」が必要になる

知っておきたい離婚のポイント
  • およそ43%の夫婦が、離婚理由に「性格が合わない」を挙げている
  • 協議離婚はできるが、裁判に発展すると認められない可能性が高い

配偶者と性格が合わないので離婚したいです。理由として認められるのでしょうか?

民法で定められている「裁判上の離婚理由」には該当しないため、裁判では困難と思われます。しかし、2人が合意してれば離婚は可能です。

「性格が合わない」という理由での離婚が最も多い

裁判所が公表する「2021年司法統計年報」※1によると、婚姻関係事件の申立て動機で最も多いものは「性格が合わない」でした。合計64,885件のうち、夫は10161件、妻は17743件で合計27,904件、およそ43%となっています。

「性格が合わない」という理由は、裁判で離婚事由として認められる「法定離婚事由」ではありません。夫婦にとって重要な問題ではありますが、法律的には離婚の理由として成立しないという現状があります。
ただし、夫婦で合意をしている場合にはいつでも協議離婚が可能です。
理由がない、もしくは性格が合わず離婚したいという方は、下記の「おさえておきたいポイント5つ」を把握した後に配偶者と話し合ってみましょう。

※1 参照:令和3年 司法統計年報 3家事編

裁判で認められるための「法定離婚事由」5つとは

民法770条で定められている裁判で認められる離婚理由は以下の5つです。

第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1 配偶者に不貞な行為があったとき。
2 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
4 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

「悪意で遺棄された」とは、夫婦の関係や状況が悪化すると分かっていながら同居・協力・扶養の義務を果たさない行為です。例えば正当な理由がないのに勝手に家を出て行く、家にお金を入れないなどが挙げられます。
「その他婚姻を継続し難い重大な事由」とは暴力や長期間の別居などが該当します。

配偶者に離婚を申し出ても合意しない際には、調停を経て裁判に発展します。上記のような理由がないと、離婚は困難になるでしょう。

長期間にわたる別居は離婚の理由となりますので、まずは別居をするのも選択肢の1つです。
理由がなく離婚をする前には、以下のポイントをおさえておきましょう。

理由がない離婚をする前におさえておきたい5つのポイント

知っておきたい離婚のポイント
  • 離婚する前に離婚のデメリットを知っておく
  • 離婚後の子どもの養育費・生活費といった経済面・住まいなどを考える

離婚にあたって知っておくべきことはありますか?

「理由がなく離婚したい」という方は、離婚後に後悔することのないようにまず離婚のデメリットを知っておきましょう。

離婚のデメリットを把握しておく

「理由はないけどなんとなく離婚したい」という理由で離婚した結果「思ったより金銭的に厳しくてやっていけない」「いなくなって配偶者の良さが分かった。離婚しなければ良かった」と後悔する可能性があります。

離婚を切り出す前に、離婚によってどのようなデメリットが生じるのか、把握しておきましょう。
例えば、専業主婦(夫)の場合、離婚後の生活費を得るために仕事や住まいを確保しなければいけません。

まずは、離婚後にかかる生活費をシミュレーションすることをおすすめします。

なお離婚時には財産を分与しますが、家を購入した場合はどちらが住むか、ローン返済はどうするかなどを取り決める必要があります。ローンの残債が家の売却価格を上回る「オーバーローン」状態では資産価値がマイナスとなり話し合いが難航する恐れがあります。
連帯保証・連帯債務・ペアローンの物件はローンの契約変更が必要となります。

子どもがいる場合は養育費を請求できる?

子どもがいる夫婦は親権・養育費・離婚後の面会交流について取り決める必要があります。
養育費は、離婚して親権を持たなくなった親でも支払い義務がありますので協議離婚でも請求が可能です。
養育費の目安は裁判所の「養育費・婚姻費用算定表※2」を参考にしましょう。

※2 参照:裁判所 養育費・婚姻費用算定表

慰謝料は配偶者がDV・不貞行為などがあった場合に請求できる

慰謝料は配偶者が民法709条の不法行為に該当する行為を行った時に請求できます。

第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

不貞行為やDV・モラハラ・悪意の遺棄などで慰謝料が請求できるでしょう。
理由がない離婚では配偶者が不法行為をしていないため、慰謝料請求はできません。

離婚後の経済面を考え慎重に検討する

結婚中は共働きが可能ですが、離婚後は1人で生活費を稼ぐ必要があります。
一人暮らしもしくは子どもとの生活で経済的にやっていけるかを考え、慎重に離婚を検討しましょう。

また実家からの経済的・人的援助や、仕事、住まいなども考慮しておきましょう。

自分では「理由がない」と思っていても明確な理由があることも

自分では「なんとなく離婚したい」と思っていても「実は配偶者とすれ違いがある」「話す時間がなく喧嘩をしてしまう」「給与が少ないのが不満」など理由がある場合もあります。

明確な理由がある場合はまず夫婦で話し合っておくことをおすすめします。
離婚した方が良い場合もありますが、離婚を回避できる可能性がある場合はまず相談してみましょう。
例えば、弁護士に相談することで、第三者の視点からの意見を聞くことが可能です。

まとめ

理由がなくても、夫婦が合意をすれば離婚はできます。ただし、離婚前に生活費をシミュレーションし経済面や住まいなどについて考えておくことが重要です。
また、誰かに相談した結果「実は明確な理由があった」と気づくこともあります。
自分の気持ちが分からない方、悩んでいる方は弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。