- 重婚的内縁とは
- 重婚的内縁が保護されるためには
- 重婚的内縁の解消で発生する問題
【Cross Talk 】重婚的内縁は保護されますか?
交際相手との関係で質問があります。交際相手は戸籍上では結婚をしているのですが、既に夫婦関係は破綻しており、私の自宅で長年夫婦同然の生活をしてきました。子どももできて認知もしてもらっていたいのですが、他の女性と交際を始めて自宅から出ていきました。内縁の関係は保護されると聞いているのですが、私は何か保護を受けることはできませんか?
重婚的内縁という関係にあるのですが、保護される可能性もあるので詳しい状況をお聞かせいただけますか。
はい、よろしくお願いします。
既に婚姻関係にある人との内縁関係のことを重婚的内縁と呼んでいます。内縁関係にある場合にはある程度の法的保護が与えられるのですが、重婚的内縁については、法律が重婚を禁止している趣旨に違反してしまうので、基本的には保護されません。
しかし、一定の場合には保護の対象となることもあります。その結果、重婚的内縁を解消する場合には、他方が保護される結果、慰謝料請求などが認められることがあります。
このページでは重婚的内縁の保護と、重婚的内縁を解消する際に発生する問題について確認しましょう。
重婚的内縁とは
- 重婚的内縁とは
- 内縁の保護
- 重婚的内縁が保護されるか
重婚的内縁は保護されないのでしょうか。
重婚を禁止している法の趣旨に反しないような例外的な場合であれば保護されることもあります。
重婚的内縁とはどのようなもので、通常の内縁のように保護されるのでしょうか。
重婚的内縁とは
重婚的内縁とは、内縁関係にある一方が法律上の婚姻をしているような場合をいいます。
重婚とは複数の相手と婚姻を結ぶことを指し、内縁とは法律上の婚姻をしない夫婦関係のことを指します。
つまり、法律上の婚姻関係にある当事者の一方が、法律上の婚姻ができないので当事者の一方と内縁関係にある状態のことをいいます。
内縁の関係に与えられる保護
前提として、内縁の関係にある場合には、夫婦共同生活の実態があり、法的にも保護に値すべきという観点から、法的な保護が与えられます。
例えば、婚姻している夫婦に認められている次のような義務を守らなければなりません。
- 貞操義務
- 同居義務
- 扶養義務
- 婚姻費用の分担義務
- 財産分与
これらの義務に違反した場合、慰謝料の支払いや婚姻費用負担の義務が発生します。
例えば、内縁関係にある人が、他の異性と性行為を行った場合には、貞操義務違反で婚姻している人が不貞行為を行った場合と同様に、慰謝料の支払いをしなければなりません。
なお、相続権については法律上の配偶者に限られるとされています。
重婚的内縁は保護されるか
では、この内縁関係が重婚的内縁でも保護されるのでしょうか。
前提として、重婚については、民法732条で禁止されているほか、刑法184条では2年の懲役刑を法定して禁止しています。
これは、日本では一夫一婦制が採用されており、重婚を認めることは刑事罰を以って禁止するほど法秩序の観点からそぐわないものであると考えられているからです。
重婚的内縁を保護することは、この重婚を禁止している法の趣旨に違反すると言えるため、基本的には重婚的内縁は保護されないと考えられています。
重婚的内縁が保護される例外的な要件
重婚的内縁は、基本的に保護されないと考えられていますが、例外的に保護される場合もあります。
そもそも重婚的内縁が保護されない理由は、実質的な重婚を認めることが許されないためです。
そのため、法律上の婚姻関係が既に実質的に破綻しているような場合には、別にある内縁関係を保護しても、重婚を認めない法の趣旨には反しないといえます。
つまり、法律上の婚姻関係が既に破綻していると認められるような場合には、重婚的内縁は保護される可能性があります。
重婚的内縁が保護されるためには、法律上の婚姻関係が既に破綻していると認められる必要があります。
法律上の婚姻関係の破綻を、形式的に定める法律上の要件などはないので、夫婦の関係がどのような状態かによって検討されます。
- 婚姻期間
- 別居に至った事情
- 別居期間
- 別居後の夫婦の関係
- 夫婦の家計が独立しているかどうか
以上のような事情を総合的に判断しながら、夫婦関係の破綻を認定することになります。
例えば、婚姻期間が長いような場合には、別居している期間もより長期間でなければ婚姻関係の破綻は認められづらいです。
また、当事者の価値観のズレから別居に至った場合よりも、不倫によって一方的に自宅を出たことで別居が始まったほうが、別居に至った事情として夫婦関係の破綻が認められやすいです。
夫婦関係の破綻を認定してもらえるかどうかは、夫婦関係についての時系列および、どれくらい裁判になったときに立証できるかにもよるので、弁護士に相談して判断することをおすすめします。
重婚的内縁を解消する場合の問題
- 重婚的内縁を解消する場合に発生する法的問題
- 慰謝料・財産分与・養育費など
重婚的内縁が保護される場合で、これを解消する場合にはどのような問題が発生しますか?
慰謝料・財産分与・養育費の問題について確認しましょう。
重婚的内縁が保護される場合に、これを解消する際の問題について確認しましょう。
慰謝料は請求できるか
内縁関係を解消する際に、離婚をする場合と同様に慰謝料が発生することがあります。
重婚的内縁の関係が保護される場合でも同様に慰謝料が発生しえます。
次のようなことが原因で重婚的内縁が解消される場合には、慰謝料が発生する可能性があります。
- 不貞行為(不倫・浮気)
- 悪意の遺棄(生活費を入れない・家に帰ってこない)
- DV
- モラハラ
慰謝料の相場は、状況により異なりますが、行為の悪質性に応じて50万円~200万円程度になることが多いと思われます。
財産分与は請求できるか
婚姻期間中に夫婦で共同して築いてきた財産の精算をすることを財産分与といいます。
内縁関係でも共同生活をするにあたって築いてきた財産がある場合には、財産分与の請求をすることができます。
通常の法律婚であれば婚姻届の提出という形式的な行為があるのですが、重婚的内縁の場合にはこのような形式的な区切りがないため、いつからいつまでの財産について対象になるか争いになりやすいという特徴があります。
子どもの親権・養育費
通常の離婚をする場合で、子どもがいる場合には、子どもの親権・養育費が問題となります。
養育費については、父親が子を認知している場合には、父親に対して請求をすることが可能です。
認知をしてもらっていない場合には、交渉で認知をしてもらうか、父親が認知を拒むのであれば、強制認知の訴えをすることからはじめなくてはならない点に注意が必要です。
まとめ
このページでは、重婚的内縁についてお伝えしました。
通常の内縁関係は保護されるのですが、重婚的内縁は重婚を禁止する法律が存在することから、基本的には保護されません。例外的に保護されるかどうかは、夫婦関係の破綻があるか、諸事情をもとに個別に判断する必要があるので、まずは弁護士に相談するようにしましょう。