配偶者のゲーム依存症を理由に離婚できるかや、離婚する場合の注意点を解説いたします。
ざっくりポイント
  • 協議離婚や離婚調停は相手が同意すれば離婚できる
  • ゲーム依存症というだけでは一般に裁判離婚は認められない
  • ゲーム依存症以外に主張できる要素がないかを検討すべき

目次

【Cross Talk 】ゲーム依存症を理由に離婚できるの?

夫がゲーム依存症になってしまい、仕事もせずに課金ばかりしています。生活が成り立たないので離婚したいのですが、可能でしょうか?

ゲーム依存症を理由に離婚する場合、相手が離婚に同意すれば、協議離婚が可能です。相手が同意しない場合は裁判離婚を検討しなければなりませんが、ゲーム依存症だけでは難しいところです。

相手が同意する場合は、ゲーム依存症で離婚が可能なんですね。裁判離婚についても詳しく教えてください!

配偶者のゲーム依存症が離婚原因になるかや、離婚する場合に注意すべきポイントを解説。

ゲームは子どもだけでなく、大人も夢中になって依存を形成することがあります。

大人がゲーム依存症になってしまうと、課金によって家計を圧迫したり、ゲームをするために働かなくなったりなどの問題が生じる場合もあります。

配偶者がゲーム依存症になったことで、愛想が尽きて離婚を検討することがあるかもしれません。

そこで今回は、配偶者のゲーム依存症を理由に離婚できるかや、離婚する場合の注意点について解説いたします。

配偶者がゲーム依存症である場合に離婚は可能か?

知っておきたい離婚のポイント
  • 協議離婚や離婚調停は相手が同意すれば離婚できる
  • ゲーム依存症というだけでは一般に裁判離婚は認められない

配偶者がゲーム依存症なので離婚したいのですが、可能でしょうか?

協議離婚や離婚調停の場合は、相手が同意すれば離婚できます。裁判離婚をするには一定の事由が必要ですが、ゲーム依存症というだけでは一般に該当しません。

ゲーム依存症とは

ゲーム依存症とは一般に、人間関係や健康などに問題が生じてもゲームに没頭してしまい、日常生活に支障をきたす状態のことです。

ゲーム依存症になると、ゲームのやりすぎによる睡眠障害や、禁断症状によるイライラなど、健康面の問題が生じる場合があります。

また、大人がゲームに没頭して仕事をしなくなったり、ゲームのために出費や借金を重ねたりなど、生活面で問題が生じる可能性もあります。

協議離婚・離婚調停では合意ができれば離婚可

ゲーム依存症を理由に離婚したい場合、協議離婚や離婚調停であれば、相手が同意すれば離婚は可能です。

協議離婚の場合、夫婦の両方が離婚に合意すれば、特に理由の制限なく離婚ができるので、ゲーム依存症を理由に離婚することができます。

離婚調停は裁判所による手続きですが、協議離婚と同様に、夫婦の両方が合意すれば離婚は可能です。

ただし、協議離婚も離婚調停も、離婚を成立させるには相手の同意が必要です。

相手が離婚に同意しない場合は、ゲーム依存症かどうかにかかわらず、協議離婚や離婚調停は成立しません。

離婚裁判を起こすには離婚原因が必要

離婚裁判を起こして離婚するためには、民法に定められている、離婚原因(法定離婚事由)に該当しなければなりません。

裁判を起こして離婚することを裁判離婚といいますが、離婚を認める判決が確定すると、夫婦のどちらかが離婚したくない場合でも離婚が可能です。

裁判離婚は、相手の意思にかかわらず離婚できる強力な効果があるため、離婚できる場合が限定されています。

民法第770条に規定されている、以下の法定離婚事由に該当する場合のみ、裁判離婚が認められます。

  • 配偶者が不貞行為をした場合
  • 配偶者から悪意で遺棄された場合
  • 配偶者の生死が3年以上明らかでない場合
  • 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない場合
  • その他、婚姻を継続し難い重大な事由がある場合

3-1)強度の精神病といはいえない
ゲーム依存症については、法定離婚事由のうち、「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない場合」に該当すると思われるかもしれません。

しかし、ゲーム依存症は一般的には、強度の精神病とまでは言えないのです。

強度の精神病とは、病気の程度について、夫婦が互いに有する義務(同居・協力・扶助)を十分に果たせないほど重症な場合のことです。

回復の見込みがない場合とは、文字通りに、不治であることを意味します。

強度の精神病に該当し、かつ回復の見込みがない場合としては、裁判例では重度の統合失調症などが認められています。

ゲーム依存症の場合は一般に、配偶者との同居や協力などの義務が、十分に果たせない状態にあるとまでは言えません。

また、ゲーム依存症は回復の見込みがあることから、不治とまでは言い切れません。

以上のことから、単にゲーム依存症の状態にあるだけでは、原則として法定離婚事由には該当しないのです。

3-2)その他婚姻を継続し難い重大な事由に該当すれば離婚は可能
例外として、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると判断される場合は、裁判離婚が認められる可能性があります。

婚姻を継続し難い重大な事由とは、一般に、婚姻関係が破綻して回復の見込みがない状態のことです。

婚姻関係が破綻しているかどうかは、婚姻を継続する意思があるか・子どもの有無や子どもの状態・夫婦の年齢や資産収入など、婚姻関係に関する事情を考慮したうえで判断されます。

配偶者が単にゲーム依存症の状態にあるだけの場合は、一般に法定離婚事由には該当しません。

しかし、ゲーム依存症によって以下のような状況が生じている場合は、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると判断される可能性があります。

  • ゲームの課金をするために借金を重ねている
  • 収入をすべてゲーム課金に充て、生活費を一切負担しない
  • ゲームに熱中して労働や家事を放棄している
  • ゲームのために家庭内での喧嘩が絶えない etc

4)ゲーム依存症を理由に離婚する場合に慰謝料請求ができるか
単に配偶者がゲーム依存症というだけでは、一般に慰謝料請求は認められません。

慰謝料請求が認められるには、不貞行為やDVなどの一定の事由が必要ですが、ゲーム依存症というだけでは該当しないからです。

ただし、ゲームで知り合った異性と不貞行為をしたなど、ゲーム依存症に関連して一定の行為が行われた場合には、その不貞行為を理由として慰謝料請求が認められる可能性があります。

ゲーム依存症を理由に離婚する場合の注意点

知っておきたい離婚のポイント
  • ゲーム依存症の証拠収集は念入りに行う
  • ゲーム依存症以外に主張できる要素がないかを検討する

ゲーム依存症を理由に離婚する場合の注意点を教えてください。

ゲーム依存症を証明するために、証拠収集は念入りに行いましょう。これまで説明したようにゲーム依存症の理由だけでは離婚事由に該当しないので、ゲーム依存症以外にも主張できる要素がないか検討することも重要です。

証拠の収集は念入りに行う

ゲーム依存症を理由に離婚する場合、証拠の収集は念入りに行うべきです。

ゲーム依存症であることを証明する証拠がなければ、協議離婚や離婚調停などで、相手が離婚に同意しない可能性が高まるからです。

一般にゲーム依存症の証拠になりうるものとしては、配偶者がゲームをしている状態の録画・録音や、ゲームに課金するために使用したクレジットカードの明細などがあります。

ゲーム依存症の他にも主張できる要素はないか検討する

離婚したい場合は、ゲーム依存症以外にも主張できる要素がないかを検討すべきです。

ゲーム依存症に関連して主張できる要素として、ゲームをやめさせようとすると暴力を振るわれる、ゲームの課金で借金を重ねている、ゲームで知り合った異性と不貞行為をしているなどがあります。

弁護士に相談・依頼することは証拠の収集とスムーズな離婚に有利

ゲーム依存症を理由に離婚したい場合は、弁護士に相談・依頼すると、スムーズに離婚を進めやすくなります。

弁護士に相談することで、離婚できる可能性があるかや、離婚の手続きを有利に進めるための証拠などを知ることができます。

相手がゲーム依存症の場合、ゲームに夢中になって話を聞いてくれないことがありますが、弁護士を立てることで、真面目に話を聞く可能性が高まります。

協議離婚に応じない場合は、離婚調停や離婚裁判を検討することになりますが、弁護士であれば、これらの手続きを任せることが可能です。

まとめ

ゲーム依存症とは、日常生活に支障をきたすほどゲームに熱中している状態のことです。
ゲーム依存症を理由に離婚する場合、協議離婚や離婚調停であれば、相手が同意すれば離婚することができます。
裁判離婚をするには法定離婚事由が必要ですが、ゲーム依存症というだけでは、一般に法定離婚事由には該当しません。
ただし、ゲームに関連してDVや不貞行為などが行われている場合は、法定離婚事由に該当する可能性があります。
ゲーム依存症を理由に離婚を検討している場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。