離婚調停で作成される調停調書にはどのような法的な効果があるのか?
ざっくりポイント
  • 調停調書とは?
  • 調停調書の法的な効果とは?
  • 調停調書に記載されるべき内容とは?

目次

【Cross Talk 】離婚の調停調書には何が書かれ、どのような効果があるのでしょうか?

離婚の際に作成される調停調書にはどのような法的な効果があるのでしょうか。

調停調書には直ちに強制執行手続きを行える力があります。

それはどういうことでしょうか?詳しい解説をお願いします。

調停調書に記載される内容やその効力とは?

離婚する際に家庭裁判所における調停調書が作成された場合、どのような法的な効力があるのでしょうか。
また調停調書にはどのような内容が記載されるのでしょうか。
協議離婚の際に作成される公正証書と比較してその違いをお伝えしていきます。

離婚における調停調書とは

知っておきたい離婚のポイント
  • 調停調書とは?
  • 調停調書と公正証書の違いとは?

離婚する場合の調停調書とはどのようなものですか?

調停調書とは、家庭裁判所の調停手続きで合意できた場合に作成される文書です。

調停調書とは?

離婚調停における「調停調書」とは、離婚調停手続きの中で、夫婦が合意した内容が記載されるもので、調停が成立した場合に作成される書面です。

夫婦が離婚をする際に、当事者間で任意による協議では話し合いがまとまらない場合には家庭裁判所の調停手続きを利用することができます。

離婚調停では、家庭裁判所の裁判官(調停官)と民間の有識者の中から選ばれた家事調停委員2名によって構成された調停委員会が手続きを進めていきます。
調停委員は公正中立な立場から、当事者双方から事情や言い分を別々に聞きとり、双方の主張や争点を整理して双方に伝えます。調停委員は当事者の間に入って話し合いが円滑に進むように助言したり、合意が成立するように手助けをしたりします。

このような話し合いの結果、双方が合意に達して調停委員会もその合意内容を相当であると判断した場合、合意内容は「調停調書」に記載されることになります。
他方、調停手続きによっても当事者間が合意できない場合には、調停は「不成立」となり調停手続きは終了します。

離婚調書と公正証書の違いとは?

離婚調書と公正証書は以下のように全く異なる文書です。

まず、調停調書は、家庭裁判所の裁判所書記官によって作成されるのに対して、公正証書は公証役場の公証人によって作成される文書です。
また調停調書は、離婚調停が成立するときに作成される書面であるのに対し、公正証書は、夫婦が話し合いによって離婚条件を合意する(協議離婚)際に作成される文書です。

離婚した当事者に大きな影響を与える違いとしては、「強制執行」に関する部分があります。

結論からいうと、調停調書で約束された内容が守られないとそのまま強制執行の手続きに進むことができますが、公正証書の場合には強制執行認諾文言が記載されている場合を除き、裁判手続きを経る必要がある場合があります。

この点については、調停調書の効力として以下で詳しく解説していきましょう。

離婚における調停調書の効力とは

知っておきたい離婚のポイント
  • 離婚の調停調書の効力とは?
  • 調停調書は強制執行をする際の債務名義になる

調停調書が作成されると、どのような効力があるのでしょうか?

調停調書で約束された内容が守られない場合には速やかに強制執行が可能になります。

調停手続きで離婚の合意ができた場合、その合意内容は「調停調書」に記載されることになります。
このような調停調書については、「その記載は、確定判決と同一の効果を有する」と規定されています(家事事件手続法第268条1項)。
そして、強制執行を行う場合には、「債務名義」という文書が必ず必要になります。
「債務名義」とは、強制執行を行なう際に、その前提として必要となる公的機関が作成した文書のことをいいます。
そして調停調書はこの債務名義となる資格があるのです(民事執行法第22条7号)。

したがって、離婚調停で決まった内容を相手方が守らない場合には、調停調書に基づいて地方裁判所に強制執行の申立てを行うことができます。別途新たに裁判手続きを起こして請求権について判断してもらう必要はありません。

以上の調停離婚に対して協議離婚の場合には、家庭裁判所によって作成される調書のような文書がないため、債務名義を別途取得する必要があります。
ただし、協議離婚で公正証書を作成していた場合には、一定の条件のもとでこれを債務名義とすることができます。具体的には、離婚の際に一定の金額の支払いについて公正証書で合意し、「債務者が金銭の支払いをしないときは、直ちに強制執行に服する」旨の陳述(強制執行認諾文言)が記載されている場合には、金銭債務の不履行について裁判手続を経ることなく直ちに強制執行をすることができます。
この強制執行をすることができる公正証書のことを「執行証書」といいます。

したがって、調停調書があれば即強制執行を申立てることができますが、公正証書の場合には強制執行の申立てをするためにはその記載内容について一定の条件が必要となるのです。

離婚の調停調書に記載されるべき内容とは?

知っておきたい離婚のポイント
  • 離婚の調停調書に記載されるべきない内容とは?
  • 財産分与、養育費、慰謝料などについても調停で取り決めておくべき

調停調書にはどのような内容が記載されるのでしょうか?

調停が成立した場合には、以下のような合意内容等が記載されることになります。

離婚成立の形態

調停離婚が成立した場合には、「申立人と相手方は、本日、調停離婚をする」という内容が記載されます。これにより、直ちに調停による離婚が成立します。
調停離婚が成立した場合には、調停成立日から10日以内に区役所・市役所に離婚届を提出しなければなりません。

離婚届出義務者

調停調書には、離婚届出義務者が記載されます。
申立て人と相手方のうちどちらが離婚届けを役所に提出する義務のある者かが定められます。
一般的には、離婚によって旧姓に戻るのか、または婚姻期間の氏を引き続き使用するのかの選択権がある者(婚姻によって姓が変わった当事者)を、届出義務者とすることが多いと思われます。

財産分与

離婚調停で財産分与について取り決めを行った場合には、以下のような合意内容が調停調書に記載されることになります。
・現金や預貯金の分与金額、支払い方法
・不動産や自動車の名義変更の方法

調停調書があれば、不動産を譲り渡す方の協力なしで単独で名義変更ができます。
その場合の必要書類は、次の通りです。
・調停調書正本または判決正本
・不動産を譲り受ける方の住民票
・固定資産評価証明書
・不動産を譲り受ける方の認印

親権者・養育費・面会交流

未成年の子どもがいる夫婦の場合には、離婚する際に父母のどちらが親権者となるのかを決定しなければなりません。親権者の合意を事後的に変更することは非常に難しいため、しっかりと話し合いで判断する必要があります。

また、親権者とならなかった方の親(非監護親)と子どもの面会交流についても調停調書で取り決めておくことができます。
「面会交流」とは、非監護親が子どもと定期的・継続的に会ったり一緒に時間を過ごしたり、メールや電話などの方法で交流することを指します。面会交流は、親の権利であると同時に、子どもが成長するために非常に重要な子ども自身の権利でもあるため、子どもの利益が最大限尊重されるようにする必要があります。

さらに、子どもの養育費についても合意しておくことが重要です。
「養育費」とは、子どもの監護や教育のために必要な費用のことを指します。一般的には、子どもが経済的・社会的に自立するまでに要する費用を意味し、以下のような費用が典型的です。

・子どもの衣食住に必要な経費
・子どもの教育費用
・子どもの医療費

慰謝料

離婚の原因を作った方の配偶者は、他方に対して慰謝料を支払う義務を負う場合があります。
離婚調停で離婚慰謝料について合意した場合には、その金額や支払い方法が記載されることになります。
例えば、不貞行為が原因で夫婦関係が破綻し離婚に至ったという場合、慰謝料の相場としては数十万円~200万円程度です。
なお、離婚慰謝料については財産分与の中で考慮して分与財産を決定することも可能とされています。

まとめ

以上この記事では、離婚における調停調書の効力について、公正証書との比較もしながら解説してきました。
離婚調停では、財産分与や養育費、慰謝料など金銭の支払いに関する合意が主な争点になることも多く、有利な内容で離婚したいと思う場合には、離婚事件の経験が豊富な弁護士に依頼されることがおすすめです。