- 親権とは
- 離婚する場合の親権の決定方法
- 親権争いで母親が負ける場合
【Cross Talk 】親権争いで母親が負けることってあるのですか?
夫と離婚を検討しています。離婚すること自体には合意しているのですが、子どもの親権を巡って夫と争いになっています。普通は母親である私が勝って引き取ることになると思うのですが、親権争いで負けるってことはあるのですか?
親権争いはたしかに母親のほうが有利なのですが、負けないわけではありません。母親が負ける場合も知っておきましょう。
そうなんですね!詳しく教えてください。
子どもがいる夫婦が離婚をする場合には、子どもの親権をどちらにするか決める必要があります。当事者で決められない場合には調停・裁判で決めることになるのですが、親権争いについては基本的に母親が有利です。しかし絶対に母親が勝つというわけではないので、親権争いで母親が負ける場合を知っておきましょう。
親権の決定について
- 親権とは
- 親権を決定する要素
裁判所で親権を決めるときにはどんなことが考慮されるのですか?
親権の決定についてどんな原則があるかを知っておきましょう。
親権の決定についての基本的な事項を知っておきましょう。
親権とは
親権とは、未成年者の子どもの父母が、子どもに対して持っている身分上・財産上の権利の総称です。
未成年者の子どもがいる場合、親権者は子どもの養育のために様々な権利が、民法で規定されています。
例えば、
などが挙げられます。
親権を決定する方法
この親権は離婚をする際に父母の一方に定めることが、民法819条1項・2項で規定されています。
協議離婚をする場合には父母の一方を親権者として決めて離婚届に記載する必要があり、離婚届で親権についての記載がなければ受理がされません。
そのため、親権は父母の協議で決められることになります。
また離婚調停では、親権についても調停の中で合意します。
審判・裁判では裁判所が審理の結果、裁判所が親権者を決定します。
調停・裁判で親権を決定する場合のポイント
調停では、最終的には当事者が合意をしますが、裁判官・調停委員が当事者と調整を行います。
また、審判・訴訟では裁判所が、親権者をどちらか一方に決定します。
この調整や決定にあたって、どちらを親権者にするかのポイントがあります。
母性優先の原則
親権の決定については「母性優先の原則」というものがあります。
これは、
親権の決定において、母親側に有利に働くことを意味します。
子どもは母親と一緒にいる時間が長く、これは子どもの年齢が低ければ低いほどその傾向があります。
そのため、基本的には母親に認められやすいのですが、これだけで決定するわけではなく、その他の事情も考慮されることになります。
子どもの監護の状況
子どもの監護状況が親権の決定では考慮されます。
いくら母性優先の原則があるといっても、母親が自宅にほとんど戻らずに遊び歩いている、というような状況の場合、母親に親権を認めても適切な育児を期待できない、場合によってはネグレクトなどの虐待を受ける可能性もあるからです。
子どもの意思の尊重
子どもの意思も尊重されます。
親権者が父母のどちらになるかは、子どもにとって非常に重大なことです。
そのため、子どもの意思も尊重すべきといえます。
ただし、子どもの意思を反映すべきかは、子どもの年齢にもより、子どもの年齢が高ければ高いほど尊重すべきといえるでしょう。
そこで
15歳以上の場合には裁判所は子どもの陳述を聞かなければならないことになっています。(家事事件手続法169条)。
現状維持の原則
今ある環境はなるべく変えるべきではないという、現状維持の原則が判断要素になります。
離婚によって子どもの環境は大きく変わることになります。
引っ越し・学区の変更をすれば転校をしなければならなくなるなど、子どもの環境が大きく変わる場合には、心身への影響が大きくなります。
そのため、現状維持の原則によって、できる限り今の環境から変更しないようにしようという判断が働きます。
きょうだい不分離の原則
子どもが複数いる場合には、兄弟姉妹はなるべく分離しないという、きょうだい不分離の原則が判断要素になります。
子どもが複数いる場合、兄弟姉妹はなるべく一緒に育てるのが望ましいからです。
面会交流に対して寛容か
面会交流に対する寛容性が判断要素になります。
離婚後に、別居することになるため、定期的に面会交流が持たれるのですが、面会交流をさせないような場合には親権を与えると、他方が面会交流をできなくなってしまいます。
離婚後の面会交流がスムーズに行われるか、面会交流に対して寛容かを判断する必要
があります。
子どもを育てるための体制
子どもを育てるための体制が判断要素になります。
経済的な面のみならず、親(子どもから見ると祖父母)が同居してくれるなど、子どもに対するサポートが厚いほうが子どもの監護に適しているからです。
親権の決定で母親が負ける場合
- 親権が母親に認められない場合
- 虐待や育児放棄をしているなどの場合別
親権の決定で母親が負けるのはどのような場合でしょうか。
場合ごとに母親が負ける場合について確認しましょう。
親権の決定で母親が負ける場合として、次のような場合が挙げられます。
母親による虐待・育児放棄
母親による虐待・育児放棄が認められる場合には、親権争いで負ける可能性が高いといえるでしょう。
母親による虐待・育児放棄が認められるような場合で親権を与えることは、子どもの養育の点では望ましくないことは明らかです。
母性優先の原則はあくまでそちらのほうが子どもの養育に望ましいことから認められる原則で、虐待・育児放棄があるような監護の状況にある場合には、監護状況から父に親権を認める可能性が高まるといえるでしょう。
母親が病気などで育児ができない状況
母親が病気などで育児ができない状況である場合には、親権争いに負ける可能性が高いです。
経済的な問題については、父からの養育費の支払いや、児童扶養手当などでケアが可能です。
しかし、母親が病気で育児ができないような状況だと、子どもの養育を期待できません。
親権はあくまで子どもの育児のために検討されるべきで、母親の病気療養のために子どもの親権を獲得したいというのは認められないのです。
母親に監護の実績がない
母親に監護の実績がない場合
にも、親権争いに負ける可能性があります。
例えば、母親がフルタイムで働いておりほぼ監護の実績がなく、父親が自宅勤務で子どもの面倒を見ながら働いているような場合で、母親に監護の実績がない場合に、急に子ども中心の生活になることは期待できません。
離婚で親権を母親に与えてしまうと、適切に養育されない可能性があるためです。
既に別居して父親と暮らしている
離婚時に既に別居している場合で、父親と暮らしている場合
には、親権争いで負ける可能性があります。
既に別居して父親と暮らしているような場合には、親権の原則である現状維持の原則が重視される可能性があるためです。
子どもが父親と暮らすことを望んでいる
子どもが父親と暮らすことを望んでいるような場合
には、親権争いで負ける可能性があります。
上述したように、親権においては子どもの意思も判断されるので、子どもが父親と暮らすことを望んでいる場合には、その年齡にもよりますが重視されることになります。
まとめ
このページでは、父母で親権争いになったときに、母親が負ける場合についてお伝えしました。
離婚時に親権について争いになった場合、当事者で合意できない場合には調停・審判・裁判で決められます。
このときに裁判官等は、母親を優先する傾向にあるのですが、必ず母親に親権が認められるわけではなく、その他様々な要素から、子どもの養育環境にもっとも適したものを判断する傾向にあります。
虐待・育児放棄をしている場合はもちろん、その他にも親権争いで母親が不利な場合はあるので、あてはまる場合には弁護士に相談をして、少しでも有利にできる方法はないか相談してみるようにしましょう。