離婚する場合の別居期間は?別居するメリット・デメリットとは?
ざっくりポイント
  • 裁判離婚の離婚原因とは
  • 離婚原因となる別居の期間とは
  • 離婚前に別居するメリット・デメリットとは

目次

【Cross Talk 】離婚をするのに別居しておく必要はありますか?

配偶者との離婚を検討していますが、離婚前に別居すべきかどうかで悩んでいます。将来的に離婚をする際に、別居しておくほうが離婚しやすいのでしょうか。

離婚は夫婦2人の話し合いで決めることもできますが、裁判離婚をする場合には5つの離婚原因のどれかに該当している必要があります。具体的な別居の内容によっては、この離婚原因が認められる可能性があります。

どのような場合ですか?詳しく教えてください。

別居が長いと「婚姻を継続し難い重大な事由」あり?

別居の有無で離婚の可否が定められているわけではありません。離婚前に別居していたとしても裁判離婚が認めらない場合もあります。
このページでは、裁判離婚が認められる離婚原因となるような別居の内容についてお伝えいたします。

離婚する前に別居は必要?出し

知っておきたい離婚のポイント
  • 法定離婚事由とは
  • 別居の有無は「婚姻を継続し難い重大な事由」の考慮要素となる

裁判で離婚するにはどのような条件が必要なのでしょうか?

裁判離婚が認められるためには、法定離婚事由が存在している必要があります。

裁判離婚をするには離婚原因が必要

夫婦が離婚をするためには、「協議離婚」・「調停(審判)離婚」・「裁判離婚」の3つの方法が考えられます。

「協議離婚」、「調停離婚」は、基本的には当事者である夫婦が話し合いによって離婚の合意をする手続きですので、双方が合意できなければ離婚することができません。

これに対して「裁判離婚」は一定の理由があれば、当事者の意思にかかわらず裁判所が離婚を言い渡す手続きです。そのため、当事者の意思によらずに離婚が認められることになりますが、一方で離婚の原因となる事実は厳密に民法に定められています。

このように民法に列挙されている離婚原因のことを、「法定離婚事由」といいます。

この法定離婚事由については、以下の5つが規定されています(民法第770条1項)。

1.配偶者に不貞行為があったとき
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき
3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

別居をすることで離婚原因ありと認めてもらえる

別居期間がある場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして離婚原因⑤が認められる可能性があります。

前述の①~④の離婚原因が具体的離婚原因であるのに対して、⑤の離婚原因は「その他」と規定していることから、一般的な離婚原因であると考えられています。
そのため、①〜④の理由がなくとも婚姻関係を継続することを期待できないほど深刻に破綻した場合には、⑤の離婚原因があるとして裁判離婚ができることになります。

以上から、夫婦の別居期間が相当長期に及ぶ場合には、夫婦関係の実体が消失したとして婚姻の破綻が認められる可能性があるのです。

別居のメリット

離婚する前に別居するメリットとしては以下のようなものがあります。
詳しくは後述しますが、別居期間が長期になればなるほど夫婦関係の実体が失われたとして法定離婚事由に該当していると判断される可能性は高まります。

なお、別居中といえども形式的には婚姻関係が継続しています。そのため、夫婦は生活費などの婚姻費用については分担して負担しなければなりません。
したがって、別居中の婚姻費用の負担をなくすために相手方配偶者が早期に離婚に応じる場合もあります。

さらに別居を検討しているような場合、夫婦関係はかなり冷え切っており危機的状況である場合が多いでしょう。
家庭内暴力・DVやモラハラ被害に遇っている場合には、強制的に相手方と物理的距離をとることで自らの身を守ることにもなります。

別居によって精神的に落ち着いてこれまでのことやこれからの対応について考えることができるようになります。同居生活に疲れてしまった方は、一度別居して今後のことを考えることが重要な場合もあるでしょう。

別居のデメリット

上記に対して、別居することのデメリットについて以下のようなものが考えられます。

一方的に家出をして相手方配偶者の生活費を負担しなくなった場合には、「②悪意の遺棄」の法定離婚事由に該当してしまう可能性があります。民法には、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」として同居・協力・扶助義務が定められています。
そのため正当な理由なく別居を開始した場合や、婚姻費用分担を拒否した場合には、この「悪意の遺棄」に該当してしまう可能性があるのです。
別居をすることで「悪意の遺棄」に該当してしまった場合には、別居した側が有責配偶者となり、別居した側からの離婚請求が認められないこともあるので注意しましょう。

夫婦共働きで生計を維持している場合や専業主婦(主夫)として相手方配偶者の収入への依存度が高い場合には、別居することで生活水準が低下してしまう可能性もあります。
これまで夫婦2人の稼ぎで生活していたのであれば、別居後は基本的にはご自身の収入だけが頼りになります。そのため、相手方に婚姻費用の分担を請求できるとしてもこれまでの生活スタイルを大きく変えなければならない可能性があるのです。

別居による生活が始まることで夫婦関係の溝が決定的になる可能性もあります。同居を継続していれば生活の中で夫婦関係を改善するチャンスがありますが、別居してしまうと関係改善の機会を設けることも難しくなります。いったん別居をすることでお互いの関係を見つめなおすことができる場合もあれば、そうではない場合もあることに注意しましょう。

別居をすべき人

ここでは積極的に別居をすべき人について解説していきます。ここで別居をすることが好ましい場合とは、裁判離婚を進めるためというよりは、他に原因がある可能性が高いでしょう。

・家庭内暴力(DV)やモラハラ行為の被害に遭っている方
・夫婦喧嘩が絶えず平穏に一緒に生活することができない方
・その他同居によってうつ病や適応障害など精神的な問題を抱えている方

以上のようなトラブルを抱えている方は、別居によってストレス源となる相手方から物理的に距離をとることで被害を回避・緩和できる可能性があります。
ご自身の心身の安全を確保するためにも、上記トラブルを抱えているような方は別居すべき場合が多いでしょう。

離婚原因として認められるための別居の期間

知っておきたい離婚のポイント
  • 離婚原因となる別居の期間
  • 別居期間が短くても離婚できる場合

離婚原因となるには別居の期間が重要だということはわかりました。それではどのくらいの期間別居をすればいいのでしょうか?

必要となる別居期間について具体的に見ていきましょう。

一般的な別居期間

それではどれくらいの別居期間があれば「婚姻を継続し難い重大な事由」があると考えられるのでしょうか。
「婚姻を継続し難い重大な事由」は、抽象的離婚原因と呼ばれ、別居期間だけで判断されるものではありません。ただ、別居が10年以上に及んだ場合には、離婚を認めてもよいと唱える専門家もいます。
他方、7年~8年程度の別居期間では離婚を認めていない裁判例も見受けられます。
つまるところ、破綻原因については個別具体的に別居期間以外の事情も含めて検討する必要がありますので、一概に5年、10年の別居期間があれば必ず裁判離婚ができるというわけではない点には注意が必要でしょう。

別居期間が短くても離婚原因が認定される場合

別居期間が短くとも裁判離婚が認められた事案はあります。

ある事案では、別居期間が1年程度でしたが、婚姻後別居までの期間が約4カ月(同居後別居までの期間は約3カ月)であった事案で、裁判上の離婚が認められました。

この事案では、同居期間よりも別居期間の方が長く、別居後には調停や訴訟において当事者間に話し合いの機会が設けられたものの婚姻関係を維持・継続する方向で話し合いを行うことはできませんでした。
さらに、当事者双方に今後新たな夫婦関係を築いていくとの意欲や展望がなく、双方の性格、物の考え方、見方の違いを考慮すると、今後、正常な婚姻関係を築きあげていくことは困難であると判断されました(神戸地方裁判所平成15年5月30日判決)。

離婚原因が認定されるために長い別居期間が必要となる場合

離婚原因が認定されるためには、長期の別居期間が必要となる場合もあります。

ある事案では、有責配偶者からの離婚請求がなされ36年の別居期間がある夫婦の裁判離婚が認められた事案があります。
この事案では、婚姻関係が破綻した原因を作り出した配偶者の方から離婚請求がなされたものの、別居期間が相当長期であること、未成熟の子どもがいないこと、離婚により相手方配偶者を過酷な状態に置かれるなどの著しく社会正義に反する特段の事情がないことを考慮して、裁判上の離婚が認められました(最高裁判所昭和38年6月7日判決)。

別居をする際の注意点

知っておきたい離婚のポイント
  • 別居しても生活費の負担あり
  • 別居する場合の注意点

離婚前に別居する場合に注意しておくことはありますか?

別居しても夫婦であることは変わりませんので、法律上夫婦の義務は残ります。別居の内容によっては逆に裁判で不利になることもあります。

別居中の婚姻費用の分担

別居をする際の注意点として、婚姻費用の分担義務があります。
別居して生活するようになったとしても離婚までは法的に夫婦であるため、収入が多い方の配偶者は他方に対して婚姻費用を支払わなければなりません。
ただし、婚姻費用は請求した時点からしか受け取ることができないことから、別居後すみやかに請求することが重要です。

一方的に別居をすると離婚で不利になるおそれがある

正当な理由なく一方的に別居をすると、
法定離婚事由である「悪意の遺棄」に該当してしまう可能性があります。
離婚原因を作り出した側の配偶者は有責配偶者となってしまい、事後的に離婚請求することが難しくなる可能性があるため注意が必要です。

別居中に浮気・不倫をすると慰謝料を請求される

別居中に第三者と男女の関係になってしまった場合には、相手方配偶者から不貞行為を主張されてしまうおそれもあります。
別居中であったとしても、不貞行為であると判断された場合には、ご自身が有責配偶者となってしまい、事後的に離婚請求することが難しくなります。
さらに不貞行為の場合には、相手方配偶者の貞操権を侵害したとして慰謝料の支払いを請求されてしまうおそれもあります。

したがって、別居中には異性と交際するのは控えた方が無難でしょう。

まとめ

以上この記事では、離婚する前に別居すべきか否かについて、そのメリット・デメリットについて詳しく解説してきました。
どのくらいの別居期間があれば離婚できるのか、ご自身ではなかなか判断できないという場合には、是非、離婚問題について豊富な経験を有する弁護士に一度相談されることをおすすめいたします。