不貞行為を理由に会社で処分されるか?
ざっくりポイント
  • 不貞行為は原則として懲戒処分の対象とはならない
  • 例外的に不貞行為が懲戒処分の対象となる場合とは?
  • 不貞行為を理由に処分された場合の対処法とは?

目次

【Cross Talk 】不貞行為を理由に会社で処分される場合とは?

不貞行為をした場合、会社で何らかの処分を受けることはありますか?

不貞行為を理由に例外的に懲戒処分が課される場合があります。

不貞行為を理由として処分について詳しく教えてください。

不貞行為を理由として懲戒処分される場合とは?

従業員が不貞行為をしていたことが、会社に発覚した場合には、会社から何らかの処分を受けることになるのでしょうか。基本的に不貞行為は従業員のプライベートな問題であるため、会社が何らかの処分をする権限があるのか問題となります。
このコラムでは、従業員が不貞行為をした場合に、懲戒処分の対象となるのか、会社から処分を受けた場合にはどのように対処すれば良いのかについて解説します。

不貞行為を理由に会社で処分されるか?

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不倫を理由に会社で処分されることはありますか?

原則として、不倫は懲戒事由には該当しません。

会社は従業員に対して懲戒権がある

会社は従業員に対して懲戒処分を行う権限があります。

雇用契約の締結により、従業員は会社の企業秩序を遵守する義務を負っているため、会社は従業員がその義務に違反したといえる場合には、一種の制裁として懲戒処分を行うことができます。
懲戒処分の種類は、戒告・けん責・減給・出勤停止・降格・諭旨解雇(諭旨退職)・懲戒解雇などの種類があります。

ただし、実際に従業員に懲戒処分を課すためには、会社は就業規則に懲戒事由を規定していなければなりません(労働基準法第89条9号)。そして、あらかじめ就業規則に懲戒の種別及び事由を定め、従業員に周知させる手続きが必要です。この周知は、就業規則を閲覧可能な状態にするなど、実質的に懲戒処分の内容を知りうる状況が存在していれば良いとされています。

原則として不貞行為を理由に懲戒処分はできない

それでは、不貞行為は企業秩序を乱したとして懲戒処分の対象となるのでしょうか。
この点、不貞行為は業務とは無関係の私生活上の行為であるため、原則として懲戒処分の対象とはなりません。
従業員が社内不倫をしていたり、取引先の人間と不倫をしていたりする場合には、就業規則の「素行不良」等に形式的には該当するように思えます。
しかし、懲戒処分は会社が従業員に一方的に課す不利益な処分であることから、懲戒処分の対象となるのは、「企業の運営に具体的な影響を与えるようなもの」に限定されます。

そのためには、従業員の社内における地位や、職務内容、交際の態様、会社の規模・業態などに照らして、企業運営に具体的な影響を与えたかどうかを判断する必要があります。

不貞行為を理由に懲戒処分できる場合

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  • 不貞行為が懲戒処分の対象となる場合とは?

不貞行為が理由で懲戒となるのはどのような場合ですか?

不貞行為で懲戒処分される場合を紹介します。

素行不良に該当する可能性がある場合

不貞行為が素行不良に該当し、企業運営に具体的な悪影響を生じさせた場合には、懲戒処分の対象となる可能性があります。

例えば、就業時間内に公然と親密な接触を繰り返したり、職場内で性的な行為を行ったりした場合には、実際に業務に支障が出ているとして、懲戒処分の対象となる可能性があります。
また、職場内不倫の結果、部所内の人間関係に問題が生じ配置転換等を余儀なくされたような場合も、企業運営に影響が出たとして、処分の対象になる可能性があります。

会社の名誉・信用を毀損した場合

また、会社の名誉・信用を毀損した場合も懲戒処分の対象となる可能性があります。
従業員の不貞行為であっても、外部に広まってしまった場合には、会社の名誉や信用が大きく毀損され、処分につながる可能性があります。
ただし、私生活上の不貞行為が会社の名誉・信用を毀損するといえるためには、会社の役員や管理職などの高い地位にある方や、(会社の役員等でなかったとしても)公正や品位を保つ行動が求められる職業である場合、不貞行為が極めて悪質な場合などに限られるでしょう。

その他ハラスメントもあった場合

問題が不貞行為のみにとどまらず、ハラスメント問題に発展した場合にも、懲戒処分の対象となる可能性があります。
例えば、上司と部下が不貞行為を行っている場合などは、セクシャルハラスメントに該当する場合があります。上司という立場を利用して、職場内で不利益を受けるのを避けるために性的な関係を強要したという場合には、セクハラに該当する可能性があります。

不貞行為がハラスメント問題に発展した場合には、もはや私生活上の問題にとどまらず、企業秩序を乱し行為であると評価されるおそれがあるでしょう。

不貞行為を理由に処分された場合の対処法

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  • 不貞行為を理由に処分された場合の対処法

不貞行為を理由に会社で処分された場合はどうすればいいのでしょうか?

会社で処分を受けた場合の対処法を解説します。

退職勧奨には応じない

不貞行為が懲戒問題になったとしても、いきなり解雇等が言い渡される場合は少ないでしょう。
まずは、従業員と面談したうえで、退職勧奨を行うことがあります。
退職勧奨とは、会社側が会社を自主的に退職することを従業員に勧める行為です。この場合、自己都合退職となるため、会社は事後的に解雇の無効を主張されるというリスクが非常に低くなります。

しかし、会社の処分に納得できない場合、退職勧奨に応じてはいけません。従業員の自由な意思形成を阻害するような態様で行われた退職勧奨の場合には違法となります。そのため、退職には応じない意思を明確に会社に伝えることが重要です。

不当解雇を争う

不貞行為を理由に懲戒解雇され、納得できない場合には、不当解雇を主張できる可能性もあります。
懲戒処分が、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には権限濫用として無効となります(労働契約法第15条)。
不当解雇を争う場合、まずは会社に対して、解雇通知書や解雇証明書を取り寄せて、会社が解雇をした理由を確認する必要があります。

弁護士に相談する

会社からの処分を争う場合には、労働問題に詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。
不当解雇等を争う場合には、会社との交渉をし、労働審判や解雇無効確認訴訟などを提起する必要があります。会社との交渉や裁判手続きをご本人だけで対応することは、おそらく不可能でしょう。

弁護士に事件を依頼しておけば、必要な全ての手続きを任せておくことができます。
会社という巨大な組織と対峙する際、弁護士は心強い味方となってくれます。

まとめ

以上、不貞行為は原則として懲戒処分の対象とはなりませんが、例外的に、会社の名誉・信用を毀損したり、業務上の支障を生じさせたりした場合には、懲戒処分の対象となる可能性があります。
不貞行為を理由に会社から処分され、納得ができないという場合には、一度弁護士に相談されることをおすすめします。労働事件に詳しい弁護士に相談することで、不当な処分を撤回させられたり、慰謝料請求ができたりする場合もあります。