- 熟年離婚(同居期間20年以上の夫婦の離婚)の件数が増加傾向にある
- 熟年離婚の原因は性格の不一致、モラハラ、定年退職、子どもの自立など夫婦によって様々
- 熟年離婚の準備として、離婚後の住まいや老後の資金が十分にあるか等を確認しておく
【Cross Talk 】熟年離婚の原因とは?
25年連れ添った夫と性格が合わず、子どもが自立したこともあり離婚する予定です。しかし「性格が合わないというだけで離婚していいのか」という迷いもあります。
家庭裁判所に婚姻関連の調停などを申し立てる方々の中で最も多い離婚理由は「性格の不一致」です。熟年離婚の件数も増えています。決して離婚を推奨するわけではありませんが「こんな理由で」と自身を責める必要はありません。
詳しく相談させてください!
厚生労働省の調査では、同居期間20年以上の夫婦の離婚(熟年離婚)の件数が増加しています。
婚姻関連の調停などの申立て理由として最も多いものは「性格の不一致」であり、次いで妻からの申立て理由として多いものが「生活費を渡さない」です。
熟年離婚では上記の理由に加え、子どもの自立や定年退職もきっかけとなる可能性が高いです。
今回は熟年離婚の原因と準備について解説していきます。
熟年離婚とは?厚労省の統計でも増加傾向
- 熟年離婚とは一般的に20年以上連れ添った夫婦が離婚することを指す
- 同居期間20年以上の夫婦の離婚件数が増加中
熟年離婚が増加していると聞きましたが本当ですか?
厚生労働省の人口動態統計月報年計によると、同居期間20年以上の夫婦の離婚件数が増加しています。
熟年離婚とは、長年婚姻関係を継続していた夫婦が離婚することを指します。一般的には20年以上連れ添った夫婦が離婚する場合で、子どもの独立や定年退職を機に婚姻を解消するパターンが多いようです。
厚生労働省の「2018年人口動態統計月報年計(概数)の概況※1」によると、同居期間別にみた離婚件数の年次推移は以下の通りです。
1995年(平成7年)以降、同居期間20年以上の夫婦の離婚件数が増えていることが分かります。
熟年離婚の原因としては、子どもの自立や定年退職、性格の不一致、モラハラなどが挙げられます。原因が複数あり、子どもの自立・定年退職を機に離婚を決心したという場合も少なくありません。
また、2007年には法改正により年金分割が可能※2となり、2008年には第 3 号被保険者期間の年金分割制度が施行された影響も大きいと推測されます。
熟年離婚の原因とは
- 夫婦関係調整調停などの申立て理由で最も多いものは「性格が合わない」
- 熟年離婚の場合は子どもの自立や定年退職がきっかけとなることがある
長年連れ添った夫婦が熟年離婚をする原因とは何でしょうか?
子どもの自立や定年退職をきっかけに、これまで経済的な事情などで離婚できなかった方が離婚を切り出す場合が多いと予測されます。
性格が合わない
2020年度の司法統計における「婚姻関係事件数 申立ての動機別申立人別※2」によると、婚姻関係事件(夫婦関係調整調停など)の申立て理由で最も多いものは「性格が合わない」で、男女合わせて全体の43.3%を占めています。
なお、婚姻関係事件の申立総数として、夫は15500件、妻は43469件となっており妻側の申立てが3倍近くとなっています。
生活費を渡さない
妻からの申立て理由として「性格が合わない」の次に多いのが「生活費を渡さない」です。
男女雇用機会均等法が1985年に成立※4してから35年以上経過していますが、熟年夫婦の世代ではまだ経済的に自立している女性が少ないという現状があります。
夫が働きに出て世帯の収入を得ている場合、生活費を渡さないことは経済的DVになる可能性があり、離婚の原因となり得ます。
モラハラ(精神的な虐待)
モラルハラスメント(モラハラ)は精神的な嫌がらせ、虐待を指します。
具体的には、相手の価値観や人格を否定し続けることを言う、無視や舌打ち、ため息・独り言などで相手を侮辱する、謝罪・行動を強要することなどの行為が挙げられます。
例えば19時には必ず温かい料理を食卓に出すよう強要し、実行されなかったときには相手に「ダメな人間だ」といった人格否定もしくは無視をするなどの行動で、相手が傷つき精神的に追い詰められた場合はモラハラに該当する可能性があります。
熟年離婚では定年退職・子どもの自立も原因に
上記4つに加え、熟年離婚では夫の定年退職や子どもの自立も原因となることがあります。
もともと性格が合わない、モラハラなどを我慢していたものの経済的な理由で離婚できず、子どもの自立または定年退職をきっかけに離婚する場合は少なくありません。
夫が定年退職したことで1日中家にいることに苦痛を感じた妻が離婚を切り出す事例もあります。
熟年離婚の準備とは?
- 離婚後の住まいや収入を確保できるよう準備しておく
- DV・モラハラがある場合には動画・録音データやメモで証拠をとっておく
熟年離婚に向けて何を行えば良いでしょうか?
離婚後の住まいと収入は確保しておきたいですね。年金を受け取っている方は年金分割後の受給額も確認しておきましょう。
熟年離婚を検討している方は、事前に準備をしておくことが重要となります。
主に以下の4点に注意しましょう。
- (1)離婚後の住まいは決まっているか
- (2)年金を受給している方は、分割後の年金で暮らしていけるか
- (3)自身の老後資金は十分にあるか
- (4)離婚に相手が応じてくれそうか
まずは離婚後、別の住宅で暮らすために新しい住まいを見つけておく必要があります。
年金受給者の方は離婚時には年金分割の手続きを行います。年金分割とは離婚した夫婦が婚姻期間中の保険料納付額に対する厚生年金を分割してそれぞれ自分の年金とすることができる制度です。※6
年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2種類があり、合意分割では2人が合意した割合または裁判によって決まった割合で年金を分けることになります。
3号分割はサラリーマンの妻である専業主婦(夫)など国民年金第3号被保険者であった方の請求により年金を分割する方法で、分割割合は2分の1となります。
年金に加え、老後の資金(介護費用・医療費・施設に入居する場合の入居費用と月額費用)は十分にあるかを調べ、相手が離婚に合意してくれそうかを探っておきましょう。
経済的なDVやモラハラがあり相手の合意を得ることが難しいと予測される場合は、DVやモラハラの証拠を集め残しておきましょう。具体的には日記を付ける、メモを取る、録音・動画のデータを残しておくなどの方法があります。
まとめ
このページでは、熟年離婚の原因と準備について解説してきました。熟年離婚は増加傾向にあり、性格が合わない、生活費を渡さないといった理由に加えて子どもの自立や定年退職もきっかけとなる可能性が高いです。