- 連帯保証人とは?
- 離婚しても連帯保証債務は残る
- 離婚時に連帯保証人から抜けるための対処法とは?
【Cross Talk 】離婚しても連帯保証は残る?
住宅ローンの連帯保証人になっている場合、離婚した後も請求を受けるのでしょうか?
連帯保証債務は離婚したからといって自動的になくなるものではありません。
連帯保証から抜け出す方法を教えてください。
住宅ローンを組む際に、主債務者は夫と、妻は連帯保証人として契約することも多くあります。夫婦が離婚した場合には、妻の連帯保証債務はどうなるのか、また、自宅を出ていくのに住宅ローンの返済を求められることになるのでしょうか。
この記事では、離婚と連帯保証の関係や離婚時に連帯保証人の地位から抜けるための対処法などについて解説していきます。
離婚と連帯保証の関係
- 連帯保証人とは?
- 離婚しても請求される可能性あり?
離婚すれば連帯保証もなくなりますか?
離婚しても自動的に連帯保証債務が消滅することにはなりません。
連帯保証人とは?
連帯保証人とは、保証人の一種です。
「保証人」とは、借入名義人や住宅ローンを借りた主債務者が債務を支払わない場合に、主債務者の代わりに返済しなければならない人のことをいいます。
そして、「連帯」保証人の場合には、一般的な保証人に与えられている権利の一部が制限されているため、厳しい義務を課されている保証人であると言えます。
まず、連帯保証人には「催告の抗弁権」と呼ばれる権利がありません。
催告の抗弁権とは、金融機関などの債権者に対して、「まずは主債務者から債務を回収するべきである」と請求できる保証人の権利です。
連帯保証人には、一般的な保証人に認められている催告の抗弁権がありません。
そのため、主債務者よりも先に連帯保証人に請求しても、法的には何ら問題ないのです。
そして、もう1つ連帯保証人に認められていないものが「検索の抗弁権」です。
検索の抗弁権とは、「主債務者には取り立てが容易な資産を所有していので、先にそちらから取り立てるべきである」と請求できる保証人の権利です。
連帯保証人には、このような検索の抗弁権も認められていません。
連帯保証人である妻側は、夫には支払える経済力も財産もあるためそちらを取り立てて欲しいと主張することはできません。
さらに、連帯保証人には「分別の利益」もありません。
分別の利益とは、保証人の頭数で割った債務額だけを支払えば良いという権利です。連帯保証人には分別の利益もないことから、主債務者と同じ債務額を弁済する義務があります。
離婚後にも請求される可能性
主債務者である配偶者と離婚したからといって、連帯保証人の地位から自動的に解放されるわけではありません。
夫婦の一方が債務者であり、他方が連帯保証人になっている場合、離婚した後も変わらず連帯保証債務を負っていることになるのです。したがって、離婚した場合であっても、住宅ローンなどの支払請求を受ける可能性があります。
仮に、離婚の際に夫婦間で主債務者が残りの住宅ローンを返済することを約束していたとしても、そのような約束によって、銀行などの金融機関との住宅ローン契約の内容が勝手に変更されることにはならないのです。
離婚後に連帯保証人として請求を受けないようにするためには、適切な対処法をとっておく必要があります。
離婚時に連帯保証人から外れるための対処法
- 連帯保証人から外れるための対象法
- 差し替え・借り換え・売却とは?
離婚時に連帯保証人から外れるためにはどうすれば良いのでしょうか?
ここでは連帯保証人の債務から解放されるための対処法を解説していきます。
離婚した場合に、連帯保証人としての地位から外れるためには、主債務者の協力を得る必要があります。ここでは、連帯保証人の地位から抜け出すためにとることができる3つの対処法について解説していきます。
保証人の差し替え
保証人の差し替えとは、現在の連帯保証人から他の連帯保証人へと変更する手続きです。
債権者である金融機関等は、主債務者の経済状況によって返済を受けられなくなってしまうリスクを回避するために連帯保証人の設定を求めています。
そのため、配偶者が連帯保証人から外れてしまった場合には、主債務者の不払いのリスクを金融機関が引き受けることになってしまいます。
そこで、連帯保証人の地位から外れるためには、今の連帯保証人と同じかそれ以上に経済力のる人に変更する必要があります。
上記のように人的担保が難しい場合には、土地や建物などの物的担保を入れることにより、連帯保証人の地位から抜け出すことも可能です。
ただし、連帯保証人の差し替えや物的担保の差し入れによって連帯保証人でなくすかどうかは、主債務者の了承が必要です。主債務者側がこれらの方策に応じてくれなければ、いくら別の連帯保証人や不動産を用意しても、連帯保証人の地位から抜けだすことはできません。
借り換え
連帯保証人となっている借金の借り換えを行うという方法によって、連帯保証人の地位から抜け出すことができます。
主債務者である配偶者が、現在のローンを組んでいる金融機関から、別の金融機関にローンを組み直せば、現在のローンは完済されることになります。次のローンでは相手が単独で債務者となるか、他の者を連帯債務者や連帯保証人とすることで、離婚する配偶者は連帯保証人の地位から抜け出すことができます。
ただし、借金の借り換えを行うためには、新しいローンの審査に通る必要があります。現在の主債務者の経済状況では審査が通らない場合や、他の連帯保証人が用意できない場合には、借り換えを行えない可能性もあります。新しいローンの審査に落ちてしまった場合には、別の金融機関を探すか、別の方法によることになります。
現在、夫婦の収入を合わせてギリギリでローンを組んでいる場合には、夫単独の収入では借り換えに応じてもらえないおそれがあるため、注意が必要です。
売却
住宅ローンの連帯保証人となっている場合には、自宅を売却するという方法があります。
住宅ローンが残っている場合であっても、自宅を売却すること自体は可能です。住宅ローンの残高が自宅の評価額を下回っている、アンダーローンの場合には、自宅を売却して得たお金を住宅ローンの返済に充てることができます。この時点で住宅ローンは完済されることになるため、連帯保証債務も消滅します。
他方で、住宅ローンの残高が自宅の評価額を上回っている、オーバーローンの場合には、自宅の売却益でローンを完済することはできません。
このような場合には、連帯保証人の地位から抜け出すことは難しくなります。また、自宅を手放すことになるため、引き続き自宅で住み続けたいと考えていた相手方配偶者が売却に反対する可能性もあります。
自宅を売却する方法は、最終手段と言えますが、主債務者の側で残債務を返済できるほどの余裕がある場合には、有効な選択肢です。「残ったローンについては夫が全額支払う」という約束をしておくこともできますが、そのような約束は、実際支払いが滞った際に債権者に主張することができないため、要注意です。
まとめ
以上この記事では、離婚と連帯保証の関係や、離婚の際に連帯保証人から抜け出す対処法などについて解説してきました。
解説した通り、連帯保証人の地位から抜け出すためには、様々な対処法が考えられ、それぞれの方法には注意点が存在しています。
スムーズに離婚を進め、離婚後に連帯保証人として請求を受けないようにしておくためには、弁護士に対応を依頼することがおすすめです。
離婚に際してローンや連帯保証についてお悩みの方は、ぜひ当事務所の弁護士にご相談ください。