- 不倫は違法なのか?
- 不倫で慰謝料を請求できる場合は?
- 不倫は離婚の原因となる
【Cross Talk 】不倫の違法性とは?
不倫は違法なのでしょうか?
不倫は犯罪ではありませんが、民法上賠償責任が発生します。
詳しく教えてください。
著名人の不倫は大々的に報道されることがあります。不倫は犯罪行為に該当するのでしょうか?不倫を理由に慰謝料を請求したり、離婚したりできるのは、どのような場合なのでしょうか?
このコラムでは、不倫の違法性や、不倫で慰謝料を請求できる条件などについて解説していきます。
★大見出し
- 不倫には刑法上の違法はない
- 不倫には民法上の違法がある
不倫は違法なのでしょうか?
不倫は民法上は違法な行為です。
不倫とは「不貞行為」のこと
不倫とは、「人の踏み行う道からはずれること・非倫理的なこと・配偶者でない者との男女関係」を指す一般的な呼び名です。
法的に問題となる不倫は、「不貞(ふてい)行為」と呼ばれ、不倫よりも厳密な定義が存在しています。
「不貞行為」は、配偶者以外の第三者と自由な意思で性的関係を結ぶこととされています。
そのため、法律上の配偶者がいない者が、第三者と性行為をしたとしても不貞行為にはなりません。
ここでいう「配偶者」には、法律上婚姻関係にある夫または妻のほか、婚姻届を提出していないものの、実質的に夫婦として生活している内縁関係も含まれますが、交際中の彼氏が他の女性と性行為をしたとしても不貞行為にはあたりません。また、他人とキスやハグ、食事やデートをしただけでは、直ちに不貞行為にはなりません。さらに、当事者の「自由な意思」による性行為である必要があるため、第三者の意思に基づかない・合意のない性行為であった場合には、不貞行為とはなりません。
不倫は犯罪としての違法性はない
不貞行為は犯罪ではありません。
そもそも犯罪とは、刑事法上の構成要件に該当する、違法かつ有責な行為のことを指します。そのため、犯罪というためには、法令中に犯罪となる構成要件が規定されていなければなりません。
戦前には、夫のいる妻と性行為をした男性に成立する「姦通(かんつう)罪」という構成要件が定められていましたが、平等原則に反する同罪は、戦後廃止されています。
現行刑法では、配偶者以外の者との性行為自体を処罰する規定は存在していません。
なお、一方の同意を得ずに行われた性行為・わいせつ行為は、「不同意性交・わいせつ罪」などの性犯罪に問われることになります。
以上より、不貞行為は刑法上の違法性はないといえます。
不倫は不法行為上の違法性がある
不貞行為は、民法上「不法行為」が成立します。
不法行為とは、故意または過失によって他人の権利・法律上保護される利益を侵害した者が、これによって生じた損害を賠償しなければならないという責任です(民法第709条)。
婚姻することによって夫婦は相互に同居・協力・扶助義務を負い(同法752条)、夫婦は相互に貞操を守る義務を負っています。そして、不貞行為は裁判上の離婚を請求することができる事由として規定されています(同法770条1項1号)。
そのため、配偶者がいる者が、第三者と性行為を行った場合、「婚姻共同生活の平和の維持」という権利・法律上保護に値する利益が侵害されることになります。
このように、不貞行為は、相手方配偶者の私法上の権利・利益を侵害する、不法行為となるのです。
以上より、不貞行為は民法上、不法行為に該当する違法な行為であるといえます。
不倫で慰謝料を請求できる場合
- 不倫は不法行為に該当する
- 不法行為に該当すると賠償責任が発生する
不倫で慰謝料を請求できるのは、どのような場合ですか?
不倫の慰謝料請求をする条件を解説していきます。
故意・過失がある
不法行為とは、故意または過失によって他人の権利・法律上保護される利益を侵害する行為のことです。
そのため、不倫をした当事者に故意または過失がなければいけません。
不倫をした配偶者の故意・過失が問題となることはありませんが、不倫相手の側が「相手が配偶者であることを認識していない、または認識していないことに過失もない」という場合には、慰謝料を請求することはできません。
そのため、配偶者が独身であることを偽って浮気していたような場合には、不倫相手が権利侵害について「故意」を欠く可能性があります。ただし、このような場合であっても、通常有すべき注意を払っておけば性行為の相手が既婚者であることに気づけたという場合には、権利侵害に対して「過失」が認められる可能性があります。
夫婦関係が破綻していない
不法行為が成立するためには、不倫当時に夫婦関係が破綻していない必要があります。
婚姻関係が破綻していた場合には、相手方配偶者にも不貞相手に対しても慰謝料を請求できない可能性があります。
不貞行為が不法行為上の権利侵害となるのは、配偶者の「婚姻共同生活の平和の維持」という利益を侵害することになるからです。したがって、夫婦間の「婚姻共同生活」の実態が失われている場合には法律で守るべき権利や利益が既に消滅してしまっていることになります。
したがって、婚姻関係が既に破綻していた場合には、権利侵害を観念することができず、慰謝料請求権も発生しないことになるのです。
時効が成立していない
不貞行為に基づく慰謝料請求権が発生している場合であっても、時効が完済している場合には相手方に請求することができません。
不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効については、以下の期間を経過することで完成します。
・被害者が損害及び加害者を「知ったとき」から「3年」経過したとき
・不法行為のときから「20年」経過したとき
例えば不倫を原因として慰謝料を請求する場合、相手方が不倫の事実を知ったときから時効期間がスタートすることになります。もし不倫の事実を知ったときから3年が経過していれば、相手の慰謝料請求権は時効の完成によって消滅していることになります。
ただし、時効の効果は時効の完成により利益を受ける不倫当事者が「援用」しなければ発生しません。
仮に消滅時効期間が経過してしまっていたとしても、相手方がその事実を教えてくれることはないため、当事者側から「消滅時効の完成による利益を享受する」旨の通知を行う必要があります。
不倫は離婚の原因となる
- 不倫は法定離婚事由となる
- 有責配偶者からは原則離婚請求できない
不倫を理由に離婚することはできますか?
不倫は法定離婚事由となります。
不倫は離婚事由となります。
民法には裁判上の離婚が認められる原因として5つの事由が法定されており、「不貞な行為」は法定離婚事由のひとつです(民法第770条1項1号参照)。
主として離婚の原因を作り出した「有責配偶者」は、原則として離婚請求が認められません。
不倫しておきながら自由に離婚を請求できるとすると、不倫をした配偶者が、相手の意思を無視して自由に裁判離婚を成立させられてしまうという不都合が生じます。そのため裁判所も「相当長期の別居期間」があり、夫婦間に「未成熟の子が存在しない」場合、「著しく社会正義に反するといえるような特段の事情」がないといった例外的な場合でない限り、有責配偶者から離婚請求はできないとしています。
まとめ
以上、不倫は民法上違法な行為となりますが、刑法上の違法行為ではありません。不貞行為が不法行為に該当する場合には、不倫当事者に対して慰謝料を請求することができます。
また、不貞行為は法定離婚事由であるため、配偶者に裁判上の離婚を請求することができます。
配偶者に不倫をされて今後の対応について悩まれている場合には、法律の専門家である弁護士に相談されることをおすすめします。