- 別居期間は離婚調停に有利な影響を与える可能性がある
- 別居期間が長い場合には裁判上の離婚を請求できる
- 別居をする場合には、生活費や住居を確保しておくことが重要
【Cross Talk 】別居した場合、離婚調停に何らかの影響はありますか?
夫と別居していた場合、離婚調停に有利になりますか?
別居期間が長い場合には、離婚調停において事実上有利な影響を与える可能性があります。
別居と離婚調停の関係について、詳しく教えてください。
夫婦仲が悪くなった場合には、別居生活が続いた後に離婚手続きに移行することも少なくありません。
夫婦に一定の別居期間があった場合、離婚調停手続きにおいて有利な影響を与えることはあるのでしょうか。また、調停手続き中に別居をしても問題ないのでしょうか。
今回は、別居期間が離婚調停に与える影響や、別居をする際にやっておくべきことなどについて、弁護士が解説していきます。
別居と離婚調停の関係は?
- 別居期間が離婚調停に与える影響
- 離婚調停中であっても別居することはできる
別居することで離婚調停にどのような影響を与えますか?
別居期間が長い場合には、離婚調停においても事実上有利な影響を与えることがあります。
別居期間は離婚調停に影響する
夫婦が離婚する場合には、当事者間で話し合って離婚する「協議離婚」や、家庭裁判所の調停委員を介して話し合いを行う「調停離婚」があります。これらの手続きは、双方が離婚条件に納得して合意が成立しなければ離婚することができません。
これに対して「裁判離婚」の場合には、夫または妻の意思にかかわらず、裁判所が判決によって離婚の成否を判断する手続きです。
そして、離婚調停が話し合いである以上、別居したことにより直ちに離婚しやすくなるというわけではありません。
しかし、後述のように別居が法定離婚事由に該当する場合には、後の裁判で離婚請求が認められる可能性があるため、調停の段階でもそのことを意識して話し合いに臨むことになるでしょう。
このように、別居期間が長期に及ぶ場合には、離婚調停手続きにも事実上の影響力を与えることになります。
離婚調停中に別居することも可能
離婚調停中であっても別居することは可能です。
民法には、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」として同居・協力扶助義務が規定されています(民法第752条参照)。そのため、別居してしまうと夫婦の上記義務に違反して、調停委員の印象が悪くなるのではないか、と不安に思う方もいるかもしれません。
この点について、夫婦それぞれが別居することに納得している場合やある程度やむを得ない場合であれば、正当な理由がある別居ということになり、何らの権利侵害もないため、同居義務に違反することにはなりません。基本的には別居が原因で調停委員の印象が悪くなったり、不利になったりすることはありません。
なお、調停委員の印象が悪くなる別居の具体例としてあげられるのは、以下のように何らかの違法・不当な行為がある場合です。
- 悪意の遺棄に該当している場合
- 別居期間中に不倫をしている場合
- 子どもの連れ去りをしている場合 など
別居期間が長い場合には法定離婚事由になる
裁判離婚をするためには、民法に定められている特定の離婚原因がなければなりません。このように裁判離婚を請求することができる離婚原因のことを「法定離婚事由」といいます。
民法第770条1項には、以下の5種類の法定離婚事由が規定されています。
- 配偶者に不貞行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
婚姻関係にある夫婦は互いに同居・協力・扶助義務を負っています。そのため、例えば、特段の事情もなく家事・育児を放棄したり、相手方配偶者の生活費を一切負担しなくなった場合には、「悪意の遺棄」に該当する可能性があります。
また、別居期間が長期に渡り、婚姻関係が破綻している場合には、法定離婚事由の「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたると判断され、離婚が認められる場合があります。このように、一般的に婚姻関係を継続することを期待できないほど深刻に破綻した場合には、裁判離婚を請求することができるのです。
したがって、夫婦の別居期間が相当長期(3~5年以上)に及ぶ場合には、夫婦関係の実体が消失したとして婚姻の破綻が認められる可能性があります。
別居する場合にやっておくべきこと
- 別居する場合にやっておくべきこととは?
- 別居する際には生活費と住まいの確保が非常に重要
別居しようとする場合には、何をしておくべきでしょうか。
別居する際に、婚姻費用の請求や住居を確保しておくことは非常に重要となります。
婚姻費用の請求
別居をしようとする場合には、別居後すぐに婚姻費用を受け取れるように準備しておく必要があります。
「婚姻費用」とは、夫婦と未成熟の子どもとの家庭的共同生活を維持していくために必要となる費用のことを指します。
要するに婚姻費用とは、夫婦が生活していくために必要な費用であり、具体的には以下のようなものが含まれます。
- 衣食住の費用
- 出産費用
- 医療費
- 未成熟子の養育費
- 教育費
- 相当の交通費 など
婚姻関係にある夫婦は互いに扶養義務を負っており、夫婦のうち収入が多い方は自分と同程度の生活水準を保障する義務があります。したがって、一般的には収入の高い方から低い方に対して不足する月々の生活費が支払われることになります。
ただし、婚姻費用は実務上、相手方配偶者に請求した時点からしか受け取れませんし、支払いを拒まれた場合には時間をかけて裁判手続きを行う必要もあります。別居中の生活に悩まないためには、事前に婚姻費用請求の準備を始め、別居がはじまってからすぐに請求できるように準備をしておきましょう。
収入・住居の確保
別居を開始する場合には、生活費を賄える収入源や転居先の住居を確保しておく必要があります。
転居先の住居の準備が整っていない状態で別居を開始してしますと、生活が不安定になり、精神的にも大きな負担となるおそれがあります。
そのため、別居を開始する前に、事前に転居先となる住居を見つけておきましょう。賃貸不動産を借りる場合には、収入の条件や子どもの有無などによって、物件探しが難航する可能性もあります。自身の通勤や子どもの通学・通園に最適な環境であるかどうかも検討しながら住まいを確保する必要があります。
もし、賃貸マンションを契約することが難しいという場合には、実家に帰省することを検討すべきでしょう。両親に事情を説明したうえで、住まいや子育てのサポートを受けながら離婚手続きを進めていくという方も少なくありません。
住民票を異動させる
別居期間が長期に及ぶことが予想される場合には、住民票を異動させた方が良いかもしれません。
住民票が、実際に居住している場所と乖離している場合、役所などからの通知を受領できなかったり、児童手当の受給者変更や子どもの転校手続きがスムーズにできなかったりなどというデメリットも想定できます。
したがって、別居先が今後の生活の拠点にしようと考えている場合には、住民票を異動させておく方が、上記のような不都合を回避することが適切でしょう。
まとめ
以上、別居期間が長期間に及ぶ場合には、事実上離婚調停が有利になる可能性があります。また、離婚調停中に別居をしたとしても、離婚調停において不利に評価されることは一般的にはありません。
離婚調停に先立ち、または調停手続き中に別居をする場合には、相手に婚姻費用(生活費)を請求し、転居先となる住居を確保しておくことがポイントです。
離婚調停手続きや別居をスムーズに進めたいという場合には、離婚問題に強い弁護士に相談するようにしてください。当事務所には、離婚トラブルの解決実績が豊富な弁護士が在籍しておりますので、お気軽にお問合せください。