同意のない別居で同居義務違反になる事例・ならない事例、不利にならないためのポイントを解説いたします。
ざっくりポイント
  • 夫婦には同居の義務があり、「一人になりたい」といった身勝手な理由で家を出た際には同居義務違反となる
  • 配偶者の暴力・虐待がある、双方が合意して別居しているなどの事例では、同居義務違反にならない
  • 離婚前に別居することを考えている方は、配偶者の同意を得ること

目次

【Cross Talk 】夫婦喧嘩で家を出てきました。このまま別居するつもりですが、大丈夫ですか?

昨日夫婦喧嘩になり、家を出てきました。普段夫婦仲は悪くないですが、許せません。このまま別居したいのですが、大丈夫でしょうか?

同意の無い別居は、夫婦の同居義務違反になる可能性があります。夫婦関係が破綻していない状態で正当な理由がなく勝手に家を出ると、同居義務違反とみなされる可能性が高いです。

詳しく教えてください!

同意の無い別居で同居義務違反になる事例とならない事例、別居で不利にならないためのポイントを解説していきます。

正当な理由がなく、相手の同意を得ずに勝手に家を出て行くもしくは相手を家に入れないなどして同居義務を怠った場合、離婚訴訟を起こされるリスクが生じます。
夫婦には民法上同居義務があります。配偶者が暴力をふるう、子どもを虐待するといった際には同意を得ずに別居をすることは当然問題ありませんが、そのような正当な理由がなく同居をしない場合には同居義務違反にあたる可能性があります。
今回は夫婦の同居義務について、同居義務違反になる事例・ならない事例、離婚前の同居で不利にならないためのポイントを解説していきます。

夫婦の同居義務とは?同居義務違反になる事例・ならない事例

知っておきたい離婚のポイント
  • 民法で夫婦には「同居・協力・扶助」の義務が規定されている
  • 身勝手な理由で勝手に家を出て行くなどの行為は同居義務違反にあたるが、お互いが
  • 合意している、配偶者が暴力をふるうなどの場合は同居義務違反にならない

夫婦で話し合い、お互い別居した方が上手くいくということになり別居しています。同居義務違反になりますか?

いいえ。双方が合意して別居している場合は義務違反にはあたりません。

には同居の義務がある

民法※で夫婦には「同居・協力・扶助」の義務が明記されています。

民法第752条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

協力とは家事や仕事を分担する、助け合うことなどを指します。「扶助」とは、金銭的な助け合いを意味し、例えば夫婦のうち一方が働き、もう一方が家事を担っている場合は働いている方が生活費を渡す義務があります。
同居に関しては、夫婦がお互い合意している場合は同居義務違反には該当しません。
具体的に同居義務違反になる事例とならない事例を見ていきましょう。

同居義務違反になる事例・ならない事例

夫婦の同居義務違反になる事例は以下の通りです。

「一人になりたい」といった身勝手な理由で勝手に家を出て行く
正当な理由もないのに、配偶者を家に入れない、追い出す
愛人と一緒に住むために家を出て行くなど

「独身時代に戻りたい」「一人になりたい」などの理由で、配偶者の許可を得ずに勝手に家を出て行く行為や、正当な理由がないにもかかわらず配偶者を家に入れないなどの事例は同居義務違反とみなされるでしょう。

愛人と一緒に住むために家を出て行く場合には、同居義務違反だけではなく不貞行為が問題となる可能性が高いです。
しかし、以下のような場合には同居義務違反とはみなされないでしょう。

配偶者が暴力をふるう、モラルハラスメントをするなどの理由で家を出た
子どもが配偶者に虐待されている
お互いが合意したうえで別居している
単身赴任、介護などの事情があり別居している

配偶者が暴力をふるう、モラルハラスメント(精神的な嫌がらせ)をすることで心身に危険が及ぶ際には、別居しても同居義務違反にはなりませんので、シェルターなどに避難することをおすすめします。
子どもが虐待されているときも同様ですので、早めに別の場所に避難しましょう。

夫婦であっても「別居している方が上手くいく」という場合も想定されます。双方が合意していれば同居義務違反には該当しません。
単身赴任や介護などの事情があり、やむを得ず別居している場合も同様です。

悪意の遺棄として離婚訴訟を起こされるリスクも

同居義務違反に該当する場合、「悪意の遺棄」にあたるとして離婚訴訟を起こされるリスクが生じます。

民法第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

「悪意の遺棄」とは、配偶者が困ると分かっていながら夫婦の同居・協力・扶助の義務を怠ることです。
上記のようにDV・虐待など正当な理由があれば悪意の遺棄とはみなされませんが、自分勝手な都合で同居を拒否すると悪意の遺棄と認められてしまう可能性があります。

なお、長期間の別居の場合には「その他婚姻を継続し難い重大な事由」とみなされることが多いです。

離婚前の別居で不利にならないためのポイント

知っておきたい離婚のポイント
  • 離婚前に別居する際には、配偶者の同意を得ること
  • どうしても別居したい方は弁護士に相談を

もう配偶者の顔も見たくありません。暴力・虐待は無く別居には反対されていますが、別居できますか?

暴力などがなく、同意が得られない状況で別居するのは一定のリスクがあるので注意しましょう。

家を出て行く前に、配偶者の同意を得る

例えば「性格が合わず配偶者の顔を見たくないので、1日でも早く別居したい」という方は、2人で話し合い配偶者の合意を得てから別居するように心がけましょう。

性格の不一致は離婚を希望する理由として最も多いものですが、それだけでは同居義務を果たさない正当な理由として認められる可能性は低いといえます。ただし、既に夫婦関係が破綻している場合は、同居義務違反とみなされないこともあります。
これらは様々な事情を衡量して判断されることになるため、不安な方は弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

どうしても別居したい方は弁護士に相談する

「配偶者の同意を得られないが、どうしても別居したい」という方は、弁護士に相談してみることをおすすめします。

夫婦の問題は状況によってケースバイケースですので、専門家から見ると「やむを得ない理由なので別居しても同居義務違反にはあたらない」と判断される可能性があります。

子どもがいる場合は子どもを最優先に

子どもがいる場合には、子どもが安心・安全な環境にいられることを最優先に考えましょう。
同意のない別居は、子どもの親権・養育費・面会交流について話し合いができないまま別々に暮らす事例が多いですが、基本的には話し合いをしてから別居することが望ましく、後のトラブルを回避できる可能性も高くなります。
また別居で自身と子どもが引っ越す場合、学区が変わり子どもの幼稚園や学校が変わる可能性があります。
両親が別居したことで、子どもがナーバスになってしまうこともあります。転園・転校などでさらに子どもに悪影響がないか、慎重に検討しましょう。

まとめ

同意の無い別居で夫婦の同居義務違反に該当する事例、しない事例、離婚前の別居で不利にならないためのポイントを解説してきました。
「配偶者の合意が得られず、暴力や虐待はないがどうしても別居したい」という方は弁護士に相談することをおすすめします。夫婦間の状況や問題はケースバイケースですので、法律の専門家に相談することで問題解決につながる可能性があります。