義理の両親との同居が原因で離婚することができるのか?
ざっくりポイント
  • 義理の両親との同居を原因とする離婚事件の数は?
  • 義理の両親と同居する義務は?
  • 義理の両親との同居を原因に離婚することはできるのか?

目次

【Cross Talk 】義理の両親との同居を原因として離婚したい

同居している義理の両親との折り合いが悪く、夫婦関係が悪化してしまいました。

義理の両親との同居を原因として離婚できる場合があります。

どのような場合でしょうか?詳しく教えてください。

義理の両親との同居が原因で離婚することはできるのか?

同居している義理の両親との折り合い悪く、離婚を考えている方もいらっしゃると思います。そもそも義理の両親と同居する法的な義務はあるのでしょうか。また、義理の両親との同居が原因で離婚を申立てることができるのでしょうか。この記事ではこのような疑問点について解説していきます。

義理の両親との同居が原因で離婚する方は多い?

知っておきたい離婚のポイント
  • 家族親族との折り合いが悪いことを理由に離婚を申立てた事件もある
  • 同居で親族と不和があるとストレスが多大になる

夫の両親との不和を理由に離婚を考えるのは、いけないことでしょうか?

そんなことはありません。親族との不和を理由に離婚が申立てられている事件は相当数あります。

配偶者の親との同居が原因で離婚を考えるようになる方は決して少なくありません。
2021年に最高裁判所事務総局から公表されている司法統計は、裁判所に離婚を申立てた方の理由を公開しています。
その中には、「家族親族との折り合いが悪い」という理由で離婚の申立てを行った件数は、男性側では1964件、女性側では2647件あります(「令和3年 司法統計年報(家事編) 第19表 婚姻関係事件数―申立ての動機別申立人別」参照)。
家庭裁判所に申立てられた全ての離婚事件のうち約1割程度が、家族や親族との不和を理由に離婚をしようとしていることが分かります。

もちろんこれらの事件の中には、家族や親族と同居していない事案も含まれています。配偶者の両親や親族と折り合いが悪かったとしても、別居して生活している場合には、顔を合わせる頻度も低下することから、何とか我慢して暮らしている方も多いのではないでしょうか。

しかし、配偶者の親と同居して生活していて、家族との折り合いが悪い場合には、日常生活の中で相当大きなストレスが蓄積されていくことになります。中にはストレスに耐えかねて精神的に不調をきたしてしまう場合もあります。

このように義理の両親との不和・折り合いが悪いことを理由に離婚をすることはできるのでしょうか。
そもそも、義理の両親との同居を我慢しなければならないのでしょうか。

義理の両親と同居する義務はない

知っておきたい離婚のポイント
  • 義理の両親と同居する義務はない
  • 義理の両親の介護をする義務もない

義理の両親と同居する義務があるのでしょうか?

義理の両親と同居する義務はありません。

民法第752条には「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と規定しています。そのため、婚姻した男女は同居・協力・扶助の3つの義務を負っていると考えられています。このうち同居義務は、夫婦同姓の原則や貞操義務などと並んで夫婦の義務として代表的なものです。

夫婦の義務とされているのは、「配偶者との」同居義務であって、配偶者の両親との同居義務ではありません。
したがって、義理の両親と同居して生活する義務はありません。

「親の面倒をみるのは子どもの務め」といって同居を強要してくる場合もありますが、扶養義務を負っているのは原則として自分の直系血族と兄弟姉妹です(民法第877条1項)。したがって、妻に対して義理の親の介護を強制することもできません。どれほど介護が必要な親を抱えていようとも、ご本人の親との同居や介護を、自分の配偶者に強要することはできません。

義理の両親と同居する場合、夫が平日に会社勤めをしている場合には、夫の親の日常生活は妻が面倒を見なければならないという家庭は多いのではないでしょうか。
しかし、親の世話や介護を全て配偶者に丸投げしてしまうと、妻の負担は過大なものとなり、逃げ場や自由な時間も無くなってしまうことがあります。妻が仕事をしている場合、家族の世話だけに時間を割くこともできません。

以上の通り、義理の両親と同居するか否かは夫婦の問題であるため、妻の意向を抜きにして決めることはできません。夫婦でしっかりと話し合ったうえで決める必要があるでしょう。

義理の両親との同居を原因に離婚できるか?

知っておきたい離婚のポイント
  • 義理の両親との同居を理由に離婚ができるか?
  • 調停離婚・裁判離婚の違いについて

義理の両親との同居を理由に離婚することはできますか?

調停離婚と裁判離婚とで手続きが異なります。

協議離婚であれば可能性がある

民法には「夫婦は、その協議で、離婚することができる」と規定されています(民法第763条)。
これは夫婦が話し合いのもと合意によって離婚を成立させるため「協議離婚」と言われています。
夫婦が話し合いを経て離婚届を市区町村役場に提出することで完了するため,もっとも簡便で一般的な離婚の形態です。

協議離婚では、夫婦が話し合いで合意することができれば、どのような理由であっても離婚することができます。そのため、義理の両親との同居が原因で離婚することも可能です。

家庭裁判所に調停を申立てて行う「調停離婚」の場合でも、基本的には夫婦の話し合いによって離婚するか否かを決めることになるため、義理の両親との同居が原因であったとしても相手方が応じてくれれば離婚することができます。

裁判離婚の場合には法定離婚事由が必要

話し合いでは離婚することができない場合、最終的には裁判を提起することによって離婚することになります。
ただし、裁判離婚の場合には、離婚を請求することができる原因が厳格に定められています。したがって、これらの離婚事由に該当しないかぎり離婚訴訟を提起することはできません。

このような法定離婚事由として規定されているのは、以下の5つです。

  • 配偶者に不貞な行為があったとき
  • 配偶者から悪意で遺棄されたとき
  • 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
  • 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

義理の両親との同居について直接定めた離婚事由は存在していないため、離婚訴訟を提起する場合には上記いずれかの離婚原因に該当していると主張していく必要があります。
実際の訴訟では、義理の両親との同居により、夫婦の生活が破綻するに至った事実を主張立証し、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」にあたると判断される必要があります。

弁護士に相談・依頼する

ご自身の事案で離婚できるかどうか分からないという方は、一度弁護士にご相談されることをおすすめします。
義理の両親との同居を原因に離婚したいという場合は離婚事件の経験が豊富な弁護士に相談・依頼して、弁護士からサポートやアドバイスを受けながら進めていくことが大切です。
法律のプロである弁護士に相談すれば、法定離婚事由に該当しているか否か、有利な証拠やその集め方などについて適切にアドバイスを受けることができます。

まとめ

以上この記事では、義理の両親との同居が原因で離婚をする方法などについて解説してきました。
実務上、同居だけを理由に離婚することは難しい可能性がありますが、事案によっては法定離婚事由に該当しているといえる場合もあります。
義理の両親との同居が原因で離婚しようか悩まれている方は、ぜひ一度当事務所の弁護士にご相談ください。