- 不貞行為とは
- 同性間不倫も不貞行為となるのか
- 離婚・慰謝料請求の可否
【Cross Talk 】同性間の不倫で離婚・慰謝料請求はできますか?
夫について相談があります。結婚するまでは隠していたそうなのですが、実は同性愛者で、結婚をしてからパートナーを見つけて交際をしていることがわかりました。同性間での不倫でも離婚できるのでしょうか。
離婚できる可能性や、慰謝料を請求できる可能性はありますので、具体的な経緯について教えていただけますか?
はい、相談に乗ってください。
協議離婚・離婚調停で離婚に合意できない場合には、離婚訴訟を起こして離婚をするのですが、離婚訴訟を起こすためには民法770条1項各号所定の離婚原因が必要です。
民法770条1項1号は不貞行為を規定していますが、同性間の不倫も不貞行為にあたるのでしょうか。このページでは、同性間の不倫を原因に離婚はできるのか、慰謝料請求はできるのかについてお伝えいたします。
不倫・不貞行為とは
- 離婚裁判を起こすには離婚原因が必要
- 離婚原因となる不貞行為とは
そもそも不貞行為とはどのようなものなのでしょうか?
離婚裁判をするのに必要な離婚原因の一つです。
離婚における不倫・不貞行為とはどのようなものかを確認しましょう。
不倫・不貞行為とは
不倫・不貞行為という言葉の意味を確認しましょう。
不倫とは、婚姻をしている人が、配偶者以外の人と肉体関係を持つことを指す一般的な用語です。
不貞行為とは、「配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」をいい(最高裁判所昭和48年11月15日判決)、離婚原因として民法770条1項1号に規定されている法律用語です。
つまり、同じ行為について、不倫は一般的な用語で、不貞行為は法律用語となります。
離婚原因となる
不倫・不貞行為をした場合には、民法770条1項1号の離婚原因になります。
離婚をするにあたって、離婚協議・離婚調停で離婚に合意できなかった場合には、離婚裁判を起こして離婚をすることになります。
この離婚裁判を起こすにあたって、民法770条1項各号の離婚原因が必要となります。
上述した通り1号は不貞行為を規定していますので、不貞行為がある場合には離婚原因になります。
損害賠償義務が発生する
併せて、不倫・不貞行為をしたような場合、配偶者は精神的苦痛を被ります。
そのため、離婚をする・しないに関わらず、損害賠償義務が発生します。
法律上は、民法709条の不法行為に基づく損害賠償請求として行うもので、配偶者と不倫相手が共同不法行為者として請求を受けることになります。
同性間の不倫で離婚・慰謝料請求は可能か
- 同性間の不倫も不貞行為にあたり離婚裁判を起こすことは可能
- 同性間の不倫でも慰謝料請求は可能
同性間で不倫をした場合でも不貞行為にあたりますか?また、慰謝料請求は可能ですか?
最近の裁判例で不貞行為にあたるとされたものがあります。また、慰謝料請求は可能です。
同性間の不倫で離婚・慰謝料請求は可能なのでしょうか。
不貞行為として離婚の請求は可能か
まず、協議離婚・調停離婚は当事者で合意ができれば離婚が可能なので、同性間の不倫を原因として離婚をすることは可能です。
離婚協議・離婚調停で離婚することに合意できない場合には、同性間の不倫が民法上の不貞行為にあたるかが問題となります。
これに関連して、離婚裁判それ自体ではないものの、同性間の不倫が不貞行為にあたるか否かが争われた裁判があります(東京地方裁判所判決令和3年2月16日)。
この裁判では、妻が女性と不貞行為を行ったことを理由に、夫がその相手方である女性に対して損害賠償請求を行い、相手の女性は不貞行為とは異性との間の性的行為に限ると主張したところ、東京地方裁判所は同性間での性的行為も不貞行為にあたると判断し、離婚を認めました。なお、本件は下級審での判断なので、高等裁判所・最高裁判所では認めないという結論が出る可能性はあります。
このように、離婚裁判それ自体ではないものの、同性間での性的行為が不貞行為に当たるとの判断が出ていることからすると、離婚裁判の場においても同様の判断がなされる可能性はあると考えられます。
また、もし、不貞行為にあたらないと判断された場合でも、同性間の不倫によって夫婦関係が破綻してしまっているような場合には、民法770条1項5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当すれば離婚することが可能です。
慰謝料請求は可能か
不倫をされた場合の慰謝料は、上述したように配偶者が受けた精神的苦痛に対して、民法709条の不法行為損害賠償請求として認められるものです。
そして、不倫が同性間であったとしても精神的苦痛は生じ得ますので、精神的苦痛が生じていれば同性間での不倫であったとしても慰謝料の請求は可能となり、前述の裁判例などでも請求が認められています。
証拠収集ついては異性との不倫・不貞行為と変わらない
異性との不倫・不貞行為を原因に離婚・慰謝料請求をする場合には、不貞行為を行ったこと、不貞行為の内容(頻度・期間など)を証明する必要があります。
これについては相手が同性であっても変わりません。
まとめ
このページでは、同性間の不倫で離婚・慰謝料請求が可能かについてお伝えしました。
最近の東京地方裁判所の裁判例で、同性間の不倫を不貞行為と認定するものがあるほか、同性間の不倫が他の離婚原因に該当する場合には離婚は可能であると考えられます。
慰謝料請求も可能ですので、離婚・慰謝料の請求をする場合には、まず弁護士に相談するようにしましょう。