DVをでっち上げられたときに確認すべきこと、対処法を解説いたします。
ざっくりポイント
  • でっちあげDVが認定されると親権をとられる、慰謝料を請求されるなど不利な状況で離婚する可能性が高い
  • DVをでっち上げられたときには配偶者の主張と証拠の有無を確認、早めに対処を
  • まずは弁護士と相談し、自身に不利な離婚とならないよう離婚届の不受理申出をする

目次

【Cross Talk 】DVをでっち上げられてしまったときにはどうすれば良い?

仕事から帰宅すると妻が家におらず、電話が来て精神的DV(モラハラ)を主張されました。どうすれば良いのでしょうか?

仕事から帰宅すると妻が家におらず、電話が来て精神的DV(モラハラ)を主張されました。どうすれば良いのでしょうか?

でっち上げDVとは?認定されるとどうなる?対処法を解説していきます。

DVは2001年に施行された「DV防止法」により広く認知されるようになりました。近年はコロナ禍の在宅時間の増加による影響でDVの相談件数が増加しています。
DVの認知度が上がったことで架空のDVを主張し、慰謝料を請求し離婚を迫る事例も増えています。でっちあげDVが認定されると慰謝料の支払いなど不利な状況で離婚せざるを得なくなってしまいます。
本記事ではでっちあげDVとは何か、主張された際に確認すべきこと、対処法を解説していきます。

離婚で不利となるでっち上げDVとは?証拠がないのに認定された場合も

知っておきたい離婚のポイント
  • 物的証拠がないのにDVが認定される可能性もある。早めに対処を
  • DVをでっち上げられたときには配偶者の主張内容、証拠の有無を確認

そもそもでっち上げDVとは何でしょうか?

ありもしないDVをでっち上げる、一般的には「夫婦喧嘩」程度である言い争いを録音しモラハラと主張する事例などをでっち上げDVと呼びます。

でっち上げDVとは?証拠がないのにDVが認定された判例も

DV(Domestic Violence)とは、配偶者・恋人など親密な関係にある(またはあった)人からの暴力を意味します。

2001年に施行※1された「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)」第1条によると、「配偶者からの身体に対する暴力」に加え「又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動」がDVに該当すると記載されています。

DVには暴力をふるう、モラルハラスメント(精神的な虐待)、経済的な自由を奪って相手を追いつめる経済的DVがあります。

実際にDVの件数は増加しており、内閣府男女共同参画局が全国296カ所にある配偶者暴力相談支援センターに寄せられた相談件数の推移は以下の通りです。

参照:内閣府男女共同参画局 配偶者暴力相談支援センターにおける相談件数等(令和2年度分)

2020年度はコロナ禍の在宅時間の増加をきっかけに相談件数は1.5倍となっています。2021年度は2020年の18万2,188件と比較すると17万7,110件(暫定値)と減少していますが、引き続き高水準となっています。

DVが広く認知されるようになり件数が増加したことを利用して、DVをでっちあげることを「でっちあげDV」「冤罪DV」などと呼びます。一般的には「夫婦喧嘩」レベルのやり取りを録音し、モラハラと主張する場合も存在します。

客観的な証拠(物証)がなく妻の主張のみで、夫による妻へのDVが認められた場合もあり※3、DVをでっちあげられた際には早めの対処が必要となります。

DVをでっち上げられたときに心がけること

DVは民法709条の不法行為※4に該当し、離婚原因としても認められます。
まずは配偶者がどのようなDVを主張しているのか、内容に心当たりはあるか、証拠の有無を確認し冷静に対処しましょう。

話し合いの前に弁護士に相談し、第三者として同席または、代理人とすることで冷静な話し合いができることがあります。また、相手が持っている証拠に矛盾がある場合には、弁護士と一緒に主張や証拠をよく見ることでその矛盾を主張し、でっち上げられたと立証できる場合があります。そうなれば、DVは無かったことが証明できます。よって弁護士には早めに相談することをおすすめします。

もし、相手方からDVをでっちあげられたのに何の対策もしないと、事態がより深刻化する可能性があります。

具体的には、配偶者が警察や配偶者暴力相談支援センターなどに相談し、市区町村役場に申し出て事実確認をした結果、保護命令を申立てられると、相手との電話・面会禁止、退去、子ども・親族への接近禁止命令が出されることがあります。※5

さらに離婚の調停・訴訟でDVが認められると親権がとりやすくなる、慰謝料を請求される、離婚事由になり離婚ができるなど配偶者にとって有利な状況での離婚となります。

このような事態に陥ってしまうことを防ぐためにも、早めに対応しましょう。

でっち上げDVへの対処法

知っておきたい離婚のポイント
  • 早めに弁護士に相談し、離婚届の不受理申出をする
  • 弁護士を通して配偶者と話し合い、話がまとまらない場合には調停または訴訟に

でっち上げDVにはどう対処したら良いでしょうか?

まずは早めに弁護士に相談することが重要です。あとは配偶者が勝手に離婚届を出す可能性がありますので、離婚届の不受理申出をしておきましょう。

弁護士に相談

多くの場合、配偶者は家から出ていき配偶者の弁護士から連絡がくるもしくは離婚調停の呼出状が届き「DVがあった」「DVにより離婚したい」旨の文書と通知が来ます。既に配偶者と別居しているときに文書が届くこともあります。

DVによる離婚と認定されると、「DV加害者」の汚名を着せられ自身にとって不利な離婚となってしまいます。

まずは弁護士に相談し、今後の対策について話し合いましょう。
今後配偶者と争っていく場合には、こちらの主張を裏付ける証拠も必要になります。どのような証拠を収集すべきか、などについても弁護士と相談するとよいでしょう。
夫婦間に子どもがおり、連れていかれた際にはより早めに対処をする必要があります。

離婚届の不受理申出をする

配偶者がDVを離婚理由として、勝手に離婚届を提出してしまう可能性があります。

市町村役場に離婚届の「不受理申出」※6を行うことで離婚届は受理されず、不利な状況での離婚を回避できます。

いずれ離婚をする場合でも、不利な状態での離婚が成立してしまう可能性がありますので離婚届の不受理申出は行っておきましょう。

弁護士と相談しつつ、配偶者の主張を聞き、証拠を確認する

弁護士を通して配偶者と話し合い、「主張に矛盾がないか」「客観的な証拠はあるか」などを確認します。

配偶者が自身でつけた傷やあざの写真を証拠にする、子どもを利用してDVを主張する、他に好きな人が出来たからDVによる離婚を訴えるなどの事例もあります。
冷静に対処することが難しい場面も出てくるでしょう。しかし、相手の主張には冷静に対応することが必要です。感情的に反論したり、怒鳴ったりしてしまうと、「感情的で乱暴な人だ」「家庭内で暴力をふるっていてもおかしくない」という印象を与えかねません。

一度冷静になって、弁護士と相談しながら証言や証拠の中で不自然な箇所や矛盾する部分はないか、DVが無かったことを証明できる方法はあるか、検討していきましょう。配偶者の主張の矛盾点を探し出し、配偶者の主張とは整合しない事実を証明することができれば、でっち上げDVだと判断される可能性も高まります。

DVが疑われている段階では、離婚に合意してはいけません。話し合いがまとまらないときには調停・訴訟に発展する流れとなります。

調停または訴訟

協議で話がまとまらない場合には調停で調停委員を通して話し合うことになります。
配偶者が訴訟を起こす可能性もありますので、弁護士と話し合いながら対処しましょう。
調停や訴訟では、証拠の有無や内容が一層重要になってきます。そのため、弁護士と相談しながら、こちらの主張が真実であると示せる証拠や、相手のDVがでっち上げ(嘘)であるという証拠、あるいは相手の証拠に矛盾があることなどを指摘していきましょう。

DVのでっち上げは刑法230条「名誉毀損」※7の「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者」にあたる可能性がありますが、名誉毀損罪は公衆の面前で特定できるように名誉を陥れるような行為をしたときに成立します。

例えばインターネットやSNSへの書き込み、職場への嫌がらせの電話などが該当する可能性があります。
上記のような行為がない場合には、民法における第709条の不法行為による損害賠償、第710条財産以外の損害の賠償を請求できます。

まとめ

でっち上げDVとは何か、確認すべきことと対処法を解説しました。DVが認められると慰謝料を支払う、親権をとられるなどの状況に陥ってしまいます。一方の主張のみでDVが認定された場合もありますので、早めに離婚問題に強い弁護士に相談し解決を目指しましょう。