- 風俗の利用は不貞行為に該当しない可能性が高い
- 風俗の利用を理由に離婚や慰謝料を請求できる場合がある
- 風俗の利用を理由に離婚・慰謝料を請求するためのポイントとは?
【Cross Talk 】夫が風俗に通っている場合、不貞行為に該当しますか?
夫が風俗店に通っているようなのですが、これは不貞行為に該当しますか?
配偶者が風俗店に通っている場合、事案によっては不貞行為等と評価される可能性があります。
風俗と不貞行為の関係について、詳しく教えてください。
夫が性風俗店に通っているという場合、そのことだけで不貞行為となるのでしょうか。
妻からすれば、風俗嬢から性的なサービスを受けている時点で、アウトだと感じる方も多いでしょう。しかし、風俗店の利用を理由に不貞行為を主張できる場合には、一定の条件があります。
この記事では、風俗店の利用が不貞行為に該当する場合や、風俗店の利用を理由に慰謝料や離婚を請求できる場合などについて、解説していきます。
風俗の利用は不貞行為に該当する?
- 風俗の利用は不貞行為とならない可能性がある
- 風俗の利用を理由に慰謝料や離婚を請求できる可能性がある
夫が風俗通いをしていたことは、不貞行為に該当するのでしょうか。
風俗店で性行為に及んでいた場合には、不貞行為に該当する可能性があります。
風俗に通っていても不貞行為にはならない可能性あり
結婚している方が、デリヘル店やソープランドなどの性風俗店を利用することは、不貞行為に該当しないのでしょうか。
そもそも、不貞行為とは、「配偶者のいる方が、自由な意思で配偶者以外の第三者と性的な関係を持つこと」を指します。そのため、風俗店に通っていたとしても、性的な関係に至っていない場合には、そもそも「不貞行為」に該当しないことになります。
他方、性風俗店の風俗嬢と性行為や性交類似行為(手淫や口淫など)があった場合には、不貞行為に該当する可能性があります。
ただし、近年の裁判所の判断として、風俗店ではなく一般人の異性と性的関係を持った場合と比べて、性風俗店で性的関係を持った場合を、軽く評価する傾向があります。性的な関係のある風俗店であっても、1~2回程度の利用であれば、「不貞行為には該当しない」と評価される可能性もあります。
以上より、具体的な風俗店の利用状況によっては、不貞行為にはあたらない可能性があります。
風俗を理由に慰謝料を請求できる場合がある
配偶者が不貞行為をした場合、他方の配偶者は慰謝料を請求することができます。
なぜなら、不貞行為は、配偶者に対する不法行為に該当するからです。不法行為責任とは、故意または過失によって、他人の権利または法律上保護される利益を侵害した場合、これによって生じた損害を賠償しなければならない責任のことです(民法第709条)。
そして、夫婦はお互いに対して貞操を守る法的な義務を負っていると考えられています。
貞操権を侵害した場合には、相手方配偶者の「婚姻共同生活の平和的維持」という法的に保護に値する権利を侵害することになります。
したがって、風俗に通ったことで、この「婚姻共同生活の平和的維持」という権利・利益が侵害されたと評価される場合には、精神的苦痛に対して慰謝料を請求することができるのです。具体的には、小さな子どもがいて再三制止されたにもかかわらず、家庭を省みず風俗通いを続けているような場合には、慰謝料を請求できる可能性があります。
風俗を理由に離婚を請求できる場合がある
話し合いで離婚(協議離婚)できない場合は裁判所に離婚(裁判離婚)を訴えていく必要がありますが、民法には裁判離婚ができる5つの条件を法定しています。その一つが不貞行為です。
「配偶者に不貞な行為があったとき」には離婚の訴えを提起できると規定されています(民法第770条1項1号)。性風俗店に通って妻以外の風俗嬢と肉体関係を持っていた場合には、この不貞な行為に該当する可能性があります。
また、必ずしも肉体関係を持ったことが明らかでないとしても、「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」には、同様に裁判離婚を請求することができます。
したがって、風俗通いが原因で、夫婦関係の継続を期待できないほど深刻に破綻したと評価できる場合には、不貞行為と同様に離婚事由となります。
不貞行為と同様に風俗を理由に離婚・慰謝料を請求するには?
- 風俗通いを理由に慰謝料・離婚を請求するためのポイントとは?
- 夫婦トラブルに詳しい弁護士に相談すべき
夫の風俗通いを理由に離婚や慰謝料を請求するにはどうすればいいのでしょうか?
まずは、夫の行為の悪質性を証明するための証拠を収集する必要があります。
風俗通いを立証する証拠を集める
風俗通いを理由に離婚や慰謝料を請求する場合には、風俗を利用しているという客観的な証拠を収集・保管しておく必要があります。慰謝料や離婚をしたいと希望する場合、不貞行為などを証明する責任は、離婚や慰謝料を請求する側に課されています。
「夫の上着やカバンの中から風俗店の利用カードが出てきた」という程度では、証拠としては不十分です。そもそも、そのような店は知らないと反論されたり、肉体関係なしで1回利用しただけなどと反論されたりする可能性があります。
風俗店への出入りを立証するために役に立つ具体的な証拠としては、以下のようなものがあります。
- 特定の風俗嬢とのやり取りをしているLINEやメールの画面
- 風俗店を利用したクレジットカードの明細や領収証
- 風俗店に出入りしている現場を収めた写真や動画
- 風俗嬢と一緒に撮影した動画や写真 など
弁護士に相談する
そして、配偶者に対して慰謝料や離婚を請求する場合は、弁護士に相談のうえ対応を依頼すべきでしょう。
離婚や慰謝料を請求する場合、まずは当事者間の話し合いから始めることになります。夫婦間のパワーバランスに差がある場合には、適当に言いくるめられたり、逆に相手から不当に非難されたりするおそれもあります。当事者同士でやり取りをすると、感情的になってしまい、話し合いが前に進まないということも少なくありません。
そこで、法律の専門家である弁護士を介して話し合いをすることで、手続きをスムーズに進められる可能性が高まります。
相手が断固として慰謝料や離婚に応じない場合には、調停や訴訟などの裁判手続きを利用する必要があります。弁護士に依頼していた場合には、裁判手続きに発展した場合であっても、引き続き対応を任せておけます。
風俗嬢への請求は難しい
一般的に、配偶者に不貞行為があった場合、不貞相手に対しても慰謝料を請求することができます。
ただし、不貞の相手方が風俗嬢などのように業務として性的なサービスを提供している場合には、風俗店を利用したことが直ちに不法行為には該当しない可能性があります。
裁判例においても結論が分かれており、性的なサービスを提供する職業の場合には権利侵害の故意・過失が否定される場合も少なくありません。
まとめ
以上、配偶者が風俗店で肉体関係を持った場合、事案によっては、不貞行為に該当すると評価される可能性があります。また、風俗店通いを理由に慰謝料や離婚を請求できる可能性があります。
ただし、風俗通いを理由に離婚や慰謝料の請求をするためのハードルは決して低くありません。そのため、一度不倫トラブルに詳しい弁護士に相談することをおすすめいたします。