不貞行為が犯罪になるかと、不貞行為に対するペナルティについて解説いたします。
ざっくりポイント
  • 不貞行為自体は犯罪ではないが、慰謝料を支払う義務がある
  • 不貞行為の被害者の行為であっても、態様によっては犯罪になる可能性がある
  • 不貞行為のペナルティとして慰謝料や離婚を請求するには証拠が重要

目次

【Cross Talk 】不貞行為は犯罪になるの?

配偶者に不貞行為をされました。裏切られたので絶対に許せません。もし不貞行為が犯罪なら、警察に通報します!

お気持ちはわかりますが、実は不貞行為自体は原則として犯罪ではありません。ただし、犯罪ではなくてもペナルティを与える方法はあります。

不貞行為は犯罪ではないんですね。それなら、ペナルティを与える方法を教えてください!

不貞行為が犯罪になるかや、相手にペナルティを与える方法などを解説いたします。

配偶者に不貞行為をされた場合は、許せずに警察に通報したくなるかもしれませんが、不貞行為は必ずしも犯罪に該当するとは限りません。

とはいえ、不貞行為が犯罪ではないとしても、何らかのペナルティの対象になる可能性があるのです。

そこで今回は、不貞行為が犯罪になるかや、不貞行為に対するペナルティについて解説いたします。

不貞行為は犯罪になる?その他のペナルティはある?

知っておきたい離婚のポイント
  • 不貞行為自体は原則として犯罪ではない
  • 不貞行為をした配偶者と相手は慰謝料を支払う義務がある

不貞行為をされたので、警察に通報しようと思っています。

不貞行為自体は犯罪ではありません。ただし、不貞行為は不法行為にあたるので、不貞行為をした配偶者と相手は慰謝料を支払う義務があります。

不貞行為は犯罪ではない

不貞行為自体は原則として犯罪ではありません。

不貞行為とは、自らの意思に基づいて配偶者以外の異性と肉体関係を持つことですが、この行為は犯罪には該当しません。

不貞行為をしたとしても、原則として犯罪には該当しないことから、逮捕や刑事罰の対象にはならないのです。

ただし、相手の合意なく無理やり関係を持った場合や、未成年者と不貞行為をした場合は、犯罪になる可能性はあります。

不貞行為は離婚原因になる

不貞行為は犯罪ではありませんが、
離婚原因(法定離婚事由)にあたります。

法定離婚事由とは、裁判で離婚をするための要件です。

離婚する方法には、夫婦が協議して離婚する協議離婚や、裁判所で調停をして離婚する調停離婚、訴訟を起こして離婚する裁判離婚等があります。

協議離婚は夫婦が合意すれば離婚できますが、裁判離婚をするには、法律で定められた離婚事由を満たさなければなりません。

この法定離婚事由は民法第770条に規定されており、同条第1号は、配偶者に不貞な行為があった場合は離婚事由にあたると規定しています。

つまり、配偶者が不貞行為をした場合は、もう一方の配偶者はそれを理由に裁判離婚をすることが可能になります。(なお、裁判離婚をするには、原則として調停を事前にする必要がある等他にも要件があります。)

不貞行為を行った者は相手に対して慰謝料を払わなければならない

不貞行為は犯罪ではありませんが、不法行為を行った配偶者は慰謝料を支払わなければなりません。

故意または過失によって相手の権利や法的な利益を侵害した者は、相手に対して損害賠償をする義務があり、これを不法行為といいます。

不貞行為は配偶者としての権利や利益を侵害する行為であり、一般的に不法行為に該当するので、慰謝料を支払う義務が生じるのです。

不貞行為の相手方も慰謝料を払わなければならない

不貞行為の相手方である不倫相手も、
被害者が請求した場合は慰謝料を支払わなければなりません。

不貞行為は、配偶者と相手方による共同不法行為(数人が共同して不法行為を行うこと)にあたるからです。

例えば、夫と不倫相手が不貞行為をした場合は、被害者である妻は、夫に対してだけでなく不倫相手に対しても慰謝料を請求できます。

不倫相手が慰謝料を請求された場合、「あなたの夫も不貞行為をしたのだから、まずは夫に請求すべき」などと拒むことはできません。

夫だけでなく不倫相手も、慰謝料を支払う義務を負っているからです。

不貞行為の被害者が気をつけなければいけない犯罪

知っておきたい離婚のポイント
  • 不貞行為の謝罪を強要した場合は、強要罪に問われる可能性がある
  • 不貞行為の証拠のために住居に侵入した場合は、住居侵入罪に問われる可能性がある

不貞行為をされたので許せません。きちんと謝ってもらうために、相手の家に乗り込んで証拠を集めようと思います。

不貞行為の被害者であっても、謝罪を強要したり、勝手に住居に侵入したりした場合は、犯罪になる可能性があるので注意しましょう。

土下座などの謝罪の強要の仕方によっては犯罪になることも?

不貞行為をしたことに腹を立てて、相手に土下座などの謝罪を強要した場合は、犯罪になる可能性があるので注意しましょう。

例えば、謝罪の方法として土下座をしろと強要したり、不貞行為の謝罪文を書けと強要したりした場合は、強要罪(刑法第223条)に該当する可能性があります。

強要罪の刑罰は3年以下の懲役です。

証拠をつかもうとして住居侵入などの犯罪に問われることも

不貞行為の証拠をつかむための行動であっても、態様によっては犯罪に問われる可能性があるので注意しましょう。

不貞行為の証拠をつかもうとして、別居している配偶者や、不倫相手の住居に勝手に侵入することは、住居侵入罪(刑法第130条)に問われる可能性があります。

住居侵入罪の刑罰は、3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。

不貞行為の被害者が相手にペナルティを与えるためには?

知っておきたい離婚のポイント
  • 不貞行為のペナルティを与える方法は、慰謝料や離婚を請求することである
  • 慰謝料や離婚を請求するには、不貞行為の証拠が重要

不貞行為が犯罪ではないことはわかりましたが、このままではやはり納得できません。相手にペナルティを与えたいのですが、どのような方法がありますか?

不貞行為に対するペナルティとしては、慰謝料を請求したり離婚したりなどの方法があります。いずれにしても、不貞行為の証拠を集めることが重要です。

慰謝料請求を行う

不貞行為に対してペナルティを与える方法の一つとして考えられるものは、慰謝料を請求することです。

慰謝料を請求する方法としては、裁判所の手続きによらずに相手に直接慰謝料を請求する方法と、裁判所の手続きを利用する方法があります。

直接請求をしても相手が支払いに応じない場合は、調停や裁判などの裁判所の手続きを利用して、慰謝料を請求することを検討します。

離婚する

不貞行為に対してペナルティを与える方法の一つとして、相手と離婚することも考えられるでしょう。

離婚を請求する方法としては、まずは協議離婚があります。

夫婦で話し合いをして両者が離婚に合意したら、離婚届を作成します。離婚届を提出して受理されれば、離婚が成立します。

相手が離婚することに同意しない場合は、協議離婚は成立しません。

協議離婚が成立しない場合は、管轄の家庭裁判所に離婚調停を申立てる方法があります。

離婚調停では、調停委員という第三者を交えて離婚について話し合いをします。

離婚をするという調停案に夫婦の両方が同意すれば離婚が成立しますが、同意がない場合は、調停による離婚は成立しません。

調停で離婚が成立しなかった場合、最終的には離婚裁判を提起することで決着をつけます。

裁判の結果、離婚をするという内容の判決が確定した場合は、相手が離婚に納得していなくても、法的に離婚を成立させることができます。

しっかり証拠を集める

不貞行為に対するペナルティとして、慰謝料や離婚を請求するには、証拠をしっかり集めることが重要です。

相手が不貞行為をしたことが事実だとしても、それを証明できる証拠がなければ、慰謝料や離婚を請求したとしても、相手に断られる可能性が高いからです。

裁判によって慰謝料や離婚を請求する場合も、不貞行為を証明する証拠がなければ、請求は認められません。

不貞行為を証明するのに一般に役立つ証拠としては、以下のものがあります。

・不貞行為をした現場や、相手の自宅などに出入りする写真・動画
・不貞行為の相手とのやりとりが記録されたメール・SNS
・不貞行為の相手との通話履歴
・不貞行為をしたことを認める文章・証言の録音

不貞行為を証明できるような証拠が集まれば、慰謝料や離婚の請求をスムーズに進めやすくなります。

まとめ

不貞行為は原則として犯罪ではないので、相手へのペナルティとして刑事罰を与えることは基本的にできません。
不貞行為に対するペナルティを与える方法としては、慰謝料や離婚を請求する方法があります。
慰謝料や離婚を請求するには、不貞行為を証明できる証拠を集めることが重要ですが、住居侵入罪などの犯罪にならないように注意しましょう。
不貞行為をされて慰謝料や離婚を請求したい場合は、法的に問題ない方法で証拠を集めるためにも、まずは弁護士に相談することをおすすめいたします。