夫婦関係破綻が認められる事例、法的に認められる離婚理由について解説いたします。
ざっくりポイント
  • 夫婦関係の破綻は「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」として離婚が認められる可能性がある
  • 離婚理由に該当するかどうかは個別に判断される
  • DV・モラハラ・長期間の別居・性の不一致・過度な浪費癖などが離婚事由に該当し、複数ある場合には認められやすくなる

目次

【Cross Talk 】夫婦関係が破綻している状態とは?

夫婦仲が冷え切っており家にいても会話がほぼありません。夫婦関係の破綻として離婚できますか?

ほぼ家庭内別居の状態ですが、家庭内別居は客観的な判断が難しいという現状があります。家計を完全に別にしている、生活エリアを区切っている、他にも離婚理由がある場合には離婚が認められやすくなります。

離婚できる理由は他にもあるのですね。詳しく教えてください!

夫婦関係の破綻と離婚とは?認められやすい事例を解説していきます。

「夫婦関係破綻ってどういう状態?うちは当てはまるの?」「夫婦関係が破綻していると思われるので離婚したい」という方は多いのではないでしょうか。
DV・モラハラ・長期間の別居・性の不一致などは民法770条5項「婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚が認められる事例と言われています。夫婦関係が破綻している状態と言えるでしょう。
法的な離婚事由5つと「婚姻を継続しがたい重大な事由」とは、離婚が認められやすい事例8つを解説していきます。

「夫婦関係の破綻」とはどのような状況?

知っておきたい離婚のポイント
  • 法的に夫婦関係の破綻は「婚姻を継続し難い重大な事由」に当てはまる可能性がある
  • 「婚姻を継続し難い重大な事由」は個別に判断される

夫がギャンブル好きで多額の借金があり、離婚したいです。負けたときには手を出されることもあります。夫婦関係の破綻として認められますか?

ギャンブル依存・多額の借金・DVという3つの理由が重なり、離婚が認められる可能性が高いです。

法律的な「夫婦関係破綻」の定義とは

夫婦間の協議や家庭裁判所における調停・審判でも離婚が成立しない際に、民法770条の「裁判上の離婚」に該当すると訴訟を起こすことが可能です。

第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1 配偶者に不貞な行為があったとき。
2 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
4 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

夫婦関係の破綻は上記5「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に当てはまる可能性があります。
夫婦には同居・協力・扶助の義務(同法752条)があります。
2の「悪意で遺棄された」とは、正当な理由がなく同居・協力・扶助の義務を果たさないことです。
例えば正当な理由がなく勝手に家を出ていく、家にお金を入れないなどの行為を指します。

「婚姻を継続しがたい重大な事由」は個別に判断される

婚姻を継続しがたい重大な事由の例にはDVや長期間に渡る別居、性の不一致などがあります。

離婚は2人で話し合い合意に至る「協議離婚」と、裁判所による「調停離婚」「審判離婚」「裁判離婚」があります。
家庭内でのトラブル(家事事件)は原則として裁判の前に調停を経ることとされています。まずは2人で話し合い、意見がまとまらない場合には調停(又は審判)、調停・審判でも成立しないときには訴訟という流れで最終的に裁判所が判断します。

裁判所は、様々な事情を考慮して個別に「婚姻を継続しがたい重大な事由」を判断します。
例えば宗教活動は婚姻を継続しがたい重大な事由として認められませんが、多額のお金をつぎ込む、子どもに信仰を強要する、仕事や家事・育児を放棄するなどの限度を超えた活動は離婚原因として認められる可能性が高いです。

夫婦関係の破綻が認められやすい事例8つ

知っておきたい離婚のポイント
  • DV・モラハラ・長期間の別居・アルコール・薬物依存・双方が関係を修復する意思がないなどの事例で夫婦関係の破綻とみなされることがある
  • 複数の事例が重なる、社会通念上許容されるレベルを超えている場合には離婚が認められやすくなる

妻に性行為を2~3回に1回拒否されます。性の不一致と言えるでしょうか?

難しい状況です。セックスレスで離婚が認められた事例は数年に渡るものが多く、普段の夫婦仲など他の要素も考慮し判断されます。

DV・モラハラ

内閣府男女共同参画局のホームページ※1によると、DV(domestic violence)は主に『配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった者から振るわれる暴力」という意味で使用されることが多い』と記載されています。身体的な暴力・虐待に加え、暴言を吐くなど精神的な虐待も含まれます。
配偶者の金銭的な自由を奪う「経済的DV」もあります。
配偶者暴力相談支援センターへの相談件数は2020年度以降増加傾向にあり、コロナ禍による在宅時間の増加の影響と推測されています。

参照:内閣府 男女共同参画局 ドメスティック・バイオレンス(DV)とは

モラハラは「精神的な嫌がらせ」で、相手を傷つける言動や無視するなどの行為を指します。
DV・モラハラに遭っている方は配偶者暴力相談支援センターに相談しましょう。
可能であればメモをとる、録音・録画する等証拠を残しておくことをおすすめします。

別居期間が長い

夫婦が長期間別居していると、事実上夫婦関係が破綻しているとみなされる事例があります。
「○年別居したら離婚」という明確な線引きは難しいですが、一般的に5年以上別居していると離婚が認められやすいと言われています。

長期間に渡り家庭内別居の状態である

別居はしていないものの、同じ家に住んでいながら会話がない・お互いの存在を無視するなど家庭内別居の場合も離婚理由になる可能性があります。

ただし別居より立証が難しいという現状があります。
「お互いの生活エリアを区切っている」「家計が完全に別である」など客観的に別居している状況では、家庭内別居と判断される可能性は高くなります。

性の不一致

一方的に性行為を拒否する、常軌を逸脱した性行為を強要されるなど「性の不一致」も離婚理由となります。

例えば結婚前から2人で「子どもを持ちたい」と聞いていたにも関わらず、結婚後数年に渡り性行為を拒否された場合では有利に働くことがあります。ただし、結婚前から「性的なことにあまり関心がない」と聞いており、結婚後に拒否された場合は認められない可能性があります。

性の不一致が原因で離婚訴訟を起こすと、裁判が公開され性に関する個人的な内容も公になってしまいます。よって話し合いでの解決を目指しましょう。弁護士を代理人に立て話し合うことも可能です。

アルコール・薬物依存

アルコール・薬物依存症は精神に作用する物質の有害な使用(乱用)・依存※3を指し、精神疾患に分類されます。
依存症が重く回復の見込みがない場合には離婚理由となります。

ギャンブル・買い物依存・浪費癖・借金

ギャンブルをほどほどにたしなむ、気晴らしに月〇万円と決めて買い物する程度であれば生活に支障はないでしょう。

しかし、過度のギャンブルや買い物依存症で借金をしてしまう、浪費癖があり生活が困窮しているなどの理由で夫婦関係が破綻する際には離婚理由と認められる可能性が高いです。

犯罪行為・服役

犯罪行為や服役があればすぐ離婚原因になるというわけではありませんが、配偶者が何度も犯罪行為をする、服役期間が長いなどの場合では離婚理由になると推定されます。

2人とも夫婦関係を修復する意思がない

お互いの関係が悪化しており、2人とも関係を修復する意思がない場合には夫婦生活をおくることは不可能と見込まれます。よって夫婦関係の破綻が認められることがあります。

上記8つの行為に関して、複数該当するもしくは重度とみなされる場合には離婚が認められる可能性が高くなります。

まとめ

ギャンブル・買い物依存・浪費癖・借金などが客観的に見て過度である、長期に渡り別居をしているなどの事例は夫婦関係の破綻として離婚が認められる可能性があります。
しかし「客観的に見て夫婦関係が破綻しているか」を当事者が判断することは難しいでしょう。
離婚や夫婦問題に詳しい弁護士に相談することで、第三者からの意見を聞くことができます。
夫婦関係が破綻しているのか、離婚理由になるかが気になる方は弁護士への相談をおすすめします。