- 不貞と浮気の法的な違いとは?
- 配偶者が不貞や浮気をしていた場合の対処法とは?
- 肉体関係がない場合でも、離婚や慰謝料を請求できる可能性がある
【Cross Talk 】不貞と浮気の違いは何ですか?
不貞は法律婚関係にある夫婦間で問題となり、浮気が必ずしも不貞に該当するとは限りません
不貞と浮気の違いについて詳しく教えてください。
パートナーの心が他の異性に揺らいでいる場合、「浮気」や「不倫」、「不貞」だと表現することがあるでしょう。しかし、「不貞」には法律上の定義が存在しており、不貞に該当した場合には、法的な効果が発生することになるため、浮気・不倫との言葉の違いを正確に理解しておくことは重要です。
この記事では、不貞と浮気の違いや、配偶者に不貞・浮気があった場合の対処法などについて解説していきます。
不貞行為と浮気の違いとは?
- 不貞行為と浮気の違いとは?
- 不貞行為と不倫の違いとは?
不貞と浮気・不倫の違いを教えてください。
民法の条文には、「不貞な行為」という文言があり、厳密な定義が存在しておりますので、ここで解説しましょう。
不貞行為とは?
「不貞行為」、「浮気」、「不倫」という言葉の意味は法的には異なります。いずれもパートナーの気持ちが別の異性になびいてしまった場合に使用されることが一般的ではないでしょうか。
しかし、「不貞行為」には法律上の定義が存在しています。
不貞行為は、民法で定められた離婚事由で、「配偶者のある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係=肉体関係を結ぶこと」を意味します。
したがって、不貞行為に該当するかどうかは、以下のような条件を満たしている必要があります。
- 法律上、婚姻関係にある(内縁関係を含む)夫婦であること
- 配偶者以外との性行為や性交類似行為があること
- 当事者の自由な意思に基づく行為であること
また、不貞行為は犯罪行為とはされていないため、刑法上の違法性はありません。
しかし、不貞行為は民法上の違法行為に該当します。不貞行為を行った当事者には民法上の不法行為責任が発生します。不法行為とは、故意または過失によって他人の権利・法律上保護された利益を侵害した場合、これによって生じた損害を賠償しなければならないという責任です(民法第709条)。
そして、不貞行為は、配偶者の「婚姻共同生活の平和の維持」という権利・利益を侵害することになり、これによって生じた精神的な苦痛を賠償する責任が発生するのです。
浮気との違い
不貞行為に似た言葉として「浮気」という言葉があります。
浮気には法的な定義はありませんが、一般的に、パートナー以外の方に気を惹かれたり、好意を持って接触したりすることを指します。夫婦や恋人がいるにもかかわらず、他の異性に愛情が移ってしまうことを浮気ということが多いでしょう。
不貞行為と浮気の違いとして、浮気には「婚姻関係にないカップルも含まれる」という点です。
不貞行為はその定義から、婚姻関係または内縁関係にある夫婦間にしか成立しません。しかし、浮気は交際しているパートナーの行為を広く含んでいるため、不貞行為よりも広い概念です。
そして、婚姻関係にないカップルの場合には、パートナーが第三者との間で恋愛関係・性的関係を結んだとしても、自由恋愛の範疇として法的な責任は負わない可能性が高いでしょう。
そのため、婚姻関係にないカップルの一方が他の方と肉体関係を持ったとしても、不貞行為に基づく慰謝料請求はできないことが原則です。
不倫との違い
不貞行為と似た言葉に、「不倫」という言葉もあります。
一般的な「不倫」の意味としては、人が踏み行う道からはずれること・非倫理的なこと、特に配偶者でない者との男女関係・浮気のことを意味します。
そのため、不倫は、「不貞行為」の意味で用いられることもありますし、「浮気」という意味で用いられることもあります。
一般的な意味の不倫には、異性交際、デート、キス、目移りなど様々な行為を含む場合がありますが、民法上の「不貞行為」という場合には性行為・性交渉を指す言葉となります。
配偶者が不貞行為・浮気をしていた場合の対応
- 不貞行為・浮気をした配偶者への対応とは?
- 不貞行為を理由に慰謝料・離婚を請求できる
夫が不貞行為や浮気をしていた場合、どうすればいいのでしょうか?
不貞行為があった場合には、慰謝料や離婚を請求することができます。
慰謝料を請求する
不貞行為があった場合には、不貞当事者に対して慰謝料を請求することができます。
夫婦は婚姻の効力として相互に「同居義務」を負っています(民法第752条)。また、配偶者以外の者との性行為は「不貞行為」として、裁判上の離婚をすることができる「法定離婚事由」として規定されています(同第770条1項1号)。
以上のような民法の規定から、婚姻関係にある夫婦は、お互いに対して「貞操を守る義務」を負っていると考えられています。
不貞行為は、このような貞操権を侵害し、配偶者の婚姻共同生活の平和を維持するという権利・利益を侵害することになるため、これによって生じた精神的な苦痛を賠償する義務が生じるのです。
そして、不貞行為を行った両当事者には、共同不法行為が成立することになるため、「各自が連帯してその損害を賠償する責任を負」います(民法第719条1項)。したがって、不貞をされた配偶者は、不貞をした配偶者と不貞相手の両方に慰謝料を請求することができますし、不貞相手にだけ請求することもできます。
離婚を請求する
夫婦の一方は「配偶者に不貞な行為があったとき」には離婚の訴えを提起することができる、と民法には規定されています(民法第770条1項1号参照)。
原則として、一度でも肉体関係があれば不貞行為として法定離婚事由に該当することになりますが、具体的な事案によっては、実質的に婚姻関係が破綻していないとして不貞行為には当たらないと反論される可能性はあります。
前述の通り、不貞当事者に対しては、慰謝料を請求することができますが、不貞行為を理由に離婚をする場合には、慰謝料の金額が高額になる可能性があります。一般的に不貞行為を理由に離婚する場合の慰謝料の相場は100万円~300万円程度と言われています。ただし、慰謝料の金額については事案に応じて変動するものであるため、ご自身の場合にどの程度になるかについては、弁護士に確認してください。
不貞行為なしの浮気でも離婚・慰謝料を請求できる可能性
配偶者が第三者と肉体関係を結んでいない場合(立証できない場合も含みます。)であっても、離婚や慰謝料を請求できる可能性があります。
不法行為に基づく慰謝料請求ができるかどうかは、「権利を侵害され精神的な苦痛を被った」のか、というポイントが問題となります。
そのため、配偶者がやめるようにお願いしているにもかかわらず、他の異性とキスやハグなど身体的接触を頻繁に行っていたり、特定の相手と頻繁に密会・贈答していたりする場合には、配偶者への権利侵害が肯定される可能性があります。
また、肉体関係がなく「配偶者に不貞な行為があったとき」という離婚事由に該当しない場合であっても、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」という離婚事由に該当する場合には、裁判上の離婚を請求することができます(民法第770条1項5号)。そのため、配偶者の浮気が原因で、婚姻関係の継続を期待できないほど、深刻に破綻したと評価できる場合には、裁判離婚ができる可能性があります。
まとめ
以上、不貞行為は「性的な関係=肉体関係」がなければ該当しません。また、法律上結婚している夫婦間で問題となるため、慰謝料や離婚という問題が発生することになります。
不貞トラブルに詳しい弁護士であれば、不貞行為に該当するかどうかも的確に教えてもらえますし、離婚や慰謝料を請求することを代行してもらえますので、配偶者の不貞行為について悩まれている場合には、弁護士に相談することをおすすめします。