- 慰謝料の計算式はなく、様々な要素と個々の事情を考慮して金額が決定する
- 夫婦の婚姻期間や子どもの有無、不貞の期間と回数、経済力などの要素が慰謝料に影響する
- 不貞行為によって夫婦関係が破綻し離婚に至った場合は、離婚しない場合に比べて慰謝料が高額の傾向
【Cross Talk 】妻が不倫しました。慰謝料はいくらもらえますか?
妻が不倫し、離婚するので妻と不倫相手に慰謝料を請求します。どうやって計算するのでしょうか?
慰謝料に明確な計算式は存在せず、様々な要素や事情を考慮して決定します。不倫相手と配偶者に慰謝料請求できますが、二重取りはできず金額は変わりません。
詳しく教えてください。
不貞行為だけではなく、「精神的苦痛」に対して慰謝料を支払われる場合、明確な計算式は存在しません。しかし婚姻期間や不倫の期間など慰謝料に影響する要素があり、精神的苦痛が多いと一般的に考えられる際に慰謝料は高くなる傾向にあります。不貞行為とは、慰謝料の相場、影響する要素5つなどを解説していきます。
「不貞行為」の定義と慰謝料の相場
- 不貞行為とは既婚者が自分の意思で異性と性的関係を持つ事
- 不貞行為で受けた精神的苦痛の度合いによって慰謝料の金額が決まる
そもそも不貞行為とは何を指すのでしょうか?キスやハグは不貞行為ですか?
いいえ、不貞行為とは既婚者が自分の意思で異性と性的関係を持つ事です。「自分の意思で」という点がポイントで、例えば性被害の事件に遭ってしまった場合は不貞行為に該当しませんが、自ら買春をした場合は不貞行為とみなされるでしょう。
不貞行為とは
不貞行為とは、配偶者がいる男性または女性が異性と性的肉体関係を持つことで、民法770条の法律上離婚理由として認められる「法定離婚事由」の1つです。
デートをしている、メッセージアプリでやり取りをしているものの性的関係はない場合には不貞行為には該当しません。
他方で、継続的または1度きりの性的関係、風俗店に通う、売春・買春は不貞行為といえるでしょう。
慰謝料の相場は50~300万円程度
不貞行為による慰謝料は民法709条※1の「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」という不法行為の一類型として、損害賠償の対象になります。
また、不貞行為における慰謝料の計算式は存在しないため、不貞行為によって受けた精神的苦痛の度合いを考慮して慰謝料の額が決定します。
相手の不貞行為について話し合い慰謝料を請求する前に、証拠を集めておくことをおすすめします。
配偶者と不倫相手がホテルから出てきた写真・浮気相手からのメールや電話の記録・ホテルのレシートやクレジットカードの明細などが証拠となる可能性があります。
外泊の日時や回数も記録しておきましょう。
不貞行為による慰謝料の相場はおおよそ50~300万円程度です。
相手に支払い能力がなく離婚に至らない場合などでは数万円での解決にならざるを得ない事例もあります。
一方で、子どもがいるのに家庭を顧みず不貞行為を継続し続け離婚に至る等、精神的な苦痛が大きい場合、金額が大きくなる傾向にあります。
慰謝料の金額に影響する要素4つ
- 夫婦の婚姻期間と子どもの有無、不倫の期間や配偶者の経済力などによって慰謝料が左右される
- 不貞行為に至った経緯も確認し、不倫が発覚した後の相手の態度を要チェック
慰謝料はどうやって決まるのですか?
被害者の精神的苦痛が大きいと慰謝料が高くなる傾向にあります。例えば婚姻期間や不倫の期間が長いとダメージが大きいとみなされ、短い場合よりも金額は高くなるでしょう。
夫婦の婚姻期間と子どもについて
慰謝料は精神的苦痛が大きくなればなるほど高額になりますので、夫婦の婚姻期間が長いとダメージも大きくなるとみなされ金額が多くなる可能性があります。
加えて小さい子どもがいる、妻が妊娠中の不貞行為は比較的金額が高い傾向にあります。
不貞の期間・回数
一般的に、不貞の期間が長く回数が多いと慰謝料は多めに支払われます。
例えば酔ったはずみで一度だけ関係を持った場合と数年に渡り不倫相手と半同棲生活をしていた場合とでは後者の方が慰謝料は高くなるでしょう。
不貞行為が夫婦に及ぼした影響
不貞行為により夫婦関係が破綻し、別居・離婚する事になった際には別れないときより慰謝料は高くなるでしょう。
ただし、不倫する前から長期間別居をしていた、同居をしていても夫婦で会話がなく実質夫婦生活が破綻していた場合では権利を侵害されていないため慰謝料を請求できない可能性があります。
その他の要素
上記の他には、不倫が発覚した後の相手の態度や不貞行為に至った経緯なども慰謝料に影響を及ぼします。
一般的に慰謝料が高くなる要素は以下の通りです。
要素 | 慰謝料が高くなる |
婚姻期間 | 婚姻期間が長い |
不倫期間・回数 | 期間が長く回数が多い |
子ども | 子どもがいる(特に小さい子どもがいる・妻が妊娠中) |
不貞行為による影響 | 夫婦関係が破綻し、別居・離婚 |
不貞行為が発覚した後の態度 | 謝罪がなく反省の色も見られない |
不貞行為に至った経緯 | 夫または妻が自主的に不倫をした |
不貞行為の前の夫婦の関係 | 円満 |
その他 | 以前も不貞行為があり「もうしない」と約束したにもかかわらず不倫をした 複数人と不倫していた |
「婚姻期間・不倫の期間は短くても精神的なダメージは大きい」など納得できない方もいらっしゃるでしょう。「精神的な苦痛」は目に見えないため判断が難しいという現状があります。裁判などでは、上記のような「客観的にダメージが大きいと思われる要素」を一般的に考慮して決定されます。
「慰謝料が相場より多く欲しい」という方は、裁判外の話し合いを試みることをおすすめします。
不貞行為による慰謝料の計算シミュレーション
- 慰謝料を正確に知りたい方は弁護士に相談を
- 弁護士は裁判外の話し合いで代理人として交渉ができる
慰謝料の相場は50~300万円程度との事ですが、私が受けた精神的苦痛を考えると500万円は欲しいです。
配偶者と裁判ではなく任意で話し合いをしてみてはいかがでしょうか。弁護士が代理人として交渉する事も可能です。
裁判例でみる慰謝料
実際の裁判例での慰謝料をみていきましょう。
ある裁判例では、婚姻期間が約6年、この間の不貞期間が約2年、6歳になる子がいる、離婚にはいたらないケースで、慰謝料100万円を命じた判決があります。
またある裁判例では、婚姻期間が約28年、不貞期間が約8年、子ども1人がいる、不貞相手との間にも子が生まれた、この不貞が原因で離婚調停中、過去にも同じ相手と不貞関係がありもうしない旨の約束をしていた、というケースで慰謝料300万円を命じた判決があります。
慰謝料の相場を知りたい方は弁護士に相談を
「夫または妻が不倫したので慰謝料を知りたい」「とりあえず専門家に話を聞きたい」という方は弁護士にご相談することをおすすめいたします。
夫婦・離婚問題の実績が豊富な弁護士より、過去の事例から慰謝料の相場を教えてもらえますし、慰謝料を請求する手順や流れ、弁護士費用の相談も可能です。
まとめ
不貞行為による慰謝料の相場は50~300万円程度で、様々な要素・事情を考慮したうえで決まります。
慰謝料についてもっと詳しく知りたい方、代理人として交渉を希望する際には弁護士に相談してみましょう。