不貞行為の示談交渉はどのように進める?
ざっくりポイント
  • 不貞行為はどのような責任を負う?
  • 不貞行為の示談交渉の進め方とは?
  • 不貞行為の示談を進める際の注意点とは?

目次

【Cross Talk 】不貞行為の示談交渉はどのように進めればいいのでしょうか?

不貞行為をした場合には、示談をすることが必要なのでしょうか?

不貞行為は民法上の不法行為に該当するため、損害を賠償する責任があります。場合によっては示談をすることになるでしょう。

不貞行為の示談について、詳しく教えてください。

不貞行為の示談交渉はどのように進めれば良いのか?

結婚しているにもかかわらず、他の異性と関係を持ったことが配偶者に発覚すると、離婚トラブルに発展してしまう可能性があります。不貞行為を行った場合には、相手方配偶者から高額な慰謝料を請求されるおそれもあります。不貞行為の示談交渉の進め方や注意点はどのようなものなのでしょうか。この記事では、このような疑問点について、弁護士が解説していきます。

不貞行為によって生じる法的責任

知っておきたい離婚のポイント
  • 不貞行為は配偶者に対して不法行為が成立する
  • 配偶者は不貞当事者に対して慰謝料を請求することができる

不貞行為をした場合には、どのような責任を負うのでしょうか?

不貞行為した方、配偶者に対して、不貞行為による損害を賠償する責任を負います。

不貞行為をすると不法行為責任を負う

不貞行為をすると、不貞をされた配偶者に対して、損害を賠償する責任が発生します。

そもそも、不貞行為とは、どのような行為を指すのでしょうか。
日常的には、不貞行為や浮気、不倫などといった言葉は混同して用いられていますが、
法律上、不貞行為とは、「婚姻関係にある者が、配偶者以外の第三者と自由な意思で性的関係を持つ行為」を指します。
不貞行為は、法律上、不法行為として慰謝料請求の対象となります。

不貞をされた側は慰謝料を請求できる

不貞行為は、 裏切られたというショック、不安、絶望感など、深い精神的な傷を与えるだけでなく、 夫婦間の信頼関係が失われ、婚姻関係を破綻させる可能性を高めるなど、不貞行為をされた配偶者に損害を与える行為です。

先に述べた通り、不貞行為は民法上の不法行為に該当します。したがって、不貞行為によって損害を受けた配偶者は、不貞行為を行った相手に対して、その損害を賠償するよう求めることができます。

また、不貞行為は、通常、配偶者と不倫相手という二人によって行われる行為です。この場合、両者は共同して不法行為を行ったことになるため、共同不法行為が成立します。
不貞行為をされた配偶者は、不貞行為を行った配偶者か不倫相手のうちいずれか一方に慰謝料を請求することもできますが、両当事者に慰謝料を請求することもできます。

不貞行為の示談交渉の進め方

知っておきたい離婚のポイント
  • 不貞行為の示談交渉の進め方とは?

不貞行為の示談交渉はどのように進めればいいのでしょうか?

不貞行為の示談交渉の進め方について、順を追って解説していきます。

相手の主張や証拠を確認する

まずは、不貞行為に関する相手方の主張や証拠を確認することが重要です。
不貞行為の示談交渉を開始するためには、不貞当事者が不貞行為を行っていたことを証明するための証拠を集めることが重要となります。不貞行為を証明するために一般的に用いられるものとして、次のような証拠があります。

  • 配偶者が不貞相手と肉体関係を持っていることが分かる写真や動画
  • 肉体関係を持っていることが分かる当事者間のLINEやメールのやり取り
  • 配偶者が不貞行為を認めている発言をしている音声データ
  • 配偶者がラブホテルを利用していることが分かる領収書やクレジットカードの明細 など
  • 不倫をした側の当事者は、相手方がどのような証拠を保有しており、どのような事実を主張しているのかという点を正確に把握する必要があります。相手が掴んでいる証拠だけでは、不貞行為を証明できないという場合には、そもそも損害賠償責任が認められない可能性もあります。
    また、これまで、同一の不倫相手と複数回肉体関係を持っている場合であっても、そのうち一部についてしか不貞の証拠を掴んでいないということもあります。
    そのような場合には、相手が把握していない事実までこちらから自発的に説明する必要はありません。ただし、事後的にその他の不貞が発覚した場合には、請求される慰謝料の金額が増額するリスクもあるため、慎重な対応が必要となります。

    相手と示談条件について交渉をする

    示談交渉をする場合には、どのように交渉を進めるのかという基本方針を決める必要があります。相手が不貞行為の有力な証拠を持っている場合、不貞行為自体を争うことは難しくなりますので、金額に関する交渉が主になります。
    示談交渉の進め方としては、当事者同士が直接交渉をするか、弁護士に依頼するという方法があります。慰謝料を請求する側は、不貞行為の慰謝料を請求する旨を記載した内容証明郵便を送付する形で損害賠償請求をすることもあります。
    慰謝料の請求額については事案に応じて様々ですが、話し合いの段階では比較的高額な慰謝料を求められることは少なくありません。300万円~500万円といった高額の慰謝料を請求される場合も決して珍しくはありません。

    請求されている側は、不貞行為が証明されていない場合はその点を反論することになります。また、不貞行為を認める場合であっても、適切な金額を目指して交渉をすることになります。不貞行為の示談金額の相場については、ご自身では判断できないと思いますので、法律の専門家である弁護士に相談することがおすすめです。

    示談書に署名・押印をする

    示談条件について、当事者間で合意が成立した場合には、示談書を作成して当事者双方が署名・押印することになります。
    不貞行為の示談書に記載されるものとしては、次のような項目があります。

  • 不貞行為の事実の確認と不貞当事者による謝罪
  • 慰謝料の金額、支払期日、支払方法、支払回数、支払にかかる手数料の負担者
  • 不倫関係の解消や誓約事項
  • 示談した内容に違反した場合の違約金の合意
  • 守秘義務やプライバシーの保護
  • など

    また、不貞行為の示談書は公正証書の形で作成されることがあります。公正証書とは、公証人役場で公証人に作成してもらう文書のことで、示談書を作成して公証人役場に持参することで作成してもらうことができます。公正証書に強制執行認諾文言を付していれば、民事裁判を経ずに、いきなり強制執行の申立てができるようになります。

    示談できない場合には、調停や訴訟になる

    当事者間での話し合いで示談交渉がまとまらない場合には、調停や訴訟といった裁判手続きを利用する必要があります。

    不貞行為の示談を進める際の注意点

    知っておきたい離婚のポイント
    • 不貞行為の示談を進める際の注意点とは?
    • 高額すぎる慰謝料額や不当な要求には注意する

    不貞行為の示談交渉を進める際にはどのような点に注意する必要がありますか?

    高額すぎる慰謝料額や、不当な要求には適切に反論する必要があります。

    慰謝料の金額が高額すぎないか

    慰謝料の金額は、法律で明確に定められているわけではなく、当事者間の交渉によって決まります。
    しかし、相場を参考に、高すぎる金額を請求されている場合は、交渉によって減額することも可能です。不貞行為の慰謝料の相場は、50万円~300万円とかなり幅広いです。
    さらにこの金額は、あくまでも一般的な相場であり、離婚に至ったか・婚姻期間・子の有無など様々な要素で変動する可能性があります。

    慰謝料の支払い義務があるか

    不貞行為の示談交渉で慰謝料を請求された場合、法的に慰謝料の支払義務が発生しているかどうかは慎重に判断する必要があります。以下では、原則として慰謝料の支払義務はないと考えられるため、適切に反論する必要があります。

  • 肉体関係が証明されていない場合
  • 不貞行為時点で既に夫婦の婚姻関係が破綻していた場合
  • 相手が既婚者であることを知らなかった場合(不貞の相手側が慰謝料請求されている)
  • 脅迫などにより、強制的に関係を持たされた場合 など
  • 慰謝料の支払義務があるかどうかは、個々によって異なりますので、弁護士に相談することをおすすめします。

    不当な要求がないか

    不貞行為の相手として責任追及を受けている場合、不当な要求には適切に反論していく必要があります。
    例えば、慰謝料の支払いのみならず、勤務先を退職することや、現住所からの引っ越しなどを要求されるなどです。しかし、これらの要求に応じなければならない法的な根拠はありません。相手方から不当な要求を受けている場合には、示談交渉の段階で拒否する必要があります。

    まとめ

    不貞行為をした場合には、配偶者に対して損害賠償責任が発生します。
    不貞行為で示談する場合には、トラブルを穏便に解決できる可能性もありますが、示談条件の判断や示談交渉をする際には、専門的知見が必要になりますので、弁護士に相談されることをおすすめします。
    ご自身だけで対応していると、不利な示談条件や高額な慰謝料の支払いに応じてしまう可能性もあります。
    当事務所には夫婦トラブルの解決実績が豊富な弁護士が在籍しておりますので、ぜひご相談ください。