経済的DVの概要や、経済的DVによる離婚・慰謝料請求について解説いたします。
ざっくりポイント
  • 経済的DVとは相手を経済的に追い詰める行為である
  • 経済的DVが法定離婚事由にあたる場合は裁判離婚が可能
  • 経済的DVの証拠を集めることが重要

目次

【Cross Talk 】経済的DVを理由に離婚は可能?

夫が生活費をほとんど渡してくれないのですが、経済的DVではないかと友人に言われました。経済的DVで離婚はできるのでしょうか?

経済的DVとは、相手を経済的に追い詰めて苦痛を与える行為です。経済的DVが法定離婚事由に該当する場合は、裁判離婚をすることができます。

経済的DVで離婚できる場合があるんですね。経済的DVで慰謝料を請求できるかも教えてください!

経済的DVを理由とする離婚や慰謝料請求について解説いたします。

生活費を十分に渡さなかったり、正当な理由なく浪費を繰り返したりすることは、一般に経済的DVにあたる行為です。

配偶者の経済的DVによって被害を受けている場合は、相手と離婚したり、離婚したうえで慰謝料を請求したりを考えるかもしれません。

そこで今回は、経済的DVを理由に離婚できるかや、慰謝料請求の可否について解説いたします。

経済的DVとは?

知っておきたい離婚のポイント
  • 経済的DVとは相手を経済的に追い詰める行為である
  • 十分な生活費を渡さなかったり、借金や浪費を繰り返したりなどは、経済的DVの可能性がある

経済的DVとはどのような行為ですか?

経済的DVとは、経済的に相手を追い詰める行為です。十分な生活費を渡さなかったり、借金や浪費を繰り返したりなどは、経済的DVに該当する可能性があります。

経済的DVとは

経済的DVとは、経済的ドメスティック・バイオレンスの略称であり、金銭の自由を奪うことで相手を経済的に追い詰める行為です。

DVには殴ったり蹴ったりなどの肉体的な暴力を振るう場合や、心無い言葉や罵倒によって精神的に追い詰める場合などがあります。

経済的DVは、暴力や言葉ではなく、相手を経済的に追い詰める点に特徴があります。

経済的DVは激しい暴力や罵倒を伴わないことから、DVであると認識されない場合も少なくありません。

経済的DVを受けているにもかかわらず、被害者がDVを受けている自覚がない場合もあります。

経済的DVの例

一般に経済的DVに該当しうる場合として、以下のものがあります。

・配偶者に生活費を渡さない
配偶者が専業主婦(主夫)の場合や、明らかに相手方の収入の方が高いにも関わらず、正当な理由なく相手方が生活費を渡してくれないような場合、経済的DVに該当する可能性があります。

また、生活費を渡していても、生活を維持するには明らかに不足する金額しか渡していない場合も、経済的DVに該当する可能性があります。

・借金や浪費を繰り返す

嗜好品の購入やギャンブルなど、身勝手な理由で借金や浪費を繰り返すことは、経済的DVに該当する場合があります。

借金や浪費の結果、配偶者に十分な生活費を渡さなかったり、相手が苦しい生活を強いられている場合などは、経済的DVの可能性が高まります。

・仕事をさせない

配偶者が仕事をしたいと希望するにもかかわらず、身勝手な理由で仕事をさせないことは、経済的DVに該当する可能性があります。

家にいることを強要したり、無理矢理仕事を辞めさせたりする行為は、経済的に相手を支配する行為の一貫と言えます。

これらの行為が経済的DVに該当しえます。
もっとも、単に生活費が足りないだけでは経済的DVに該当するかは微妙です。また、浪費を全くしない方は少ないでしょうから、浪費があるからといって必ずしも経済的DVに該当するわけではありません。
最終的には、その家庭ごとの経済状況や相手方の行為の程度、頻度によって、経済的DVといえるかどうかは変わってきますので、注意が必要です。

経済的DVを理由に離婚は可能か?

知っておきたい離婚のポイント
  • 経済的DVが法定離婚事由にあたる場合は裁判離婚が可能
  • 経済的DVで離婚する場合は、慰謝料を請求できる可能性がある

経済的DVを理由に離婚したいのですが、相手が協議離婚に応じてくれません。離婚する方法はありますか?

経済的DVが法定離婚事由に該当する場合は、裁判離婚が可能です。経済的DVを理由に離婚する場合は、慰謝料を請求できる可能性があります。

離婚裁判をする場合には離婚原因が必要

離婚をする方法を大きく分けると、協議離婚と裁判離婚の2種類があります。

協議離婚とは、夫婦で話し合って離婚することに合意して、離婚届を提出して離婚する方法です。
協議離婚の場合、離婚する理由は基本的に制限はありません。

裁判離婚とは、離婚訴訟を提起して、裁判によって離婚を認めてもらう方法です。
協議離婚は夫婦の両方が同意しなければ離婚は成立しませんが、裁判離婚の場合は離婚に納得していなくても、法的に離婚できます。

離婚するのに合意が必要ないことから、裁判離婚できる事由は民法によって以下のように制限されており、離婚原因(法定離婚事由)といいます。

・不貞行為をした場合
・悪意の遺棄をした場合
・配偶者の生死が3年以上明らかでない場合
・配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない場合
・その他、婚姻を継続し難い重大な事由がある場合

裁判離婚をするには、上記のいずれかの離婚原因に該当する必要があります。

経済的DVの場合の離婚原因

民法に規定されている法定離婚事由のうち、経済的DVが該当する可能性があるのは、一般に以下の2つです。

・悪意の遺棄
・婚姻を継続し難い重大な事由

悪意の遺棄とは、正当な理由なく夫婦間の義務を履行しないことです。

夫婦間では、互いに扶養する義務婚姻費用を分担する義務があります。正当な理由ないにもかかわらず、相手方に生活費を渡さない場合、は同義務に違反し、悪意の遺棄に認定される可能性があります。

また、経済的DVによって配偶者を追い詰めて損害を与えることは、婚姻を継続し難い重大な事由にあたると判断される可能性があります。

経済的DVで離婚する場合には慰謝料請求が可能

経済的DVが悪意の遺棄や婚姻を継続しがたい事由に該当する場合は、相手に慰謝料を請求できる可能性があります。

夫婦は互いに扶養義務がありますが、経済的DVが扶養義務をきちんと果たさない不法行為にあたる場合は、慰謝料請求が可能だからです。

ただし、慰謝料を請求するには経済的DVを証明するための証拠が重要です。具体的にどのようなものが証拠になるかは後述いたします。

経済的DVを理由に離婚する場合の注意点

知っておきたい離婚のポイント
  • 別居する場合は婚姻費用分担請求をすべき
  • 経済的DVの証拠を集めることが重要

経済的DVを理由に離婚しようと思うのですが、注意点はありますか?

別居する場合は、相手に婚姻費用分担請求をしましょう。経済的DVで離婚をするには、経済的DVの証拠をきちんと集めることが重要です。

別居する場合には婚姻費用分担請求を行う

経済的DVを理由に離婚するにあたって相手と別居する場合は、婚姻費用分担請求をしましょう。

夫婦が生活するにあたって必要な費用のことを、婚姻費用といいます。

婚姻費用分担請求とは、別居している夫婦のうち収入の低いほうが、他方に婚姻費用を請求することです。

夫婦は互いに、相手に自分と同レベルの生活をさせる義務(生活保持義務)があり、これが婚姻費用分担請求の根拠となります。

経済的DVの被害者は、DVによって経済的に困窮している場合が少なくないため、婚姻費用分担請求は非常に重要です。

経済的DVの証拠収集は念入りに行う

経済的DVを理由に離婚する場合は、相手が経済的DVをした証拠を念入りに収集しましょう。

経済的DVを証明する証拠がなければ、裁判手続きで離婚を認めてもらうことはできません。

経済的DVの証拠として一般に役立つものは、以下の通りです。

・預金通帳(十分な生活費がないことの証明)
・家計簿
・お金について記載されたメール・SNSのやり取り(例えば、生活が困窮しており、生活費を渡してほしいといった内容のメール)
・お金について発言された通話記録
・浪費を証明するクレジットカードの明細
・借金の借用書
・経済的DVについて記録した日記

まとめ

経済的DVとは、十分な生活費を渡さなかったり、借金が浪費を繰り返したりすることで、相手を経済的に追い詰める行為です。
悪意の遺棄や、婚姻を継続し難い重大な事由などに経済的DVが該当する場合は、裁判離婚をすることが可能です。
経済的DVを理由に離婚する場合は慰謝料請求が可能ですが、経済的DVを証明する証拠存在が重要になります。
上述の通り、経済的DVに該当するかどうかは、家庭の事情によって変わってきますので、その判断は難しいでしょう。
経済的DVを理由に離婚や慰謝料請求を考えている場合は、まずは夫婦問題に詳しい弁護士に相談するのがおすすめです。