事実婚の離婚(解消)方法と流れについて解説いたします。
ざっくりポイント
  • 事実婚の離婚(解消)では法的な手続きは必要ない
  • 合意に至らないときには内縁関係調整調停を申立てられる
  • 財産分与について取り決め、子どもがいる場合には親権・養育費・面会交流についても話し合う

目次

【Cross Talk 】事実婚の離婚(解消)の手続きとは?

事実婚を解消しようと思います。子どもがいるのですが、手続きは必要でしょうか?

法的な手続きは不要ですが、お子さんの親権・養育費・面会交流について話し合い、取り決めておきましょう。

詳しく教えてください!

事実婚の解消方法と手順について解説していきます。

事実婚のカップルは離婚ではなく関係の「解消」となり、法的な手続きは必要ありません。双方で別離について話し合い、合意に至ったときに関係の解消が成立します。ただ、一緒に住んでいたときの財産分与、子どもがいる場合の親権・養育費・面会交流について話し合い取り決めておく必要があります。
本記事では、事実婚の解消方法と手順について解説していきます。

事実婚の離婚(解消)は法的な手続きは必要ない

知っておきたい離婚のポイント
  • 事実婚の解消は法的な手続きは不要
  • 合意に至らない、話し合いが出来ない場合には家庭裁判所に内縁関係調整調停を申立てられる

事実婚を解消したいのですが、相手と連絡が取れません。

話し合いが出来ない場合には、家庭裁判所に内縁関係調整調停を申立てることができます。

事実婚とは?離婚ではなく「解消」

事実婚とはカップルが婚姻届を出さずに事実上夫婦として生活する形態を指します。
住民票の続柄を「妻(未届)」「夫(未届)」に変更している場合には事実婚の状態と言えます。ただし、続柄を「同居人」のまま変更せずに実質事実婚として暮らしているカップルもいるでしょう。

なお事実婚と内縁関係は実質夫婦として生活している状態ですが、「同棲」は共同生活をしている段階で婚姻の意思がないカップルも存在するという違いがあります。

事実婚状態のカップルが別れる場合には離婚ではなく「解消」という形となり、法的な届け出は必要ありません。
ただし、解消後の財産分割や住居などについては話し合う必要があります。

話がまとまらないときには内縁関係調整調停を申立てられる

事実婚・内縁関係の当事者間で、関係の解消について話し合いがまとまらない、話し合いができない場合には家庭裁判所の「内縁関係調整調停」の手続きを利用できます。

事実婚状態の夫または妻が相手方の住所地の家庭裁判所または当事者が合意した家庭裁判所に、申立書を提出または郵送します。
申立書には収入印紙1200円分を貼付し、申立書は内容を知らせるため相手に郵送されます。

事実婚を離婚(解消)する流れ

知っておきたい離婚のポイント
  • 法律婚の離婚時と同様に双方が解消に合意することが必要となる
  • 子どもがいる場合は親権・養育費などについて取り決め、書面に残しておく

子どもがおり親権は相手が持つことが決まっています。後は何を話し合えば良いでしょうか?

関係解消後の面会交流や養育費の支払いについて取り決め、書面に残しておきましょう。

双方が解消に合意する

事実婚の解消は話し合い、お互いが関係の解消に合意します。
合意が得られない、相手と話し合いができない場合には上で述べた「内縁関係調整調停」の利用を検討しましょう。

正当な理由が無く一方的に関係を解消してしまうと、法律婚における離婚時と同様に慰謝料を請求される可能性がありますので注意しましょう。

相手と顔を合わせたくない場合には弁護士に相談し、代理人として話し合ってもらうことも可能です。

財産分与について話し合う

事実婚の期間中に二人で協力して築いた財産を分与します。
マイホーム・預貯金・有価証券など二人が形成した財産であれば分割が可能です。

不動産はローンが残っており、ローン残債が物件の売却価格を上回る状態(オーバーローン)では資産価値はマイナスになります。オーバーローン状態の物件を所有している方は、関係解消後にローンの支払いは可能であるか、誰がどの位負担するかをよく話し合いましょう。

年金分割については、夫婦どちらかが第3号被保険者であった場合に可能となります。日本年金機構のホームページによると、分割の対象となる期間は「婚姻する前の事実婚関係にあった間に、当事者の一方が当事者の他方の被扶養配偶者として第3号被保険者であった期間」です。

子どもがいる場合は親権・養育費などについて話し合う

子ども(18歳未満の子)がいる場合には、まずどちらが親権者になるかを話し合いましょう。親権は子どもの利益のために子の監護・教育を行い、財産の管理を行う権利・義務を言います。

親権は今までの養育状況・双方の経済力や家庭環境に加えて、子どもの年齢・性別・性格・生活環境や子どもと親権者の意向などを考慮し子どもの利益を最優先に決定することになります。

関係解消後の養育費の支払いや面会交流についても話し合い、取り決めます。
子どもが認知されている場合は父親と法律上の親子関係であり養育費の請求が可能で、相続の権利があります。しかし、認知されていない場合では夫は養育費の支払い義務はありません。

子どもが認知されておらず、夫が養育費の支払いに合意しない際には弁護士への相談や調停を検討してみましょう。

慰謝料を請求できる場合もある

事実婚であっても、民法709条の「不法行為」に該当する際には慰謝料を請求できます。

民法709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

例えばDVやモラハラ、関係が破綻することが分かっていながら同居しない、生活費を入れない(悪意の遺棄)、一方的に関係を解消された場合では慰謝料請求が可能です。

取り決めたことを書面に残す

関係解消の合意、財産分与、子どもの親権・養育費・面会交流など取り決めた事項は書面に残しておきましょう。「示談書」や「合意書」という名称で作成することも可能です。
詳しくは法務省の「子どもの養育に関する合意書作成の手引きとQ&A」を参考にしましょう。
https://www.moj.go.jp/content/001322060.pdf

取り決めた内容を公証役場で公正証書として作成・保管することもできます。公正証書に「甲は、第〇条の債務の履行を遅滞したときは、直ちに強制執行に服する旨を承諾した」といった強制執行認諾文言を入れておくことで、いざというときに相手の財産を差し押さえることができます。

まとめ

このページでは事実婚の離婚(解消)方法、手順についてお伝えしてきました。事実婚においても民法709条の不法行為に該当する際には慰謝料を請求できます。
相手の合意が得られないとき、慰謝料を請求したいときには男女問題に詳しい弁護士に相談し、共に解決を目指しましょう。