熟年離婚する場合の年金分割制度について解説いたします。
ざっくりポイント
  • 年金分割は婚姻期間中の厚生年金を分割する制度である
  • 年金分割をするには、まず情報通知書を取得することが必要
  • 年金分割の話し合いがまとまらない場合は、調停・審判をする方法がある

目次

【Cross Talk 】年金分割ってどんな制度なの?

熟年離婚をする場合、年金分割をしておくべきだと聞きました。年金分割とはどのような制度ですか?

年金分割とは、夫婦の婚姻期間中の更生年金を分割する手続きです。年金分割をすることで、収入が低い側の年金が増える可能性があります。。年金分割をするには一定の手続きが必要です。

年金分割をすると、年金を増やせる場合があるんですね。年金分割の手続きについても教えてください!

年金分割の制度や手続きの流れについて解説いたします。

熟年離婚をする場合、離婚後に充分な年金が得られるか心配になるかもしれません。
離婚する夫婦のうち、収入が低い側が年金を増やす方法として、年金分割があります。
年金分割によって婚姻期間中の厚生年金を分割すると、将来の年金額が増える場合があります。
ただし、年金分割をするには年金事務所に書類を提出するなど、一定の手続きが必要です。
そこで今回は、年金分割がどんな制度なのか、年金分割の手続きについて解説いたします。

熟年離婚をする場合に知っておきたい年金分割とは

知っておきたい離婚のポイント
  • 年金分割は婚姻期間中の厚生年金を分割する制度である
  • 相手と一緒に手続きをする場合があるなど、年金分割にはデメリットもある

熟年離婚する場合、年金分割について知っておくべきと言われました。年金分割について教えてください。

年金分割とは、夫婦の婚姻期間中の年金を分割する制度です。収入の低い側の年金を増やすことにつながりますが、相手と一緒に手続きをする場合があるなど、デメリットもあることに注意しましょう。

年金分割とは

年金分割とは、夫婦の婚姻期間中の厚生年金を分割して、それぞれの年金とする制度です。

夫婦が離婚して別々に生活する場合、収入の低い側は生活に困ってしまう可能性があります。

そこで、収入の低い側がもらえる年金を増やすことで離婚後の生活資金を確保しようとするのが、年金分割の制度です。

年金分割をするには分割の割合を決めたうえで、年金事務所で所定の手続きをする必要があります。

また、年金分割には期限があります。原則として、離婚日の翌日から2年を経過すると請求できなくなるので注意しましょう。

合意分割と3号分割

年金分割をする方法は、合意分割と3号分割の2種類があります。

合意分割とは、離婚する夫婦が話し合いをして分割の割合を決めたうえで、厚生年金の保険料納付記録(標準報酬)を分割する制度です。

合意分割をするには、夫婦の双方が分割に同意しなければなりません。

3号分割とは、一定の条件を満たす場合に、厚生年金の保険料納付記録(標準報酬)を1/2の割合で分割できる方法です。

3号分割をするには、平成20年4月1日以後に、夫婦のどちらかに国民年金の第3号被保険者期間があることが必要です。

国民年金の第3号被保険者とは、厚生年金保険の被保険者または共済組合の組合員の被扶養配偶者であり、かつ20歳以上60歳未満の方を指します。

3号分割の特徴は、相手の同意なしで単独で分割を請求できることです。

熟年離婚ではいくらもらえるのか

熟年離婚における年金分割は、年金分割の対象となる金額が、若年層よりも高額になりやすいのが特徴です。

高額になりやすい主な理由は、離婚するまでの婚姻期間が長いことや、夫婦が高齢であることなどです。

特に、夫が働いていて妻が専業主婦の場合や、共働きで妻の収入のほうが低い場合は、年金分割によって妻の年金額が増える可能性が高いといえるでしょう。

具体的な金額は場合によって異なりますが、年金分割によって、妻の平均年金月額が数万円程度増える場合もあります。

ただし、年金分割によって実際の年金額がどのくらい変化するかは、夫婦の年齢・収入・保険料の納付実績などによって異なります。

年金分割デメリットも知っておく

年金分割は以下のようなデメリットもあるので、手続きをする前に把握しておきましょう。

  • 夫婦のうち収入が多い側は、年金分割によって年金額が減る
  • 年金分割の話し合いをすることで関係がさらにこじれる可能性がある
  • 相手と一緒に年金事務所で手続きをしなければならない場合がある
  • 国民年金は年金分割の対象にならない
  • 年金分割の手続き

    知っておきたい離婚のポイント
    • 年金分割をするには、まず年金分割のための情報通知書を取得する
    • 話し合いがまとまらない場合は、年金分割の調停・審判をする方法がある

    年金分割の基本的な手続きの流れを教えてください。

    年金分割のための情報通知書を取得したうえで、夫婦で話し合いをして割合を決めます。話し合いがまとまらない場合は、調停・審判をする方法もあります。割合が決まったら、年金事務所で分割の手続きをしましょう。

    年金分割のための情報通知書を取得する

    年金分割をするには、まず「年金分割のための情報通知書」を取得しましょう。

    年金分割のための情報通知書とは、年金分割に必要な情報が記載された書類であり、年金に加入している期間や、年金分割の対象となる期間などが記載されています。

    年金分割のための情報通知書は、主に以下の場面で必要になります。

  • 合意分割で分割の割合を決めるため
  • 年金分割について公正証書を作成するため
  • 年金分割調停・審判を行うため
  • 情報通知書を取得する方法は、「年金分割のための情報提供請求書」という書類を作成したうえで、年金事務所(公務員は共済組合)に請求することです。

    年金分割のための情報提供通知書には、請求者や配偶者の氏名・生年月日・住所・個人番号(基礎年金番号)などを記入します。

    また、情報通知書を請求するにあたって、年金手帳(基礎年金番号通知書)や、婚姻期間を確認できる戸籍謄本(抄本)なども提出する必要があります。

    年金分割の話し合いを行う

    合意分割をする場合、年金分割の情報通知書を取得したら、まずは年金分割について夫婦で話し合いをします。

    話し合いが必要なのは、年金分割をすること自体に合意するかと、年金分割をするとして、どの割合で分割するかの2点です。

    分割の割合は、最大で1/2を上限として、夫婦で話し合って決めることができます。

    合意分割をするには、夫婦の双方が分割と割合に同意する必要があります。同意がない場合は、合意分割は成立しません。

    年金分割の調停・審判

    年金分割の話し合いがまとまらない場合は、年金分割の調停・審判を裁判所に申立てる方法があります。


    年金分割の調停とは、公正中立な立場である調停委員を交えて、当事者が話し合いをして年金分割の割合を決める手続き
    です。

    調停が成立するには、夫婦の双方が同意する必要があります。双方が同意した場合、調停案に従って年金分割の手続きを行います。

    同意がない場合は、調停は自動的に審判の手続きに移行します。

    年金分割の審判とは、提出された資料などをもとに総合的に判断したうえで、裁判官が年金分割の割合を決める手続きです。

    双方が同意して審判が成立した場合、審判の内容に従って年金分割の手続きをします。

    年金事務所で手続きを行う

    年金分割の話し合いがまとまった場合や、年金分割の調停・審判が成立した場合は、年金事務所で請求の手続きをします。

    夫婦で話し合いをしたり、裁判所で調停や審判を成立させただけでは、年金分割の手続きは完了しないので注意しましょう。

    請求の手続きをする場合、基本的には、夫婦2人で手続きをする必要があります。もっとも、話し合いの内容を公正証書にまとめている場合や、裁判所の調停調書・審判書などがあれば、単独で手続きをすることも可能です。

    請求の手続きが終わると、改定後の年金について記載された「標準報酬改定通知書」が発行されます。

    まとめ

    年金分割とは、婚姻期間中の厚生年金を分割することで、離婚する夫婦それぞれの年金とする制度です。
    年金分割をすることで、収入の低い側の年金を増やすことが期待できますが、相手と一緒に手続きをする場合があるなど、デメリットもあります。

    年金分割を有利に進めたい場合は、離婚問題の経験が豊富な弁護士に相談するのがおすすめ
    です。